「亀梨和也主演でこういう作品ができたことは幸せ」と語る三木監督

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「時効警察」「インスタント沼」の奇才・三木聡がメガホンをとり、KAT-TUNの亀梨和也が主演を務めるという異色タッグが話題の「俺俺」(公開中)。主人公の“俺”が、なりゆきでオレオレ詐欺に手を染めたことをきっかけに増殖し、亀梨本人が実に33役を演じるという不条理サスペンスについて、三木監督に聞いた。

監督が「俺俺」でテーマとして掲げたのは、「見る人がそれぞれの見方をして、自分なりの答えを見つけてもらえるようにすること」だったと言う。「物語の明確な提示はない」と言い切り、だが、三木作品ファンにとってはすでにおなじみの、ポスターや看板ほかこだわり抜かれた意味深なサインが画面の隅々に配され、観客の心を(無意識のうちに)につかむ仕掛けは幾重にも張りめぐらされている。だがその仕掛けは、すでに当初の思惑を離れ、監督自身も自覚していなかったような観客の反応を生んでいるという。

共立女子大学で講義を行った際にも「同じ年代、性別が集まっているコミュニティなのに、学生それぞれが自分の観点で見る傾向が分かって、発見があった」と驚く。学生からのアンケートを振り返りながら、「もちろんストーリーが気になって見ていく人もいるんですが、主人公のアパートと実家のキッチンはわざと相似形に作ってあったりして、そういう“モノの配置”で見る人がいたり、不穏な空気感──キーになるシーンでは必ず“制御しきれない”象徴として水や液体を出しているんですが、そこに注目して見ていく人もいます。1回目よりは2回目以降の方がもっと客観的に見るようになるので、モノの配置には気づきやすくなる」と続ける。

三木作品といえば、日常からずれていく不条理な世界観が特徴的だが、なぜそうした作品を生み出し続けるのか。監督は、「分かりやすいストーリーにワクワクして、ここで笑ってください、ここで泣いてくださいっていう映画に気持ちを動かされるのももちろん否定はしません」としながらも、「意味の分からないもので不安を投げかけたときに、観客が自分なりに答えを探すというか、納得するために右往左往するのもエンタテインメントの方法論としてはありなんじゃないかと思うんです。自分なりの答えが見つかったなら、それが正解かどうかなんて問題ではなくて」と思いを明かす。

女子大生が「ゲシュタルト崩壊を体感した気がする」と指摘した、この不条理な世界を「(主演の)亀梨は試写の際に体験していた」と三木監督は言う。「撮るまでは全然意識していなかったんですが、同じ人がずっとたくさん出てくると、同じ人に見えなくなっちゃうんですね。もちろん彼の演じ分けのせいでもあるんですが、亀梨自身が、自分と同じ顔がひたすら出てくる気持ち悪さで激しく動揺していて。それこそ、『時計じかけのオレンジ』で矯正治療を受けていたアレックスみたいな顔」と笑いながら、「完成してから発見することが多かった」と振り返る。

とにかく見る者の数だけ、それこそ「33人いれば33通りの」解釈が成り立つ「俺俺」。三木作品初心者は、一体どのように楽しめばいいのか。「もちろん、どんどん“俺”が増えていくストーリーや、亀梨和也の芝居を楽しむのもあり」と話しながら、「モノを中心にする見方もいいですね。美術スタッフと本当に突き詰めて色んな仕掛けを施してありますから、『どんな意味があるんだ?』って、それこそ『ウォーリーをさがせ!』みたいに(笑)」と明かす。

「『俺俺』のどこに引っ掛かったか、どういう答えを見つけたのかでも、“あなたの中の俺”が浮き彫りになってくるんじゃないですかね。他人と話したりして、いかに自分と差異があるかを確認するのも面白いと思いますよ」

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