【うちの本棚】171回 機動戦士ガンダム/岡崎 優(原作・矢立 肇、富野由悠季)

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今回の「うちの本棚」は、現在もシリーズ作品が制作されている「ガンダム」の原点、『機動戦士ガンダム』のコミカライズ作品を取り上げます。

この作品にはいくつかの単行本がありますが、ここでは劇場版『ガンダムIIIめぐりあい宇宙』を初収録したストーリー上の完結版である大都社版を紹介します。

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ガンダム/大都社


本書はサンライズ制作のテレビアニメ『機動戦士ガンダム』の放映に合わせて秋田書店の「冒険王」に連載されたものと、その後劇場公開された映画版3作目『めぐりあい宇宙』の公開に合わせて「別冊冒険王」に掲載されたコミカライズ作品を収録したものである。
「冒険王」連載のテレビ放送に合わせたコミカライズは、放映のスピードに追いつけずストーリーの中盤で終了。後半部分を劇場版のコミカライズという形で描き完結させている。

またテレビ版との設定上の違いなどが指摘されるなどして「冒険王」掲載分では数話の未収録エピソードがある上に大幅な加筆修正がほどこされての刊行となっている。

まあ、熱心な「ガンダム信者」には許せない部分はあるのだろうが、コミカライズ作品においてオリジナルの映像作品との差異は少なからずあるわけで、本書においてそこまでオリジナルとの違いを探し出して批判するのはどうかという気がしないでもない。少なくともこの大都社版ではオリジナル作品に合わせて最大限の修整が試みられているのではないかと思う。

また、連載当時、中学生以上の視聴者を意識して制作されたオリジナル映像作品と、小学生を中心に読者対象としていた「冒険王」では、その表現にも違いが出るのはいたしかたなかっただろう。コミカライズの作者、岡崎は「当時テレビがなく、オリジナル作品は見ていなかった」と後年インタビューで答えているようだが、ちょっと複雑な主人公の性格を小学生にもわかりやすいヒーロー的な表現に変えてしまっても、ある意味間違ってはいなかったではないかと思う。

確かにテレビ版のコミカライズではストーリーを追うのに精一杯という印象があり、富野作品らしい感情表現だったり、キャラクターの特徴が描ききれていなかった感は否めない。その点は残念としか言いようがないが、1話完結でないテレビ作品を月刊誌で連載していくというスタイル自体がそれを難しくしているのも確かだろう。

本作品は未収録のエピソードも含めて「マンガショップシリーズ」で再刊行されているので興味を持った方は読んでみてほしいと思うが、結果的にこの大都社版で作者として全体的にまとめ上げているので、こちらの方がスンナリと楽しめるのではないかと思う。

初出:秋田書店「冒険王」1979年5月号〜1980年2月号、「別冊冒険王」1982年春の号

書 名/機動戦士ガンダム
著者名/岡崎 優(原作・矢立 肇、富野由悠季)
出版元/大都社
判 型/B6判
定 価/960円
シリーズ名/STAR COMICS
初版発行日/1998年10月1日
収録作品/冒険王連載版7話、ガンダムIIIめぐりあい宇宙

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/