昨日、6月19日は小説家・太宰治を惜しむ忌日、桜桃忌でした。自ら命を断ったあの日と同様に、今年の桜桃忌もあいにくの雨となりました。梅雨の時期とはいえ、どこか運命的なものを感じさせます。

 太宰治が家族と共に生活をし、創作活動に励んだ東京都三鷹市では、太宰関連のイベントやツアーが目白押し。古本ギャラリーカフェ「点滴堂」では、10人のアーティストによるグループ展「女生徒」が開催されています。

 展示のもととなっているのは、同名の短編「女生徒」です。ヒロインの「私」は、常に小説に影響されて生きている14歳の文学少女。「自分から本を読むということを取ってしまったら、この経験のない私は、泣きべそをかくことだろう。それほど私は、本に書かれてある事に頼っている」と述べるほど、文学に入れこんでいます。

 小説の始まりは、「私」が朝起き、蒲団を畳み、鏡で自分を見る。そんな何気ない朝です。支度を終えて外に出ると、五月の空気が彼女を包みこみます。少しウキウキした彼女は電車に乗り、立っている時と座っている時では、考えていることが違うということに気がつきます。「私」の少し厭世的な思考は終わることなく、眠りにつくまで続きます。
 
 女子学生の文体で展開される本作では、彼女が思う全てのことが語られているためか、せわしない文章が続きます。また、「朝は、意地悪」や「眼鏡は、お化け」といった少女らしい表現も、垣間見ることができます。そのため、思春期を迎えた多感な女子学生の頭の中を、のぞいてしまったような感覚に陥ることができます。

 桜桃忌は過ぎてしまいましたが、「女生徒」展は23日まで開催されるそうです。落ち着かない天気が続きますが、これを機会に三鷹まで足を運んでみてはいかがでしょうか。

【関連リンク】
・点滴堂 企画 「女生徒」 展
http://tentekido.info/joseito.html



『女生徒 (角川文庫)』
 著者:太宰 治
 出版社:角川グループパブリッシング
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