無給インターンができなければ正社員の就職もできない悪循環

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在学中に企業で就業体験を積む「インターンシップ」に従事する学生が増えてきた。研修の位置づけで一定の仕事を担うものだが、長期間従事しながら報酬が支払われないケースもある。体のいい「無償労働」を強いているのではないか。

そんな批判もある中、米国では大学が学生への経済支援策を打ち出している。米ウォールストリートジャーナル(WSJ)日本語電子版は2013年6月20日、米国で学生が無給でインターンとして働く場合、奨学金を支給する大学が増えているという興味深い記事を掲載している。

米国では非営利機関や芸術団体では無給が一般的で、以前から奨学金制度が存在していた。だが最近では、一般企業での無給インターンにまで対象を広げているそうだ。

期間は10〜12週間、なかには1000時間の長期も

米国の場合、大卒ですぐに「正社員」として雇用されるためには、インターンの経験が必要となる場合が多い。即戦力として働くためには、在学中に基礎的な訓練を積んでおかなければならないのが現状だ。

しかし、無給インターンに長期間従事するためには、親の経済力が必要となる。貧しい家庭の子弟はアルバイトが必要なので、有名大学の学生でも無給インターンにありつけず、就職もままならないという「経済格差」も発生している。

WSJの記事によると、大学によってはインターン1件あたり平均3700ドル(約36万円)を提供しているという。その原資は、卒業生らによる寄付だ。学生の親は学費高騰で出費に敏感になっている。学生集めのためにも就職率が大事なのは米国も同じようだ。

リクルートワークス研究所が2011年5月30日に公表した「海外における長期インターンシップ制度」の報告書によると、米国の有給インターンの時給は学位により異なるという。

大学の学部生の平均基本時給は19ドル(約1800円)、修士課程で同24ドル(約2300円)、博士課程だと同37ドル(約3600円)。その一方で、無給のケースもあるとしている。

約半数の企業は引っ越しを伴う場合には住宅の補助を与える。期間は10〜12週間程度が多いが、中には1000時間という長期プログラムもある。1日8時間・週休2日で約半年間にものぼるのだから、立派な労働だ。

米シャッツ法律事務所の井上奈緒子弁護士は、シアトルのオンライン情報サイト「Junglecity.com」に掲載されたコラムで、企業の無償インターンが認められる際の条件を挙げている。

日米それぞれ無給インターンシップは違法となり得る

井上弁護士によると、インターンは「仕事そのものが(学生の)利益・勉強となっていること」が必要であり、「インターン終了時に正社員になると約束しないこと」が前提となるという。そのうえで「インターンに正社員の仕事をさせないこと」や「インターンが他の社員または雇用者から直接トレーニングを受けること」を守る必要がある。

また、スーパーマーケットの棚卸しや掃除など「雇用者の利益を得るためだけ」の仕事はインターンにやらせてはいけない、といった配慮も求められる。

しかし実態としては「給料や税金の支払いを避ける」目的でインターンを受け入れる企業も少なくないそうだ。WSJの記事でも「映画撮影所での無給インターンシップは労働法に抵触する」との判断を米連邦判事が下したと報じている。

日本人留学生が、米国でインターンシップを体験することは可能だ。ネット上には有給、無給のインターンシップをあっせんする業者も見られる。しかし現実はなかなか厳しいようだ。

米大学院を修了後、現地企業で有給インターンを経験した40代男性によると、業務内容は一般社員と同じだったが、賃金面では同等とはいかず、決して余裕のある生活を送れる額ではなかったという。

これが無給となれば、「どうしても経験を積みたい」と納得したうえでならよいが、スキルアップにつながらず企業側から「便利屋」として扱われたら元も子もない。

米国のみならず日本国内でも、労働基準法上の「労働者」とみなされる場合は、無給や最低賃金以下で働かせるのは違法行為となるそうだ。本橋一樹弁護士は弁護士ドットコムのコラムで、

「指揮命令関係の有無(仕事の依頼、業務従事の指揮等を断ることができるか等)、インターンシップ生の作業によって企業側が利益・効果を上げたか(パソコンで作成したデータなどを企業のものとして活用してしまう等)、といった事情を総合判断して、労基法9条の『労働者』とみなされるか判断される」

と説明している。