日本版ISA、注目すべき商品特性とその活用法
2014年1月からスタートする日本版ISA(少額投資非課税制度)。上場株式等や株式投資信託の売却益、配当益や分配金を年間100万円まで5年間、非課税とする制度だ。今年末で証券優遇税制が撤廃となり、税率が10%から20%に戻される代わりに登場する新制度だが、個人投資家にとってどんなメリットがあるのか?仕組みと世代別活用法について関係者に聞いた。


目的を明確にしたうえでISAをフル活用しよう

日本版ISAをどのように活用すべきか?その戦略は投資家によってさまざまだろう。証券優遇税制が終了するので、ISA口座を利用して積極的に株式投資をしたいという人もいれば、中長期的なリターンが狙える株式投信を非課税で運用して、少しでも多く資産を増やしたいと考える人もいるはずだ。

「大切なのは、日本版ISAを使うこと自体を目的にしないこと。投資目的や資産形成の目標に沿って、あくまでもそれを達成するための手段のひとつとして日本版ISAを利用することが大切です」と前出の野尻哲史さんは語る。

「たとえば、日本版ISAで運用したお金は、年金と違っていつでも引き出すことができます。5年後、10年後に必要となる教育資金や住宅ローンの頭金、子供の結婚資金などを形成するという利用法もあるわけです」(野尻さん)

若い世代なら老後資金の形成に役立てることもできるし、すでに退職した人なら、生活資金を補助するために毎月分配型の株式投信を購入する方法もあるだろう。

リターンが分配されれば、投資額が膨らんで非課税枠がいっぱいになることは少なく、分配金を非課税のまま最長10年間受け取り続けることもできる。

また30〜40代の若い世代であれば、月々1万〜2万円ずつの積み立てで株式投信を買っていく方法もあるだろう。

月に1万円だと積立額は年間12万円、5年間なら60万円なので、仮に5年間のリターンが10%でも100万円の非課税枠を上回ることはない。

注意したいのは一度株や投信を売却すると、その分の非課税枠は使えなくなる。仮に70万円分の投信を購入し、その課税年度内で売却した場合、残りの非課税枠は30万円となる。もちろん、この未利用枠は翌年に持ち越せない。「売却するたびに非課税枠が減ることを考えると、株の短期売買には不向きだといえます。あえて株を買うなら、非課税枠が減ることを惜しまずに短期的な暴騰が狙える株を買って、利益が乗ったらさっさと売ることでしょうね。ルールに縛られて5年間持ち続けると、逆に損をする可能性もあります」と語るのはフィナンシャルリサーチの代表・深野康彦さん。

また、「非課税枠をめいっぱい利用したいのなら、短期売買は税金を取られても特定口座で行ない、投信や株主優待狙いの株はISA口座で買うといったように、口座を使い分けるのも方法ですね」と深野さんはアドバイスする。


口座開設後、原則4年は他金融機関への変更不可

どの金融機関で口座を開くのかも悩みどころだ。いったん口座を開いてしまうと、4年間は別の金融機関の口座に変更することができない(*)。

「口座開設の手続きがスタートするのは今年10月ですが、各金融機関はそれまでに日本版ISA向けのさまざまな金融商品を用意するはずです。自分が投資したい商品があるかどうかをじっくり見極めて、口座を開く金融機関を選びたいですね」と語るのは、公認会計士でアールパートナーズの代表・平林亮子さん。

株を売買したければ証券会社、投信だけでもよければ銀行やゆうちょ銀行が選択肢となるが、証券会社でも外国株をISA口座で扱うところと扱わないところなど、商品ラインアップに違いが出そうだ。

「今後、各金融機関は口座獲得のために華々しくキャンペーンを打ち出すと思いますが、一時的な特典に惑わされることなく、長く付き合えるかどうか、使える商品があるかどうかなどを基準に選びたいですね」(平林さん)



*2015年からは口座変更も可能になる見込み。

資産再配分機能を備えた、値下がりしにくい投信が理想

日本版ISA制度に適した投信、3つの条件

日本版ISA制度を使って投信を買う場合、どんな商品を選ぶべきか。前出の汐見さんは「現在の商品に加えてISAとの親和性がより高い商品も提供する」という。それは、?若い資産形成世代が利用するなら毎月分配型ではなく、年1回決算など分配頻度の低い投信。?資産を一度売却するとその分の非課税枠は再利用できないので、市場環境に合わせて投信自体が組み入れ銘柄・比率などを変えるリバランス機能を備えた投信。?売却損が発生しても損益通算ができず、5年後の非課税期間終了時の移管は時価で評価されるため、値下がりしにくいダウンサイドリスクを抑えた仕組みを備えた投信。

特に?については、「100万円で投信が80万円に値下がりしたところで課税口座へ移管し、その後当初の100万円に戻った場合、投資家は1円も利益を得ていないのに20 万円分について20%が課税されてしまいます」(汐見さん)。

2014年から10年間、毎年非課税口座を開設すればその?危機〞は18年以降、毎年訪れる。だから、ダウンサイドリスクを抑えることが重要なのだ。下表に日興アセットマネジメントの主なISAに適した新商品を挙げた。



深野康彦(YASUHIKO FUKANO)
ファイナンシャルリサーチ 代表

20年超のキャリアと豊富な知識をもとに、資産運用、保険、住宅ローンなどを初心者の立場からわかりやすく説明。テレビ、雑誌、講演等で活躍中。



平林亮子(RYOKO HIRABAYASHI)
アールパートナーズ 代表

公認会計士。お茶の水女子大学在学中に公認会計士2次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現・新日本有限責任監査法人)に入所、公認会計士3次試験合格後に独立。著書に『レシートで人生を変える7つの手順』(幻冬舎)など。



この記事は「WEBネットマネー2013年7月号」に掲載されたものです。