「北朝鮮について何でも答えます」脱北した女性、海外掲示板で波乱万丈な体験を語る

日本にいても、北朝鮮の実情となるとわからないことばかりですが、欧米人にとってはなおさらです。

北朝鮮で生まれ育ち、訳あって亡命した女性が、「何でも聞いてください」と海外掲示板で質問に答えていました。

とても興味深い内容だったのでご紹介します。

 

「私は北朝鮮の平壌で生まれました。父は政府の仕事をしており、家族は北朝鮮では裕福な方でした。

 17歳のとき(2006年)に、父にトラブルがあり強制労働収容所に送られました。母と妹と私はその時に中国へ亡命しました。その後3人の中国人男性に買われ、彼らの妻となりました。私は山東省の田舎で20歳年上の男性と結婚し、その1年後、一時的な居住ビザを得ました。
 
 2年目に息子を生み、夫は昨年亡くなりました。息子を彼の家族に預けて近隣の都市に移りました。その後すぐ中国を出てマカオに移り、現在はマカオのナイトクラブで働いています。

多くの人が、北朝鮮や中国のことに興味を持っているようなので、私に何でも聞いてください」

Q:じゃあ、1人にトラブルが生じると、家族全員が強制労働収容所に送られるということは真実なんだね……?
A:もちろん問題がどれくらい深刻であるかにもよると思いますが、大半の場合、家族は一緒に収容所に送られるリスクが高いとしか言えません。

Q:金正恩の悪口を言ったりすることはないのかい?
A:公共、プライベートに関わらず、誰も指導者の悪口を言う者はいませんね。

Q:マカオの韓国大使館へ行き、政府の庇護を受けたり、援助を受けることは出来ないのかい?
A:なぜそれをする必要があるんです? 韓国中国やマカオより良いとは思ってません。

Q:出来るだけシンプルに質問するが、この金氏の体制はいつか取り除かれる日が来ると思う? いつか北朝鮮に他国で言うところの「ノーマル」な状態が来ると思う?
A:希望はあります。いったい明日でさえ何が起こるかわからないという状態では、何でも可能性はあります。現在の状態では、金王朝が何百年も存続し続けられないと思います。変化も時間の問題でしょう。

Q:北朝鮮の人々は本当にマインドコントロールされているのかい? それともトラブルを避けるためにそういうフリをしているだけ?
A:私たちは幼稚園の頃から何の疑問も政府に抱かぬように教育されています。小さい頃からなので、白紙の状態からそれが入るのでマインドコントロールという言葉が適しているかわかりませんが、他の社会と同様、それに反発する者、それに従う者が出てきます。違いと言えば、反発する者もトラブルを避けるために従う生活を送らなければいけないということです。

Q:北朝鮮での生活はどんなものでしたか? 金正恩は国民にどれくらいの影響を与えるのですか。
A:北朝鮮での生活はそれほど悪いものとは思っていませんでした。家族がそれほど下層ではなかったおかげで、幸せな子供時代、青年時代を過ごしています。素朴ではありましたが幸福でした。みなさんが思っているのに反して、自分は自由がないだとか、制限がすごく多いとかは思っていませんでした。生まれたときからずっとそうだったからかもしれません。他に比較するものがなかったからかもしれません。
 金日成氏の影響というのは北朝鮮ではとても強いものでした。彼の死後、金正日時代も一緒です。金日成氏のポートレートはどこに行っても見ることができました。そしてどこへ行っても彼の思想がそこら中にあり、みんながそれに従っています。金正日氏は成功者の権力を受け継いだというだけで、彼自身のリーダーシップではありません。北朝鮮は実際のところ、もう何年も死んだ人に支配されているのです。

Q:北朝鮮を出てから、一番驚きであるとか変だと思ったことは何ですか?(つまり一般の人には興味のないことでも、あなたをショックだと思わせたことは何ですか?)
A:食べ物の無駄。 どうして中国人は食べる以上のものを注文するのか、どうしてアメリカ人やヨーロッパ人は市場の値段を調整するためだけに、小麦やとうもろろこしや牛乳を廃棄するのかということ。

