過去数年の悲惨な状況に比べれば、今年は少し上向きのムードが漂う。日本の大手家電メーカー。ところが、シャープが経営再建のための提携戦略をなかなかまとめられないように、経営の様子はどこもドタバタ続きだ。日本のメーカーのこの混乱状況について、大前研一氏が解説する。

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 2013年3月期決算は、円安や株高で業績が上向いた企業が続出した。表向きは上昇ムードだが、実はその陰で多くの日本企業が経営者の人事に問題を抱えている。

 たとえば、大手家電メーカーは、どこもかしこも経営陣の“内ゲバ”が起きている。シャープは経営再建に向けた提携戦略で、まず町田勝彦相談役(当時会長)が世界最大のEMS(電子製品受託生産サービス)である台湾の鴻海精密工業との資本・業務提携をまとめた。

 それが暗礁に乗り上げると、次は片山幹雄会長が米半導体大手のクアルコム、韓国のサムスン電子と交渉した。奥田隆司社長は町田相談役と片山会長の動きを見守るだけで、シャープの経営は迷走を続けた。結局、片山会長が退任して奥田社長も会長に退き、高橋興三副社長が社長に昇格して経営体制を一新することになった。

 パナソニックも、津賀一宏社長が中村邦夫元社長(現相談役)や大坪文雄前社長(現会長)らが敷いた路線との決別を宣言。創業者の松下幸之助氏が導入して中村元社長が解体した「事業部制」を12年ぶりに復活させ、組織体制も大幅に刷新した。さらには東芝も、富士通も、NECも、同じように経営陣が内輪もめして経営が混迷を深めている。

 なぜか? それは、かつての学生運動が国家権力によって次第に制圧され、全学連が末期に分裂して党派間の内ゲバに走ったように、外の敵が強すぎると内部抗争が激しくなるからだ。

 日本の家電メーカーも、アメリカのアップルや前出のサムスン電子、鴻海精密工業といった海外勢があまりに強くなりすぎたため、外部と戦う気力が失せ、内ゲバに走るようになってしまったのである。

 この内輪もめ現象を私は“日本企業のアラブの春”と呼んでいる。「アラブの春」は2010年から2012年にかけて北アフリカ・中東諸国で起きた一連の民主化運動で、チュニジア、エジプト、リビアなどで独裁政権や長期政権を崩壊させたが、その後は国家を動かしていく人材も仕掛けもなくなって各国で内戦や内乱が泥沼化し、どこもガバナンス(統治)を失ったまま混乱の極みとなっている。

 結局、強力なリーダーシップと統治力を有していたリーダーがいなくなると、権力の空白が生まれ、下から昇進してきた人材では組織のマネジメントができなくなってしまうのである。今、多くの日本企業の場合、経営陣がドングリの背比べで社長以外の役員も社内で力を持っているため、とりあえず選んだ社長にはリーダーシップも統治力もない。だから、“アラブの春”の後のような混迷期に陥る企業が続出しているのだ。

※週刊ポスト2013年6月28日号