グローバル経済の覇者の落日は、突然訪れた。6月7日、サムスングループの中核企業の総合家電・電子製品メーカー「サムスン電子」の株価が前日比マイナス6.2%の142万7000ウォンに下落。一夜にして時価総額15兆2000億ウォン(約1兆2160億円、1ウォン=0.08円)が消えたことになる。 その後も株価は低迷を続け、6月26日現在で129万ウォンにまで落ち込んだ。

〈7〜9月期のギャラクシーS4の出荷数は投資家の失望を誘うだろう〉

 暴落のきっかけはJPモルガンが発表した調査レポートだった。この文書は、今年4月に発表したサムスン電子の目玉商品のスマホ、ギャラクシーS4に対して、〈サプライチェーン(下請け会社)を調査した結果、7月からの月間の注文数が1000万台から700万〜800万台に20〜30%減少していることがわかった〉と記した上で、同社の株価目標を従来の210万ウォンから190万ウォンに下方修正した。

 だが、なぜ一商品の不振が巨大企業の屋台骨を揺るがす事態に発展したのか。運転中は音声のみでスマホを操作できる、利用者の視線を検知して視線を外した際に動画再生が自動的にストップ……。サムスン独自の最先端機能を搭載した「ギャラクシーS4」は、今後のスマホ市場の行方を占う商品だった。アップルと特許技術を争い、「コピー商品」の誹りを受けるサムスンにとって、付加価値を生み出す独自製品はブランド向上のためにも必須だった。

 だが、期待のギャラクシーS4はまさかの停滞──。ユーザーからは「普段の操作にここまでの高度な機能は必要ない」「かつての日本のガラケーを見ているよう」と厳しい声が相次ぐ。

 株価指数先物情報を個人投資家に提供するカブ知恵代表の藤井英敏氏がいう。

「海外投資家らが想起したのは、iPhone5の売り上げ鈍化が招いた今年4月のアップル株急落でしょう。去年までは、株式市場はアップルの“iPhoneシリーズ”やサムスンの“ギャラクシーシリーズ”に対する期待が高かった。しかし双方の売り上げが期待したほどのものでもなかったことから、スマホへの投資家たちの期待値が落ちてしまった。実はスマホ市場は昨年9月にiPhone5が発売されたのをピークに右肩下がりなんです」

 今回のサムスンショックが浮き彫りにしたのはスマホに傾注するサムスンの事業形態の危うさである。

 昨年のサムスングループ全体の売り上げは約201兆ウォン(約16兆円)。サムスン電子の売り上げはグループ全体の6割に及び、同社の稼ぎの7割はスマホなどの無線事業部門からあがっている。韓国経済に精通し、『韓国経済 挫折と再挑戦』の著書を持つ拓殖大学客員教授の姜英之氏の話。

「家電製品からプラント製造まで多岐に展開するサムスンですが、収益は一点集中方式であげてきました。1980年代は半導体、1990年代〜2000年代半ばまではテレビ、そしてここ最近は携帯・スマホ──と10年ごとに中核事業を変え、時代の流れに対応してきました」

 サムスンは年間に携帯電話を約4億台出荷。しかしギャラクシーS4に限らず先進国ではスマホ市場は飽和しつつある。一方の新興国市場では中国メーカーやかつての世界シェア1位企業ノキア(フィンランド)の猛追にあう。加えて廉価な携帯・スマホが高い人気を誇る新興国市場で、シェアを伸ばしたからといって収益には結びつかない。

 スマホ事業は転換点を迎えつつある。だが、「スマホに続く中核事業はまだ見つかっていない。成長事業に掲げた太陽電池や医療機器も市場を開拓できていない」(同)のが現状だ。

※週刊ポスト2013年7月12日号