サンクトペテルブルクのネヴァ川沿い。行列が気にならないのは人がすくないから? (Photo:©Alt Invest Com)

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 前回はアジアの道の渡り方について書いたが、今回は行列について考えてみたい。

 アメリカの経済学者タイラー・コーエンは、「現代世界における、多くの“自由でない”社会の欠陥は、抽象的な行動規則を遵守しないことや、そうした規則を有益な抽象的メカニズムとして理解しないことである」と述べる(『フレーミング〈日経BP社〉』。

 コーエンは、「人々が整然と行列を作って待つことをしなかったり、車の運転手が車線を守らなかったりする国では、たいてい経済や政治に深刻な問題がある」という。

 ルールに従って行動することが当然と見なされる国は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどアングロサクソンの移民国家、イギリスと北ヨーロッパ(ドイツ、スイスを含む)および日本で、これは世界でもっとも成功している国々でもある。

 だが、行列するのは先進国ばかりではない。

 太平洋に面した南北4300キロの細長い国土に1700万人が暮らすチリは、近隣諸国と比べて人々が法律や暗黙のルールを守る傾向がはるかに強く、汚職が非常に少なく、警察官を買収するのは不可能だ。輸出額の約6割を銅が占める資源国だが、自由貿易協定(FTA)を積極的に進めてきたことで、現在は南米の金融センターに育ちつつある。インフレで大規模なデモがつづくブラジルや、保護主義で経済成長が止まったアルゼンチンなど南米の大国と比べてもその成功は明らかで、国民1人あたりのGDPは1万4000ドルを超え、中南米でもっともゆたかな国のひとつになった。

ロシア人は公共意識が低い

 コーエンは、先進諸国やチリとは逆に、抽象的な秩序をつくることに失敗した国家としてロシアを挙げる。現在のロシアは、国民の教育水準が高いにもかかわらず(そして多くの天才的な学者を輩出してきたにもかかわらず)、言論や報道の自由はなく、資源の大半は国やマフィアの手で管理され、汚職が横行している。

 ロシア人の妻を持つコーエンは、この国のひとびとの気質を次のように描写する。

「ロシア人のなかには、自由な社会の裏にある規範や原則を守るという強い意思に欠ける者があまりに多い。そのかわり、自由を愛する人々の大半を含む大多数のロシア人は、友人や、理想としての友情を何よりも大事にする。この愛着心はきわめて情緒的で、ごく限られた人間関係に向けられるものであり、抽象的なものや秩序の原則に対するものではない。友人とのつながりも、国家に対する義務や、抽象的な秩序の原則を守ろうとする考えよりも優先される」

「多くのロシア人は大規模な政治主体には冷笑的で、その意味では政治の大きな原則に対しても同様である。また、第一次世界大戦や共産主義の経験から、彼らは友人に頼って生き延びることに慣れている。このため、どんな政治状況でも排他主義やえこひいきが自然に生じやすく、したがって汚職にも流れやすい。一般的な公民意識も薄く、成分憲法はほとんど、あるいはまったく意味を持たない(中略)。とはいえ、そのいっぽうで、大多数のロシア人は非常に温かで愛情深い人々である(中略)。その温かさには、友達や家族といった仲間たちとの、きわめて個人的な深い絆が反映されている」

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