Q:自分は北朝鮮の階級の高い党員の子供たちが、欧米に留学をしたらと考えたことがあるが、もしそんなことが許されて北朝鮮の外の生活のことを知ったら、その後北朝鮮に戻って政府の言うことを信じるのかなということ。いったい何人くらいのそういった子供たちが欧米の基準に感化されて、それを隠しているのか知りたい。
A:留学をしたことがない人々でさえ、階級の高い党員たちは思想(政策)を信じているとは思いません。ただし彼らは権力や支配力を信じています。留学から帰ってきた子供たちが政治体制を信じてなくとも、権力や支配力を受け継ぎます。そんなに大勢が欧米の普通の生活に感化させられるとは思いません。権力や支配力はもっと魅力的なものなのです。思想(政策)を実行するのに、それを信じている必要はないのです。

Q:自分の子供と連絡はしている?
A:いつも電話で連絡を取っています。

Q:実家に送金していますか?
A:していません。

Q:母親や妹との連絡は? 3人の男性から買われたと書いていましたが、どうしてその状況から逃げ出さなかったのですか? 仕事の条件はどうですか。
A:母親とも妹もよく電話で連絡を取っています。近い将来会いに行くつもりです。中国の身分証明書をもらう前は、誰かが政府に通報すれば私たちは北朝鮮へ強制送還させられるという高いリスクがありました。私と妹は3年後にそれぞれ子供もいて身分証明書を得ることが出来ました。
 マカオでは正式な労働契約があり、合法的に雇用されています。もちろん娼婦と記載されているわけではありませんが、誰もが職名を見るとどういう意味かわかっています。

Q:北朝鮮から中国に亡命した少女が、どうしてそんなに英語をうまくタイピングしているんだい? 北朝鮮の教育?
A:そうです。北朝鮮の教育です。北朝鮮の少年少女たちはいろんな言語(英語、中国語、フランス語、ロシア語、ドイツ語、日本語等)に堪能です。

Q:北朝鮮の教育はどうなんだ? 君は第2外国語を父親の地位のおかげで得られたのかい? それとも全員がいい教育を受けているのかい?
A:父親の地位のおかげで良い教育を受けたというのは同意し、全員が良い教育を受けるわけではないとも言えますが、少なくとも軍や政府のために働く家庭の子供は下層でも良い教育を受けます。

Q:どうして息子を置いてきたの?
A:連れてきたかったけど、彼の祖父母や叔父が許さなかった。

Q:政治形態が変わったら、北朝鮮は良い観光地となると思う? 北朝鮮で観光スポットと思われるところはどこ?
A:他の国と違うという点で世界の多くの人に良い観光地となると思います。北朝鮮のどこでも、どこが普通と違うのかを見に大勢の人が来ると思います。それが売りで北朝鮮のすべてが観光地となるでしょう。

Q:いったいどうやって、いつ亡命したの? 外国はどんな風だと教えられていたの?  アメリカ人として北朝鮮の人を理解しがたいので、質問に答えてもらえるなら感謝する。
A:2006年の17歳のときに、北朝鮮と中国の国境線を仲介する男性の助力を得て越境しました。ほとんど外国との交流もないことから、外の世界は弾圧、犯罪、公害などの悪いことだらけだと教わっていました。帝国主義のアメリカと韓国はチャンスがあれば北朝鮮を侵略するために、攻撃の機会をうかがっていると教わっていました。

Q:それが嘘だと知って驚きましたか。
A:驚きませんでした。 欧米や中国は実際に公害はひどく、とても不道徳なことも多く、またアメリカは実際にいつも他国を攻める準備をしていました。

Q:石油がなきゃ、占領することもないだろうし、自由にするものもないってことだろう。
A:私もそう思います。アメリカは攻撃的とは思いますが、北朝鮮がターゲットだとは思っていません。

Q:北朝鮮のインターネットの検閲についてどう思う?(みんな回避しようと試みるのか、我慢しているのか?)
A:北朝鮮の大半の人はインターネットアクセスができません。ネットの使用は、教育や公務上の研究に限られていて、それもかなり高い制限を受けている状態です。一般人は検閲を迂回するチャンスさえないどころか、ネットへの接続さえできないのです。

