アベノミクスの「成長戦略」って何?
安倍政権が掲げる「成長戦略」。株式投資家なら、もう何度も耳にしたことがある言葉でしょう。では、そもそも成長戦略とはどのようなもので、実現性は本当にあるのでしょうか?


アベノミクスの3本目の矢といわれている「成長戦略」。では、なぜ成長戦略が必要なのでしょうか?

国の経済レベルを示すGDP(国内総生産)は、「労働人口×労働生産性」です。少子高齢化の日本では働く世代が減少していくため、労働人口の減少は避けられません。つまり、労働生産性を高めない限り今の生活水準を維持するのは難しく、景気も停滞を続けることになるわけです。

結果、労働生産性を高めるためには「イノベーション」という名の成長戦略が必要となります。豪州の経済学者・シュンペーターは、資本主義国が発展し続けるには、古きものを壊し、新しいものを想像するイノベーションが必要と説いています。つまり、自動車から飛行機、ガラケーからスマホ、ワープロからパソコンなど、新需要を喚起し、労働生産性を高めることです。

さて、7月の参議院選挙を前に、成長戦略の中身が出そろってきました。5月上旬時点では成長戦略の中核に「女性の活躍」「医療分野」を位置づけています。保育所増設を促し、働く女性が増えることによる労働人口増加や、医療分野発展による労働生産性向上を要としています。

しかし、上記の成長戦略案は、簡単には実行できません。保育所市場に株式会社の参入促進や、再生医療実用化のための法律変更など「規制緩和」が必要だからです。

規制緩和とは、既得権益者の利益を見直すこと。往々にして既得権益者は大票田であり、選挙を意識して大胆な規制緩和ができずにいました。小泉政権の時代から女性の活躍や医療分野が、規制緩和の中心テーマとして存在するのも、そうした結果でしょう。

また、日本では高齢者が票を握っており、「女性の活用」と旗を振っても、実際は高齢者向け支援が中心ということもあるかもしれません。

しかし、今重要なのは、国民とマーケットに、「アベノミクスの成長戦略は参院選を意識したら、こんなものになってしまったか」と、失望させないことでしょう。「大胆な金融緩和」を打ち出したときも、期待のみで国民やマーケットは変化しました。今のアベノミクスに重要なのは、成長戦略の中身よりも、やっと温まってきた私たちの将来への期待を持続させることなのかもしれません。デフレ世代の私ですら、ワクワクし始めているのですから。



崔 真淑(さい・ますみ)
Good News and Companies代表

神戸大学経済学部卒業後、大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に株式アナリストとして入社。入社1年未満で、当時最年少女性アナリストとしてNHKなど主要メディアで株式解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験後、2012年に独立。



この記事は「WEBネットマネー2013年7月号」に掲載されたものです。