「ときめく方がいいよね」(コスプレイヤー=白幡いちほ(少女ジャンプーズ) 撮影=筆者)

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■ 彼女のギャラが出る(もしくは出ない)仕組み

秋葉原では、たくさんのアイドルたちが活動しています。秋葉原はまさにアイドルの聖地と言えるでしょう。「アイドル」といえば、テレビや雑誌でよく見かける可愛い女の子を思い浮かべるかもしれません。しかし、秋葉原で活躍するアイドルたちは、「ライブアイドル」と呼ばれる、新しい種類のアイドルです。

ライブアイドルは、これまで主流だったアイドルと異なり、マスメディアで見かけることはほとんどなく、主な活動場所は小規模のライブ会場です。AKB48も、かつては秋葉原で活動するライブアイドルでした。今までのアイドルは、メジャー(スター)になることを目標として、その指標としてCDの売り上げを重要視していました。そのために、大規模なライブコンサートに出演し、CM、グラビア、ドラマなど、大衆向けのマスメディアでできるだけ多く露出することが、主なプロモーション手法でした。ところが、ライブアイドルの場合、純粋な舞台芸術のごとく、ライブステージに立ち自己表現することが主な目的なのです。

ライブアイドルは、その名の通り、ライブハウスやイベントでのライブ活動が「本業」なのですが、そこで得る収入は十分ではありません。アイドルによっては、ステージに立っても、まったくギャラがないアイドルもいます。ライブイベントでは、複数のアイドルが一人あたり15〜30分の枠でステージに立ちます。観客は会場に入場する際、どのアイドルを観に来たか自己申告して2000〜3000円の入場料を支払います。アイドルは、自分を観に来たと申告してくれたファンの数が一定数(たとえば10人以上)を超えると、初めて入場料の一部をキャッシュバックで受け取れます。イベントの主催者は、会場代などの費用を先に回収し、利益分を出演者と分配するからです。つまり、アイドルたちは、一定数の自分目当てのファンを集めないと、交通費も出ないことがあり得ます。

■「雇用の生態系」がうまく回る街

ライブ会場での収入源にはグッズ販売があります。ライブが終わった後、会場内に物販用の机を出し、持ち込んだ商品を売ります。ただし、グッズ販売での収入もあまり期待できません。かつては生写真が売れましたが、可愛い女の子の写真がネットで溢れかえっている時代にそれほど売れるわけでもない。自分のオリジナルCDを持ち込むアイドルもいますが、ファンであっても、ライブを楽しんでいるのであって、CDを買ってくれるとは限りません。後は、握手やインスタントカメラでの撮影など、ライブ会場でしか体験できない特別感を演出できるサービスを購入特典として付けて、CDやTシャツ、タオルなどのグッズを販売する努力をしています。

ライブアイドルの収入源は、他にも店舗イベントや写真撮影会での出演料などがあります。ただし、マスメディアに登場するアイドルとは異なり、一般の認知度も低く、集客数も桁違いに少なくなります。さらに、事務所に所属せずにフリーで活動しているアイドルは、自分で営業活動も行うので、経費もその分掛かることになります。

こんな状態で、ライブアイドルはどのようにして生活ができるのでしょうか。実は、ライブアイドルたちは、生活のため、アイドル活動を続けるために、他の収入源を持っているのです。

ライブアイドルの中には、会社の正社員もいれば、小学校の教員もいます。しかし、アイドル活動には、突然のイベント出演の依頼が入る場合もあります。そんな時のためにも、働く時間や休日が調整しやすい職場が理想です。収入が不安定になってしまっても、正社員や教員になるよりアルバイトで働いたほうがライブアイドルの生活スタイルに合わせやすい。これが現状です。

秋葉原は、新しい働き方と生活スタイルを持つライブアイドルにとって、理想的な活動場所です。メイドカフェの常連客は、ライブアイドルのファンとちょうど重なる層が多い。そのため、メイドさんとしてお客とコミュニケーションをとることで、自分の活動を紹介し、ファンを獲得することができます。秋葉原のメイドカフェで働いた経験があるライブアイドルが多いのは、それがプロモーション活動になるからです。また、秋葉原で毎日のように行われるイベントの情報も収集しやすいですし、ライブアイドルにとってちょうどよい大きさのイベント会場が多数あるので、活躍の機会も多くなります。

最近、秋葉原で増えつつあるエンターテインメント系カフェでは、「アイドルに会える」店舗としてステージも用意し、ライブの後はアイドルたちが給仕をしてファンと交流します。その店舗で働きながら、CDを出したり、店外のイベントに参加したりと、活動の幅を広げ、収入を得ることができるわけですから、そこには活躍の機会を創りだしプロモーションする、優良なアイドル事務所のような役割があるのです。

生活のための労働にも「やりがい」や「達成感」を感じられる環境。秋葉原で活動するライブアイドルたちのように働くことは、今の若者にとって、とても大切で幸せなことなのかもしれません。

(梅本 克=文(デジタルハリウッド大学客員准教授))