■見た目の印象をつくるボディランゲージ

非言語行動(ここでは言語以外のボディランゲージや表情などを表します)は、他の人が自分をどう見て、どんな印象を持つかに影響する。では自分自身への影響はどうだろうか?

今回は、社会学者エイミー・カディ氏がプレゼンカンファレンスTEDで行った「ボディランゲージ(非言語行動)の自分自身への影響力」をテーマにしたプレゼンから“自信を持つために効果的な方法”をご紹介させていただこう。社会学者が政治家の1秒間の表情を分析しただけで選挙結果を70%言い当てられたほどに、その非言語要素は人物の印象に影響を及ぼすという。

では、こうした非言語要素の影響を、他者への印象ではなく、自分自身の内面へと置き換えてみたらどうなるだろうか。「人は、自分がより力を感じられるときには体を開き、より大きなジェスチャーをする。それを逆に考えて、自信がないときに大きなジェスチャーをすることで、自信を感じることができるのではないか?」という問いを元に、カディ氏らは実験を行っていった。

たとえば人は笑うだけで幸せになれる脳内物質が分泌される。それは、「笑うふり」「笑顔に似た表情」だけでも構わない。カディ氏もひと言ふれた有名な「笑顔」実験がある。その内容は、口をすぼめるようにして箸を縦にくわえたときと、笑うように口を横に広げて箸も横に加えたときでは、後者のほうが脳内に快楽に関係したドーパミンが出るというものだ(*)。“笑うフリ”だけでも楽しい気分になれる結果から、つまりは「楽しいから笑う」だけでなく、「笑うから楽しい」の両方の効果が考えられることになる。

ここから、小さな体の動きひとつが、脳や感情に大きく影響を与えるとわかるだろう。それでは「笑いの効果」同様に、どのように動けば人に強い印象を与えるだけでなく、自分自身に力がみなぎり、より自信が持てるようになるのかを見ていこう。

■「力のポーズ」が自信をもたらす

たとえば、動物はより体を開き、大きく見せ、空間の占有率を広げることで力を示すことがある。人間も同様に、体を開き、大きく見せる、あるいは自信がある“フリ”をするだけで力を示すことができるばかりでなく、自分自身にも力がみなぎってくるという。カディ氏が提案する「力のポーズ」とは、たとえばこんな風だった。

1. 両肩幅に開いた手を机に置き、肩も足も開いて立つ。
2. 腰に手を当てて肩を開き、足も開く
3. 体をそらせ気味にし、頭の後ろに手を組み、両肘を開く。
4. 両足を開いて反り返り気味に座り、手も横の椅子に置くなどして開く……など。

リーダー的な立場や力のある人(高い地位や立場、強い気概の人など)は、より自信を持ち断定的で、楽天的な傾向がみられる。しかも物事を抽象的にとらえることで動きやすくなり、上記のように体を開き動作も大きくなっていく。こうした人たちの脳内物質を調べると、とくに支配性のホルモンであるテストロンがより多く出ており、ストレスのホルモンであるコルチゾールは少ないそうだ。

逆に「力のないポーズ」とは、たとえば腕を組む、足を閉じる、うつむき加減に座る……など、とにかく体を守るように縮こまるもの。「力のないポーズ」をすると、自信がなくなり、細かく考えてしまう傾向がみられ、それに従ってストレス・ホルモンが高くなっていく。

「力のポーズ」を2分間とって、ギャンブルを勧めてみると88%が賭けに出たのに対し、「力のないポーズ」をした人は60%にとどまっている。採取した唾液からも、支配性ホルモンのテストロンが前者は20%増加し、後者は10%減少という結果になった。

ここから、ボディランゲージは人に与える自分の印象を左右するだけでなく、私たち自身がどう考え、どう感じるかを制御するためにも有効に働くことがわかるだろう。では、具体的にボディランゲージをどのように活用すればいいのだろうか。 

■「伝える」前のたった2分でできること

たとえば面接の待ち時間やプレゼンの前など、緊張する出来事の前に考え事をするならば、足を組んで椅子に座り、ツメを噛む……などのしぐさは避けたほうがいい。これだけで、脳内のストレス・ホルモンのレベルが高まり、自ら自信のレベルを下げることになる。

先述した2例も含め、どんな形でもいいから、2分間体を大きく開いたり、伸びたりするだけで気持ちが上向き、脳内には自信のホルモンがみなぎってくる。たとえば人を訪ねる前に、トイレにでも入って大きく伸びをする、待っている間に仁王立ちをしてみる……など、実際にクライアントの前でとりにくいポーズは、あらかじめ自分だけで実行しておこう。そして人に向かったあとも、できるだけ体を開き、少し身を乗り出すくらいが効果的である。最後にカディ氏はこうまとめていた。

「身体は心を変え、心は振る舞いを変える。
振る舞いは、私たちの人生の成果を変える。
実力が足りないときには、自信があるフリをする。
そうするうちに、本当にそうなる――」

身体を開いて人に対面し、自信があるフリをするうちに、本当に自信がついて成果につながり、成果がまた自信をもたらせてくれることだろう。

さて、今日人と会う前にほんの2分間「力のポーズ」をためしてみてはいかがだろう。こうして体を開くポーズをとることは、「技術不要の人生術」だそうだから。

[参考資料]
* PLOS ONE, Embodied Emotion Modulates Neural Signature of Performance Monitoring Daniel Wiswede,Thomas F. Münte, Ulrike M. Krämer, Jascha Rüsseler
http://www.plosone.org/article/info:doi/10.1371/journal.pone.0005754

(上野陽子=文)