”それ以前”の世界に『新しい攻殻』を作ること - 黄瀬和哉総監督の考える『攻殻機動隊ARISE』とは? (1) 攻め要素と縛られないキャラクターづくり

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6月22日より、『攻殻機動隊』の新たなシリーズとなる『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』が全国20の劇場でイベント上映、同時にBlu-ray/DVDが発売となる。

『攻殻機動隊』は士郎正宗氏によるコミックを原作に、1995年『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』、2004年『イノセンス』と押井守監督による劇場作品が、また2002〜2006年には神山健治監督による『攻殻機動隊S.A.C.』シリーズが公開されたProduction I.Gの看板と言えるタイトルで、海外での評価も高い。脳や身体の一部(または全部)をサイボーグ化する「電脳化」「義体化」と言われる技術が発達し、あらゆるものがネットワーク化された世界を舞台に、電脳戦とフィジカル両面で最高度の腕を持つ草薙素子が、少数精鋭の極秘防諜機関「公安9課」を率いる。

シリーズ各作品によって設定に多少の差があるが、ファッションではなく技術的に現実味のあるSF・サイバーパンクな世界観と、その技術によって起こされる事件を追い詰めた結果、人間への根源的な問いかけに対峙するというテーマはおおよそ共通している。





この度公開されるARISEでは、これまでのシリーズで初となる公安9課発足に至るストーリーが描かれるとあって、ファンの期待も高い。原作者の士郎正宗氏からプロットの提供を受け、脚本は『マルドゥック・スクランブル』などアニメ脚本の実績も多い冲方丁氏、そしてProduction I.G の石川光久社長が「I.Gの秘密兵器」と評する黄瀬和哉氏が総監督に起用された。

スタッフ、キャストも一新され、ファンにとってはどんなものが出てくるのか予想のつかない布陣となった新たな『攻殻』。今回は、Production I.Gの、というより日本のアニメーションの看板といえる作品に挑んだ黄瀬和哉総監督にお話を伺った。

――黄瀬監督といえば、これまで『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』『機動警察パトレイバー 劇場版』をはじめ、数々の作品でキャラクターデザインや作画監督を担当してこられましたが、今回、総監督をお引き受けになった経緯を教えてください。

「制作発表でも話したことですが、石川社長からの社命でした。今から話す仕事に関しては断らないでくれ、断らないと確約してくれれば何の仕事か教える、と」

――仕事の内容を言う前にですか!?

「言う前ですね……」

――内容をお聞きになっていかがでしたか?

「攻殻シリーズに関しては作画でずっと関わってきたので、作監(=作画監督)ならまだ分かるんですけど、総監督ということで……。これまで監督の経験もあまり無いので、何をやれというんだ、という感じでしたね」

――(先に配布された資料にあった)石川社長のお話では、その時点で士郎正宗氏のプロットや、脚本に冲方丁氏を起用することなどが決まっていた段階だったそうですね。総監督としては、中身を作るところに専念できた、ということでしょうか?

「具体的に中身を作る仕事は、各話監督さんたちに任せる形で、僕は上がってきた脚本の本読み(脚本の打ち合わせ)や、コンテのチェックなど、作品全体を俯瞰して『このままゴーしていいよ』とか、そういう『判断をすることに』専念するよう言われました。

ただそれでは関わり方があまりにも微妙なので、『ちゃんと関わった格好させて』と言って(笑)、キャラクターデザインをやることになりました」

――キャラクターが可愛かったですね。特に素子は、動いて見るとより良かったです。

「ありがとうございます。1話をやってくれた西尾君(作画監督・西尾鉄也氏)の手柄です(笑)」……続きを読む