Q:亡命出来たのがすごいことだ。誰も出たり入ったり出来ないのだと思っていたよ。質問だけど、北朝鮮の平均的な日というのはどんなもの? 特別な日というのはどんなもの?
A:北朝鮮と中国の国境は何千人も超えています。国境の監視員たちは賄賂で動くので、中国側の国境は基本的に監視員がいないも同然です。平均的な日というのはシンプルで、母親が朝食を家族のために用意し、父親は仕事に行き、子供たちは朝食後に学校へ行きます。母親は主婦業のために家庭に残り、子供たちは学校で昼食をとります。放課後は宿題や読書をしたり、父親が帰ってくるまで遊んで待っています。そして家族全員で食事をします。夕食後はそれほど娯楽があるわけではないので早く就寝します。特別な日というのは祝日や金日成の誕生日などで、学校全体で祝賀イベントに参加することになります。春のお祝いには家を飾ったり特別な食事を用意したりします。ただ田舎の生活はもっと違い、厳しいと思います。

Q:北朝鮮の習慣で、他の国が見習ったらいいと思うことはありますか?
A:考えましたが、思いつくものはありませんでした。

Q:ドキュメンタリーで見たけど、平壌のレストランは客が誰もいないにも関わらず、スタッフはまるで今にも何百人も客が来るかのように、つらそうな顔で動き回っていたのだが、そして観光する人に対しても結構ひどいフリをすることが多いそうだが、そのひどいフリは観光客にたいして北朝鮮をよく見せるため?
A:自分が思うに、何も客が大勢来るのを期待してというわけではなく、自分が雇用されるだけの価値があることを見せるために、何かしているフリをするのだと思います。北朝鮮以外でも雇用者に対して働いているというのを見せるために、無駄な動きをしているのはよく見ます。

Q:もし現在の政治体制が崩壊したら、北朝鮮に戻ることを選択しますか?
A:現在の政治体制が崩れることだけではダメで、新しい希望を持つ政治がやってこないと帰れません。現在の体制が崩れたからといって、次の体制が良いとは限りませんから。

Q:デニス・ロッドマン(元バスケットボール選手)が、金正恩と対面したことをどう思いますか。
A:両方の利益のためのショー。

Q:ロッドマンにとってどんな利益なんだ?
A:彼のことを知らなかったけど、知ったので。

Q:自分は北朝鮮の文化に興味がある。結婚はどうなの? 大半は家族が同じ階級の相手を見つけてくるのかな? それとも誰とデートや結婚しても自由なのかな? 結婚に政府は踏み込んでくるのかな?
A:若者の間ではお見合いというのはあまり一般的ではありません。大半は誰とデートして結婚するのも自由ですが、もちろん両親の意向は大きな役割を占めます。現実には社会的に似た階級同士が出会いやすく、デートもしやすいです。政府が関与するのは聞いたことはありません。

Q:アメリカやイギリス、オーストラリア、あるいは他の欧米の国に移りたいと思うことはある?
A:ヨーロッパかオーストラリアかニュージーランドには移りたいとは思いますが、アメリカや韓国には思いがないです。

Q:どうしてアメリカや韓国はダメなんだい?
A:あまり良い感じがしないので。

Q:もうちょっとその辺を説明してほしいかな。それは北朝鮮で受けた教育が理由?
A:北朝鮮で受けた教育が理由ではなく、たとえばアメリカは貧困層やアジア人にとって良い場所ではないと理解しています。それと個人的な経験から、アメリカ人と韓国人には、いつもいやな思いをしました。両方ともかなり尊大でした。

Q:金正日氏が死んだときの気持ちは?
A:感情は何もなかった。

Q:すごい体験をしていると思います。軍の状態というのはどうなんでしょう? 韓国人が尊大というのはどういう風に? 自分は北朝鮮の人々を助ける韓国の協会の人を知っているので興味があった。
A:軍の状態については前向きなことしか聞きません。実際がどうかについては知りえません。 韓国人については実際に何人か会ったことがあります。自分の経験では、ほとんどの韓国人は、北朝鮮人を3流階級の単なる避難民という扱いをします。(1流は韓国人で、2流は中国に在住の韓国人)


このやりとりだけでも過酷な人生を歩んでいることが伝わってきますが、とても冷静に、質問をひとつひとつ答えている印象でした。

北朝鮮と日本、北朝鮮と韓国といった関係で見ることが多いだけに、欧米人を交えた生の脱北者の声・視点というのは、かなり新鮮なものがあるかと思います。

IAMA woman born in North Korea. AMA : IAmA

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