店舗評価シート【作成/金伸行】

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お金儲けの神様「邱永漢」人生最後の弟子で、2005年より中国四川省成都に在住。日本生まれの韓国人で、現在はグループ会社3社の社長兼取締役を勤める金さんと、焼肉店「牛牛福」との9年間にわたる格闘の日々の記録。第4回は「焼肉店開業」に向けての市場分析と、人事・店長・料理長の雇用問題。自慢の味は酷評を受けて……。

第1回「邱永漢氏に出会い、現職を投げ打って成都行きを決めるまで」はこちら

第2回「ホテル事業を夢見て成都に渡った3日後に告げられた事実とは」はこちら

第3回「焼肉店改行準備で体験した、パソコン購入のための中国式交渉術」はこちら

市場分析なんて意味がない

 その後、夢中で会社の設立準備をするうちに、「そういえば、成都で流行っているレストランに行ったこともないな。レストラン経営をするのにこんな基本的なこともわかってないようじゃだめだな」と気づきました。

 そこで成都のおいしい店50件のリストを作成し、日々それらの店を回ることにしました。

 市場調査となると、元コンサル屋の血が騒ぎます。習慣的に調査のフレーム(枠組み)づくりから始めました。つまり、仮説としてレストランの成功要因を細分化し、それらの要素一つ一つの重要度に対し点数を配分し、最終的に成功要素を100点化するという、オーソドックスな、そして我ながら綺麗な分析フレームを完成させました。

 私は意気込んで流行っているレストランを回りはじめました。数件回った後、さらに分析フレームに調整を加え、今度は成都の一般的な収入水準の消費者50人を対象にアンケート調査を行ない、「消費者の立場から見た繁盛するレストランの成功要因」に自分なりにするどいメスを入れたつもりでした。

 恥ずかしながら、その当時の分析結果をご披露するとこんな感じでした。

 ここまで分析して、「なるほど、成都の人は“うまくて”“量が多くて”“サービスがいい”店が好きなんだな」と、分析結果をまじまじと眺めていると、急に興ざめする自分に気づきました。

 そして、こう呟いたのでした。
「おいおい、こんな当たり前のことを発見してなに喜んでんだ?」

 分析が間違っているわけではありませんでした。成都の消費者を理解するうえで、どこに重点を置くべきかという意味では、意味のないものではありませんでした。しかし私がこれからやろうとしているのは、成都ではまだほとんどない焼肉市場の開拓です。

 新しい製品やサービス、価値を市場に創造する時には、その需要の強さや成功のポイントを市場に聞いてはいけないのです。いや、正しくはそれらを事前に検証するツールがないわけではないのですが、経営者がそういったものに過剰に依存してはいけないのです。あくまで事業家としてのカンとセンスに依存して、それを市場に打ち上げないといけないのです。

 こんな分析をするぐらいなら、地元の友人でもつくって一緒に酒を飲みながら、彼らの肌感覚を理解することのほうがよっぽど意味があるのです。

 その分析結果をゴミ箱に突っ込んで以来、私はオープンまでこういった概念的な調査をすることをすっかりやめてしまいました。コンサルタントから事業家への脱皮が必要だと、強く自分に言い聞かせた瞬間でした。

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