3日、イオンモールは最大で約678億円もの資金を調達し、全額を2015年2月末までの新設店舗の設備資金にあてると発表した。大型ショッピングセンターの代表格として順調に拡大を続けている同社だが、その人気の秘密はどこにあるのか。

流通ジャーナリストの西川立一(りゅういち)氏は、魅力のひとつに「ここには何があるんだろう?」と思わせる、“好奇心をくすぐる場”が広大な店内に意図的に散りばめられている点を挙げる。

「その役割を担う代表がヴィレッジヴァンガードでしょう。名古屋の個性的な本と雑貨のお店が下北沢の旗艦店で人気を集め、イオンモールにも進出。今や全国に400店舗です(※イオン以外の商業施設も含む)。イオンレイクタウン(埼玉県越谷につくられた日本最大のショッピングモール)には3業態が出店し、シニア向け新業態も出始めています」(西川氏)

あの“ヴィレヴァン”の雑多さこそが、モールという人工空間に“街”の雰囲気をもたらす不可欠な要素になっているのだ。また、メガネのJINS(ジンズ)も地元のイオンモールへの出店を契機に全国のモールから引っ張りだこになり、ブレイクした店だ。イオンモールをディベロッパーであるイオンとともに企画してきた、株式会社船場の深井幹夫氏(開発事業部)は言う。

「運営するジェイアイエヌは群馬が発祥で、もともとアイデア豊かな会社でしたが、サクセスストーリーの始まりは2003年、イオンモール大田への出店でした。それから10年、郊外で蓄積したノウハウを生かし、近年は都心の駅ビルにも次々と進出。この5月には東証一部に上場も果たした」

一方、その逆方向といえる「東京発、イオンモール経由で全国区」というパターンも増加中。例えばメンズビギやニコル、ユナイテッドアローズといった老舗ファッションブランドが“モール向き”の新ブランドを展開するケースがよい例だ。

「この10年で地方のお客さんのモノ選びの基準も高くなった。それに応えるため、モール運営者もテナントのグレードを上げる努力をしてきた。同時にブランド側も郊外の大きな市場に気づき、出店を始めた。こうして地方でも心地よく都市体験ができるようになってきたのです」(前出・西川氏)

郊外で「進化したボリューム層をつかむ」ノウハウを蓄積してきたイオンモールが今、力を入れているのが都市部への出店。

「2010年オープンの京都駅前をはじめ、今後は岡山駅前、幕張新都心、旭川駅前など都市部でのオープンが続く。百貨店やファッションビルは危機感を持っているでしょうね」(西川氏)

すでに百貨店の売り上げは毎年減少傾向にあり、地方では閉店も相次いでいる。

「ショッピングモールは百貨店や駅ビルとは違い、一日ゆったり過ごせる街を目指しています。家族や彼女とぷらっと食事にでも行こうか、というときに選ばれる場所でありたい。行けば好きな店も見つかるかな、と。この漠然とした魅力は巨大なスペースだから出せるのです」(船場・開発事業本部の鈴木裕之氏)

ショッピングモールは「洗練されつつも個性的すぎず、価格も妥当」という絶妙なさじ加減により、都市と地方の感性の境界を取り払ってきたのだ。

(取材・文/佐口賢作&本誌編集部)