会見に登場した宮崎駿監督(中央)、庵野秀明、松任谷由実

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宮崎駿監督が6月24日、東京・小金井のスタジオジブリで行われた最新作「風立ちぬ」の完成報告会見に、主人公・堀越二郎を演じる庵野秀明、主題歌を歌う松任谷由実とともに出席した。本作を鑑賞し「自分の作品で涙が出たのは、初めて。監督としては情けない……、みっともないです」。それでも「長年の積み重ねと不思議な縁、そして幸運にも恵まれ、1本の映画が完成した。だから不覚にも涙したのかなあ」と5年ぶりの長編完成に感無量の面持ちだった。

一方、宮崎監督を「僕にとって師匠です」と仰ぐ庵野は、「宮さんが泣くんだっていうのがまず驚きだった。人前では決して泣かない人ですから、(泣く姿を)見られて幸せだった」と述懐。「70歳を過ぎて、地に足ついた作品をつくったなと。今までは、地面からちょっと浮いていたから(笑)。この年でやっと20歳過ぎというか、ちょっと大人になっている。前回のポニョがあって、そのリバウンドでこれなのかな」と分析すると、宮崎監督は「リバウンドって」と苦笑いしつつも、信頼する後輩クリエーターの言葉にまんざらでもない表情だ。

映画は幼い頃からの夢を実現させ、飛行機の設計技師になった主人公が、戦争へと突入する激動の時代に、「美しいヒコウキを作りたい」という純粋な思いから、世界屈指の戦闘機であるゼロ戦を生み出した“矛盾”と向き合う姿を描いた。次郎のキャラクターは、実在したゼロ戦設計者の堀越二郎と、同時代を生きた文学者・堀辰雄という2人の人生を融合させたが、物語は宮崎監督による完全なフィクションになっており「堀越二郎の評伝にはしたくなかった。もともと模型雑誌に道楽で描いていた漫画が原作。鈴木さん(鈴木敏夫プロデューサー)に『次回作にしたら』と言われ、最初はどうかしていると思った」。

主役に庵野を大抜てきした理由を「今という時代を、一番傷つきながら正直に生きているし、それが声にも出ているから」と説明し、「この声はそうそういない。やっぱり庵野にやってもらって良かった」と手放しの絶賛。当の庵野は「自分の声が嫌いですし、やはり恥ずかしい。ただ、宮さんが言っていることは、当たらずも遠からず。演じることなく、素の状態でマイクに向かった」を振り返る。

本作では薄幸のヒロイン・菜穂子(瀧本美織)との恋愛と結婚生活も描かれており、劇中にはキスシーンやふたりが初夜を迎える場面も。「ラブシーンは恥ずかしいです」と照れる庵野に対し、宮崎監督が「嫁(漫画の安野モヨコ)には見せられないって言っていたな」と茶々を入れると、松任谷は「庵野さんのほうが、年上に見える」と目を細めた。

その松任谷は今回、荒井由実名義で1973年に発表したファーストアルバムのタイトルトラック「ひこうき雲」を提供。ジブリ作品への楽曲提供は「魔女の宅急便」(89)以来、24年ぶりで、「去年の12月に、鈴木さんとトークショーをしている途中に、オファーを直接いただき、『やっぱり、プロのプロデューサーだな』と驚いた」。同楽曲を作ったのが高校時代だといい「きっとこの映画も、今の中高生に響くんじゃないかな。シンクロニシティですね」と話していた。

最後に宮崎監督は「映画が完成した今は、宙ぶらりんな状態。この5年間、スタッフはかつてない群衆シーンなど、手がかかるシーンを丁寧に、丁寧にやってくれました。我々は紙に絵を描いているだけだから、苦労をしないといけない。若いスタッフたちはかなり痛んだはずだが、この痛みは必ず癒える。本当にやって良かった」と熱弁。今月6日に行われた会見で、鈴木プロデューサーが本作を「宮さんの遺言」と評した件には、「あの人は、そういうことを言うのが好きなだけ。もちろん遺言ではないし、もうちょっと生きようと頑張っている」と背筋を伸ばした。

「風立ちぬ」は7月20日から全国で公開。

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