8月10日に、モスクワで開幕する世界陸上2013。100m・200mの世界記録保持者、ウサイン・ボルトをはじめ、800mの世界記録保持者、デービッド・ルディシャや110mハードルの世界記録保持者アリエス・メリットら実力者7人は、BIG SEVENと呼ばれ、「また人類が進化するのでは」と注目を集めています。

 そんな一流選手の競技外の精神状態とはどういったものなのでしょう。コンディションとモチベーションを保つことが重要な陸上競技。彼らは、寝ている時も起きている時も、常に自分と向き合っていると言えます。その時間は、我々が想像するよりも長く深いものでしょう。「孤独な戦い」を制したからこそ、大会本番で世界記録を塗り替えることができるのです。

また、その反面、オフになった時に、ユニークな一面を見せてくれるのも、陸上競技者の魅力。

 埼玉県庁に所属しながら「市民ランナー」として数々の大会に出場している川内優輝選手。「実業団には負けない」という強い信念からか、力を出し切ってレースを走りきるため、ゴール後に倒れることがしばしばあります。ただ、エジプト国際マラソンに出場の際には、成田空港でパスポートを忘れていたことに気づき、用意された飛行機に乗ることができませんでした。結局は、自腹で26万円払い、別便でエジプトに向かうことになるなど、熱さとオトボケを兼ね揃えたランナーです。

 理論派・為末大さんは、投資に関する書籍を出しています。選手の家族関係や趣味などプライベート情報までを伝える解説で話題の増田明美さんは、TV番組『マツコ&有吉の怒り新党』でも取り上げられるほど。最近では、日本人初の100m9秒代が期待される、京都・洛南高校の桐生祥秀くんに注目が集まっていますが、彼のトラックでは見られない意外な一面も楽しみです。

 オフの姿も魅力的な陸上競技者。そんな陸上競技者の競技中の心情や苦悩、葛藤を描写しているのが、あさのあつこ氏の書籍『ランナー』シリーズです。

 本作の登場人物である高校生で5000mランナーの加納碧李や三堂貢らもまた、人を惹きつける魅力をもった競技者だと言えます。お互い、一度は走ることを捨てようとしたもの同士。辞めようとした理由や原因はそれぞれ違いますが、再びトラックに戻ることを決意しました。それほどトラックとは魅力的な場所なのでしょう。最新作『レーン ランナー3』では、二人の天才ランナーの走る喜びと本能の叫びが非常に細かく描かれています。

『ランナー』シリーズは、『バッテリー』で野間児童文芸賞を受賞したあさのあつこ氏が届ける青春小説。あの頃の不器用な「熱さ」を思い出させる一冊だと言えるでしょう。



『レーン ランナー3』
 著者:あさの あつこ
 出版社:幻冬舎
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