証券編

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証券編

■ 株式売買の活発化で業績好調も、先行きには不透明感。個人投資家のすそ野を広げる「日本版ISA」に注目を

2008年に生じたリーマン・ショック以降、世界中の株式市況は暴落した。さらに、11年の東日本大震災によって日本経済は混乱し、株式や債券の売買が伸び悩んだ。その結果、証券会社にとって収益の柱である株式売買手数料は低迷。また、不況によって企業の設備投資意欲が衰えたため、公募増資の件数も減少した。ここ数年、各証券会社の経営環境は厳しい状況が続いていたのだ。

 

ところが、12年12月に第2次安倍内閣が成立し、いわゆる「アベノミクス」が始まったことで株価は上昇。12年11月には8000円台だった日経平均株価は、13年5月に1万5000円台の値を付けた。これにより、株式売買が活発化して手数料収入が伸び、証券各社の業績は大幅に改善している。例えば、大手3社(野村證券、大和証券、SMBC日興証券)の12年1〜3月期における四半期純利益合計は490億円だったが、13年1〜3月期には1698億円と急伸した。

 

従来型証券会社より安い売買手数料でシェアを拡大してきたネット系証券会社も、リーマン・ショック後の不振から抜けだしつつある。松井証券の2013年1〜3月期純利益は、前年同期比で2.5倍の34.1億円。カブドットコム証券の2013年1〜3月期純利益も、前年同期比で2.5倍の11.4億円となった。個人投資家の株式売買が活発化しているのを受け、各社はコールセンターを拡充する方針を明らかにしている。

 

ただし、懸案事項もある。まずは、国内の株式市況が不安定であることだ。日経平均株価は、12年11月から13年5月までの約半年間で約80パーセントも上昇。一方、13年5〜6月には、わずか半月ほどで20パーセントほど下落する場面もあった。株価の変動があまりに激しすぎる状況が続くと、個人投資家の「株離れ」が起こる恐れもあるだろう。また、海外部門の収益が伸びていない点も心配だ。例えば、野村證券は08年10月、破綻したリーマン・ブラザーズの欧州・アジア部門を買収。海外事業の強化を目指したが、欧州債務危機などの影響を受け、収益化ができていない。また、大和証券も10年7月にベルギーの金融大手KBCグループからデリバティブ部門などを買収。しかし、その後デリバティブ規制が強化されたこともあって、事業の縮小を余儀なくされている。こうした海外事業を立て直すことが、大手各社にとって急務と言えるだろう。

 

証券業界を志望するなら、「少額投資非課税制度」の動向に注目しておこう。これは、イギリスで1999年に導入されたISA(Individual Savings Accountの略)を参考にしたもので、「日本版ISA(NISA)」と呼ばれることもある。年に100万円までの投資が、5年間、合計500万円まで非課税となるため、個人投資家にとってはうれしい仕組み。そこで証券各社は関連セミナーなどを開催し、個人投資家の掘り起こし、囲い込みを急いでいるところだ。

 

■ 押さえておこう <証券会社は「従来型」と「ネット系」に大別できる>

従来型証券会社
店舗を構えてサービスを提供。個人投資家を対象にした「リテール業務」だけでなく、顧客企業の資金調達・合併などを支援する「投資銀行業務」を手がける。大手としては、独立系の野村證券、大和証券が、メガバンク系の大手としてはSMBC日興証券、みずほ証券、三菱UFJ証券ホールディングスが代表格。
ネット系証券会社
インターネットを使い、個人投資家を主な対象とした株式売買サービスを提供。人件費を抑え、売買手数料を従来型証券会社より大幅に安くしてシェアを拡大している。大手としては、SBI証券、カブドットコム証券、GMOクリック証券、松井証券、マネックス証券、楽天証券が挙げられる。

■ 要チェックニュース! <東証と大証の統合は大きなニュース>

・東京証券取引所グループと大阪証券取引所が経営統合し、日本取引所グループが発足した。今後、現物株市場は東証、デリバティブ市場は大証に集約される予定。システムの統合などによって経営効率化を図り、世界の取引所との競争に打ち勝つのが狙いとみられる。(2013年1月1日)

 

・公募増資時に証券会社から未公表情報が漏えいし、インサイダー取引に用いられた問題が相次いだことから、政府はインサイダー関連の罰則強化を閣議決定した。これにより、証券会社の情報漏えい行為が、課徴金と刑事罰の対象に加わる見通しとなった。(2013年4月16日)

■ つながりの深い業界 <銀行と協力する「銀証連携」が進む>

メガバンク
グループ内のメガバンクと協力してビジネスを展開するケースが増加

生保・損保
個人年金などの分野で、証券と生保・損保は強力なライバル関係にある

マンションディベロッパー
不動産会社が手がけるREIT(不動産投資信託)分野は証券業界と密接に関係

 


■ この業界の指南役

日本総合研究所 研究員 高津輝章氏

一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程修了。事業戦略策定支援、事業性・市場性評価、グループ経営改革支援、財務機能強化支援などのコンサルティングを中心に活動。公認会計士。

 

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか