一般企業の社債の発行が増えてきた。今後、金利がいちだんと上昇傾向を強めるという予想から、金利水準の低いうちに社債を発行して、低コストでの資金調達を図りたいという企業の思惑が背景にある。社債には、個人投資家が買えない、いわゆる機関投資家向けのものも多いが、最近は、個人投資家向けのものも少しずつ増えてきている。

 すでに、足下では長期金利は上昇傾向にあるため、それに連動して、新しく発行される社債の利率(クーポンという)も、上昇し始めている。それは、個人向け社債についても同様であり、その結果、資産運用の対象として検討しても良いものが増えているのである。例えば、ソニーは、この6月に1500億円の個人向け社債を発行したが、「個人向け」は同社にとって初めてのこと。その内容は、期間5年、利率0.85%、発行額1500億円というものだった。

 当初、利率は0.8〜1.4%が仮条件として提示されていて、「1%を超えてくるか!?」と市場関係者の期待を集めたが、0.85%と仮条件の下限近くで決まってしまった。6月にかけて、長期金利の動向が落ち着いてきたことが主因だ。それでも、販売は好調のようで、6月18日の販売最終日を待たずに、完売している。

■利率1.55%は金利水準からすれば妥当な水準

 利率は仮条件の下限近くとはいえ0.85%。現在、メガバンクが販売しているインターネット定期預金の5年物0.13%とは、大きな差がある。また、5年債という、中期債となったことが大きいと見られる。これが8年債とか10年債という長期ゾーンになってしまうと、金利上昇リスクが意識されてしまい、投資家サイドとしてはなかなか手が出しにくくなるからだ。

 その点で、ちょっと微妙なのが、現在募集中の東北電力債(第470回債)。内容は、期間10年、利率1.55%、発行額300億円。電力債としては、初の個人向け「10年債」ということで注目されている。利率1.55%は、金利水準からすれば妥当な水準。ただ、10年債であれば、今後、このくらいの利率の社債は結構発行されてくると予想されるので、焦って買う必要はないとも言える。もし、現在、自身の資産運用において、10年程度で満期を迎える金融商品がなければ、余裕資金を多少振り向けてもよいかもしれない、というレベルではないだろうか。

 ただし、電力債では比較的多い「一般担保付き社債」なので、元本の安全度はかなり高いといえる(※東京電力とは違い、東日本大震災での賠償責任などはない)。また、申し込みも10万円単位となっている。総じて、初めて社債を買う人でも購入しやすい、ビギナー向けの内容となっている。

 すでに販売は始まっており、売れ行きはまずまずの模様。募集最終日である6月24日までに完売してしまう可能性もあるため、買いたい人は早めに注文を出した方が良さそうだ。その際、在庫は主幹事証券の方が多いので、今回の主幹事証券である、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、みずほ証券、SMBC日興証券に問い合わせる方が早いだろう。新規に口座開設をしなければならない場合、数日程度の時間がかかることもあるから注意が必要。

 社債や国債といった債券は、途中売却をせず、満期まで保有すれば、発行体などが破綻しない限り元本割れすることがない金融商品。資産運用の有力な選択肢として、もっと見直されてよいと思う。

(文/松岡賢治)

マネーライター、ファイナンシャルプランナー/シンクタンク、証券会社のリサーチ部門(債券)を経て、96年に独立。最新刊に『人生を楽しむマネー術』(共編著)。