2014年1月からスタートする日本版ISA(少額投資非課税制度)。上場株式等や株式投資信託の売却益、配当益や分配金を年間100万円まで5年間、非課税とする制度だ。今年末で証券優遇税制が撤廃となり、税率が10%から20%に戻される代わりに登場する新制度だが、個人投資家にとってどんなメリットがあるのか?仕組みと世代別活用法について関係者に聞いた。


三井住友銀行
グループの?銀証一体〞の取り組みで利便性の高いサービスを提供

大相続時代を控え、大きな資金を呼び込む
「日本版ISAはお客さまの資産基盤を拡大するチャンスと捉えています」と話すのは個人統括部戦略企画グループ長の毛利智樹さん。金融資産に不動産などを加えた個人資産は2600兆円といわれ、このうちの約1000兆円を65歳以上の高齢者層が保有しており、10年、20年の間に次の世代へと引き継ぐ大相続時代が到来する。相続した資産をどう運用すればいいのか「ISA口座はそれを考えるきっかけになる」(毛利さん)。ISA口座開設を機に、大きな資金を呼び込めそうだ。

同行の顧客はISA口座で投信を買うことになるが、「株式や当行で扱っていない投信を購入したいお客さまには、グループ会社のSMBC日興証券を紹介することで、?銀証一体〞となった対応を展開する予定です。同時に誤解のないよう丁寧な説明も心がけます」(毛利さん)。

有人対応だけでなく、ネット対応も充実している。「昨年10月から『バンク&トレード』という銀行と証券口座をシームレスに行き来できる口座連携サービスを提供しています」とコンサルティング事業部総合金融グループ部長代理の小嶋達雄さん。

現在、三井住友銀行が扱う投信は106本(ネット専用は31本)あるが、ISA口座を利用する顧客に向いている投信をネット専用も含めて追加する計画があるという。

顧客がISA口座を開設する金融機関を選ぶ動機としては、多チャネルによる利便性の高さ、ブランド力や安心感、商品数や使いやすさが考えられる。

三井住友銀行では同行の2500万人の顧客(インターネット利用者は1200万人)に「適切なご案内を行ない、グループでは50万口座の獲得を目指します」(毛利さん)という。

毛利智樹(TOMOKI MORI)
三井住友銀行 個人統括部 戦略企画グループ グループ長

小嶋達雄(TATSUO KOJIMA)
三井住友銀行 コンサルティング事業部 総合金融グループ 部長代理




楽天証券
さまざまな投資目的に対応する豊富な商品ラインアップが強み

ISAのための多様なセミナーを随時開催中!
10月のISA口座開設申し込み開始に向け、早くも申込用紙やISAの仕組みに関するパンフレット、説明書などをセットにした「スターターキット」を用意した楽天証券。

「すでに当社の証券総合口座が開設され、ウェブサイト上でお申し込みいただいた方にスターターキットを発送しています。新たに証券総合口座を開設されたお客さまには、取引のために必要なIDパスワードを郵送するときに、ISA口座に関するお知らせを今後同封する予定です」と語るのは、マーケティング本部副本部長の清野英介さん。

スターターキットに含まれている申込用紙に記入し、住民票の写しを同封して楽天証券に返送すれば、同社および税務署での審査・手続きを経て、ISA口座が開設されるという流れだ。

「スターターキットの申し込み受け付けを開始して以来、ISAについてのお問い合わせが急増しています」と、投資家の関心の高まりを実感しているようだ。

ISA口座は、いったん株や投信を売却すると、その売却益相当の非課税枠がなくなるため、株の短期売買よりも投信などの長期保有に向いていると言われる。

しかし、清野さんは「お客さまを対象に3月に行なったアンケート調査では、ISA口座を株式投資に活用したいという声が多く寄せられました。お客さまごとの投資スタイルや資産運用目的によって、利用方法も分かれると思います」。

そうした点を考慮して、さまざまなニーズに幅広く対応できる金融商品を提供していきたいというのが日本版ISA導入に向けての楽天証券の基本的な考え方だ。

「もともとネット証券は、窓口販売を主体とする銀行や総合証券に比べて商品ラインアップが充実していることが強みですが、現在、ISA口座をより活用していただくためのサービスの拡充に取り組んでいます。あくまでアイデアの1つですがたとえば1本の投信の中で複数の資産が自由にリバランスできる商品を利用すれば、投信を売らずに資産ポートフォリオを変更できるので、非課税枠を減らさずに済むわけです。そういったISAを活用した投資スタイルや銘柄検索機能の拡充などを夏ごろから提案していきたいと考えています」と清野さんは語る。

銀行や総合証券に比べて株の売買手数料や投信の販売手数料が安いのも、ネット証券ならではのメリットだ。

「商品ラインアップが充実しているのは魅力だと思いますが、一方で商品が多くなればなるほど、どの商品を選んだらいいのか迷ってしまう方もいらっしゃるはず。そうした方のために全国でのセミナーやネット上でのオンラインセミナーも随時開催する予定ですので、ぜひご期待ください」

清野英介(EISUKE KIYONO)
楽天証券 マーケティング本部副本部長




コモンズファンド
資産形成が一番しやすい金融機関でISA口座開設を

ミドルリスク・ミドルリターン商品を販売
独立系投信会社のコモンズ投信が運用・販売する「コモンズ30」は?日本株に長期集中投資〞という日本株投信だ。直販に加えソニー銀行、楽天証券、マネックス証券で販売し、約3300人の個人投資家が購入している。

「そのうちの7割が30代、40代の資産形成層のお客さまです」と社長の伊井哲朗さんは言う。金融庁が日本版ISAの利用者として想定している層とも合致している。

「将来、社会保障が縮小することは明らか。資産形成層は、国だけに頼るのではなく自助努力が必要であることを理解しています。そこで手数料が安く長期運用に耐えられる投信はどれなのかと研究した結果、選んだ1本がコモンズ30だったりするわけです」

ほとんどの顧客の積立金額は100万円以内に収まっているそうだが、仮に毎年ISA口座で100万円ずつ貯めて5年経過すれば元本部分だけで500万円になる。

「そのころには貯められるという自信がついて、将来に対する不安がかなり和らぐのではないでしょうか」

英国版ISAには預貯金が含まれているが、日本版は株や株式投信に限られる。そのため「ローリスク・ローリターン商品ではほとんど収益が得られず非課税の恩恵が受けられません。しかし、初心者がハイリスク・ハイリターン商品に投資するのも危ない。5〜7%の利回りが期待できるミドルリスク・ミドルリターン商品が適しているのではないでしょうか。7%複利で運用できれば10年で資産が2倍近くになりますからね」。

コモンズ投信では6月をメドに詳細を発表する予定だが「お客さまを囲い込むつもりはない」という。「コモンズ30だけを積み立てているお客さまはコモンズ投信のISA口座を利用していただきたいのですが、そのほかに2本、3本と積み立てるのであればネット銀行やネット証券のISA口座を利用していただければいいと思います」

伊井哲朗(TETSURO II)
コモンズ投信 代表取締役社長




この記事は「WEBネットマネー2013年7月号」に掲載されたものです。