[其ノ三 投信ファンダ編]百花繚乱の日本株投信
アベノミクス効果による円安と株高で、投信全体にも資金流入が顕著です。月間で2011年8月以来となる高水準の1100億円を記録。厳しい環境を耐えてきた日本株投信の現状は?


通貨選択型などさまざまなタイプがある日本株投信の?今〞

長らく不況にあえいでいた日本ですが、安倍晋三首相が進める経済政策「アベノミクス」への期待感から、少しずつ息を吹き返しつつあります。TOPIX(東証株価指数)と日経平均株価はいずれも約5年ぶりの水準まで回復し、為替市場における極端な円高傾向も是正されました。今回は、ますます注目度が高まる日本株投信の?今〞に迫ってみます。

リッパー分類「株式型 日本株」、同「中小型株」に属する追加型株式投信(ETF〈上場投信〉を除く)の純資産残高は、3月末時点で5・5兆円となり、こちらも約5年ぶりの水準まで回復しました。

また、3月の月間純設定額(設定額から解約額を引いた額)も、2011年8月以来となる高水準(1200億円)を記録しました。やはり市場環境が上向くと投信の販売も伸びることがわかります。

しかし、現在の日本株投信ブームは、2007年ごろまで続いた「いざなみ景気」のときのそれとはまた状況が異なります。

日本株投信とひと口に言っても、現在は実にさまざまな種類が運用されています。ベース資産こそ日本株ですが、通貨選択型のように通貨の上乗せがあるものや、基準価額が一定水準に到達すると利益確定のため強制的に償還される繰上償還条項付きなどがその代表例です。



また、2005〜2006年ごろに日本株投信の設定が相次いだときは、年4回の四半期決算型をはじめ、定期分配を行なうものが主流でした。高配当銘柄を中心に組み入れ、配当収入のほかに売買益も上乗せしてボーナス分配を行なうようなタイプです。さらに、組み入れ資産が100%日本株でありながら毎月の分配を目指すというファンドも登場し、半ば無理やり定期分配型として展開しているような傾向がありました。

しかし、現在は分配頻度に固執することなく、あくまで日本株という資産そのものに着目したファンドの設定が目立っています。

また、具体的な投資対象として、ジャスダックやマザーズといった新興市場が見直されている点も足元の日本株投信ブームを下支えしています。

中小型株に特化したファンドへの純流入が年初からプラスに転じているほか、6月号でも取り上げた「JPMザ・ジャパン」(JPモルガン・アセット・マネジメント)のように、投資対象市場を東証1部に限定することなく優良銘柄を発掘するファンドの人気も加速しています。実際に「JPMザ・ジャパン」は、短期間のうちに購入希望者が殺到したため、3月と4月の2度にわたって販売停止措置がとられるという異例の事態に発展しました。

このように日本株投信は、長い市場低迷期を経て、ファンドの仕組みや投資対象市場に至るまでさまざまな変化を遂げてきました。

これまで海外ものにしか興味がなかった方も、今このタイミングで日本株投信を見直すと新しい発見があるかもしれません。

今月の海外投信ノ「値」764億ドル
米国債券ファンドへの第1四半期の純流入額

株式市場が好況ですが、米国の投信市場では依然として安定的なインカム収入が見込める債券ファンドが根強い人気。「グレートローテーション(大転換)」と称される債券から株式への資金シフトは、投信市場ではまだ本格化していないようです。



【今月の投信師匠】
篠田尚子(SHOKO SHINODA)
トムソン・ロイター・マーケッツ

慶応義塾大学法学部卒業。リッパー・ジャパンに所属するファンドアナリスト。情報量の多さと分析の鋭さは天下一品!



この記事は「WEBネットマネー2013年7月号」に掲載されたものです。