(カルロス・トシキはこの試合、ブラジルと日本、どっちを応援したんかなぁ………。)



……はっ!すみません、今回はショックのあまり、ついついどうでもいいツイートからスタートしてしまいました……。
皆さんも今回の結果にはガッカリしていることでしょう。
ええ、僕もガッカリしています。

どこかで誰かが言っていましたが、『負けたのは仕方がない。でも、せめてブラジルを本気にさせてほしかった。』
まったく同感です。

そしてもっと言ってしまえば、それ以上に残念だったのは、「ザック・ジャパンはこのスタイルで、1年後のワールドカップを戦うのだ」という方向性が、まったく見えてこなかったことでしょうか。



今までやってきたこと、そしてこれからやろうとしていることが、本当に正しいのかどうか。

ザック・ジャパンは今、そのスタイルを見つめ直す「岐路」に立たされているように思うのです。


さらに強力になったブラジル代表

日本にとっては 0-4 で敗れた昨年10月の対戦以来、8ヶ月ぶりのブラジル戦。
なお前回の対戦後の11月、ブラジルはそれまで指揮を執っていたマノ・メネーゼス監督を解任。
後任として、11年前の日韓ワールドカップでブラジルを優勝に導いた名将、ルイス・フェリペ・スコラーリを就任させています。

さらにブラジルは、スコラーリ監督とともに代表チームを管理するスポーツ・ディレクターとして、こちらも94年のアメリカワールドカップで優勝監督となったカルロス・アルベルト・パレイラを招聘。
近年のセレソンでは突出した実績を持つ2人のタッグで、地元開催のワールドカップを本気で奪いに来ています。



ちなみにこのスコラーリとパレイラの両監督は、ブラジルをワールドカップで優勝させた、という以外にもある共通点を持っています。
それは両者ともブラジル人としてはディフェンシブな戦術を好み、優勝するまでは国内で少なからず批判を浴びていた、という点でした。

そして指導陣の交代は、当然ながらブラジル代表のスタイルにも変化を与えます。
前回対戦した際のブラジルは、より攻撃的で高い位置からプレスをかけてくる印象がありましたが、今回のブラジルはもっと慎重に、後方でディフェンスを固めてきた印象があります。
これはジュビロ磐田でも指揮を執ったことのあるスコラーリ監督が日本の成長を評価して警戒をしていたことや、前半の3分で先制点が生まれてブラジルが無理に攻めなくても良い展開になったことも影響していたかもしれませんが、結果的に日本にとってはさらに「攻略しにくい相手」になってしまったと言えるでしょう。

ブラジルがラインを下げてきたことで、時間帯によっては中盤である程度ボールを持たせてもらえた日本でしたが、その反面、決定的チャンスはなかなか創らせてもらえませんでした。

そして前半3分、後半3分、後半ロスタイムとまさに「決めるべきところ」で完璧に決められ、日本にとっては「負けるべくして負けた」試合となったのです。


ザック・ジャパンの迎えた ”ターニングポイント”

長友佑都は試合後、「中学生とプロくらい、個々のレベルに差があった」と語ったそうです。
インテル・ミラノで「世界のレベル」の中で戦っている長友から見ても、まだそれだけの差があった、というのは辛い現実ですが、それはそれとして受け止めなければいけないでしょう。

そしてそれを踏まえた上で、ひとつ言えるのは、現実的には「あと1年で、中学生がプロと同じレベルにまで成長することはあり得ない」ということです。
つまり日本が1年後のワールドカップで上位進出を目指すのであれば、残念ですが「個のレベル差を埋める」ことでチーム力を高めることは、ある程度諦める必要があると言えます。
それほどの時間は、もう日本には残されてはいないからです。



では、どうすればいいのか?



前述のとおり、1年で「個のレベル」を劇的に上げることは不可能でしょう。
しかし、1年で「チームの戦術」をつくることは出来るかもしれません。

つまり、スタイルの変更です。
逆に言えば僕にはもう、それしか選択肢は無いのではないかとも思えます。



それでは、どんなスタイルに変更すればいいのでしょうか?
これは、本当に中学生がプロと対戦したとしたらどうするだろうか?を考えれば自ずと答えは見えてきます。
中学生が本気でプロに勝とうと思ったら、真っ正面からぶつかってはまず勝ち目はないでしょう。

つまり、「ガッチリ守ってからのカウンター」。
現実的にこれしか、方法は残されていないのではないでしょうか。



前々回の記事でも書きましたが、僕は日本がポゼッションサッカーで世界と互角に戦うのは、まだ時期尚早だと考えています。
この試合でも、特に後半に入ってからの日本には、ほとんど攻め手は残されていませんでした。
遠藤保仁を代えたり、本田圭佑を代えたりと、ザック監督は現在のチームで1・2位を争うキーマンの2人を交代させる荒療治に出ましたが、ではそれで何かが変わったのか?と言えば、「ほとんど何も変わらなかった」というのが実際のところではないでしょうか。
付け焼刃の選手交代で変化が起こせるほど、日本とブラジルの力の差は小さくはなかったということです。

僕の考えでは、そもそもブラジル相手に「1点差、2点差をどう追いつくか」を考えるような展開になっている時点で、勝ち目はほとんど失われていたと思います。
このレベルの相手に日本が勝とうと思ったら、点の奪い合いになってはまず勝ち目はありません。
つまり、1点を争うロースコアゲームに持ち込むことが絶対条件で、その場合は十中八九、『先制点を奪えるかどうか』が勝負を分けるでしょう。

言い換えればこの試合は、「開始3分で日本は負けていた」、とも言えると思います。
日本が本気で勝とうと思ったら、あの1点目を何が何でも阻止する、そのことに全神経を集中させていなければいけませんでした。

それができなければ、きっと何度ブラジルと対戦したとしても、同じような展開が繰り返されるのではないでしょうか。



しかし幸いなことに、日本にはまだ1年の猶予が残されています。



この敗戦を受けて、日本は変わることができるのか?

それとも、何も変わらないまま1年後を迎えるのか?



この試合を大きな『ターニングポイント』にできるかどうか。

それが、今後の日本の命運を分けるのではないか、と僕は思うのです。