「中田氏と橋下氏は足りない部分を補い合っている」と語る田崎健太氏

写真拡大

日本の政治の新たな第三極として期待されながら、最近は橋下徹共同代表の「慰安婦発言」「オスプレイ発言」などで物議を醸す日本維新の会。そんな維新の会の実像を元横浜市長、中田宏の視点を通して内側から描いた異色の政治ドキュメンタリーが『維新漂流 中田宏は何を見たのか』だ。著者の田崎健太氏に聞いた。

―維新の会といえば、橋下と石原慎太郎という共同代表ふたりのキャラがあまりにも強烈で、なかなかその内側が見えづらいのですが、今回、あえて中田宏氏という党内の「第三極」の視点で維新を描こうとしたきっかけは?

「これは中田宏ありきの企画でした。僕自身、政治家はあまり信用できない人たちというイメージがあったのですが、中田さんが横浜市長を辞めた後、月1回ペースで話を聞く機会があり、変な言い方ですが、彼が政治家にしてはうさんくさいほどにマジメで、それゆえ誤解されることも多いのだということに気づき始めたんです。

そんななか、維新の会が本格的に動き出し、中田さんが大阪市特別顧問に就任したわけですが、当初は『得体が知れない』と言って橋下さんをあまり信用していなかった中田さんの橋下への評価が、大阪市の顧問になってから少しずつ変わっていったんです。

橋下徹という政治家は彼がやろうとしているコト……、それ自体は基本的に間違っていないと思うのですが、それとは別に、橋下という強烈なキャラクターを『好きか嫌いか?』という要素もあって、そこを中田宏を通して見るとどうなんだろう? 『橋下徹』という事象を別の角度から描けるのではないかというのが出発点でした」

―ただ、この本を読んでいると、中田氏が橋下氏と問題意識を共有しながら一緒にやっていこうと努力しているのに、橋下があっさりと裏切ったり、肩透かしを食らわせたり……というシーンが延々と続いていて、ちょっと気の毒というか、大阪人の大好きな「ボケとツッコミ」のコメディショーを見ているような気分になることがありましたが?

「これは大阪と横浜というふたりの出身の違いも大きく影響していると思うのです。橋下徹という人が狂気を装いながら周囲に『メンドクサイぞ』という雰囲気をつくって、物事を強引に推し進めるのに対して、中田さんはどちらかというと、物事をできるだけ荒立てずに、スマートに進めようとするタイプ。

別の見方をすれば、橋下には少々荒っぽくても、政治家としての爆発力があり、その点では中田はかなわない。一方、中田には橋下に勝る経験があって、まともに事を進めていく部分では、彼が一歩引きながら、舵取りをしている部分が多い。そういう意味では両者が足りない部分を補い合っているとも言えるのです。確かに、橋下の大阪流についていくのは、ちょっと大変みたいですね(苦笑)」


―ちなみに、田崎さん自身は維新の会をどう見ていますか? 「漂流」というタイトルのとおり、危なっかしい印象も持っている?

「首相の公選制しかり、道州制しかり、日本の古くなってしまった仕組みを変えるという意味では、維新にしかできないことが数多くあるのは事実だと思います。安倍さんがどう取り繕おうと、自民党はどこまでも自民党ですし、民主党は労働組合から離れることはできないでしょう。

ただ、維新の会が拭い難い大阪的な体質というか、『適当でもオモロければええやん』という組織マネジメントをいまだに引きずっているのは事実。その課題をどう乗り越えていくのか、注目していきたいと思っています」

(構成/川喜田研 撮影/岡倉禎志)

●田崎健太(たざき・けんた)


1968年生まれ、京都府出身。ノンフィクション作家。小学館『週刊ポスト』編集部などを経て、99年に退社。早稲田大学講師として『スポーツジャーナリズム論』などを担当。著書に『辺境遊記』(英治出版)、『偶然完全 勝新太郎伝』(講談社)など

■『維新漂流 中田宏は何を見たのか』


集英社インターナショナル 1575円


大阪市特別顧問として橋下徹氏に協力。先の衆院選では日本維新の会から出馬し、当選した元横浜市長の中田宏氏。第三極として期待されるも橋下氏の「慰安婦発言」などで揺れる日本維新の会。その内幕を中田氏の視点から読み解く政治ノンフィクション