『しわ』でメガホンを取ったイグナシオ・フェレーラス監督

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 今年4月、三鷹の森ジブリ美術館が認知症を題材とした映画『しわ』を配給することが発表され大きな話題となった。「三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー」として、高畑勲監督、宮崎駿監督がおすすめする作品を中心に、世界の優れたアニメーションを広く紹介してきた三鷹の森ジブリ美術館だが、今回の配給はどのようにして決まったのか? メガホンを取ったイグナシオ・フェレーラス監督が明かした。


 スペインコミック賞を受賞したパコ・ロカのコミックを原作とした『しわ』は、同じく「老い」をテーマとしたフェレーラス監督の短編作品『How to Cope with Death』(2002)が、プロデューサーであるマヌエル・クリストバルの目に留まり、製作が決まった。本来子ども向けであるはずのアニメーションで認知症という題材を扱うことに抵抗がなかったのには、フェレーラス監督が「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」といった高畑監督の作品を観て育ってきたことが大いに影響しているという。


 「『しわ』は、多くの高畑監督の作品と同じく、人物の心情を追った作品です。アニメーション映画だけでなく、黒澤明監督や是枝裕和監督の実写映画も好きなのですが、わたしが好きなのはそういった主人公の人生を描いた作品。わたしにとってはアクション満載の作品を制作する方が難題かもしれません」とフェレーラス監督は語る。今回、三鷹の森ジブリ美術館による配給が決まったのも、クリストバルとフェレーラス監督が高畑監督に観てもらうためだけの日本語字幕版を制作し高畑監督に贈ったことがきっかけとなっている。


 『How to Cope with Death』でアヌシー国際アニメーション映画祭短編映画部門初監督賞、アニメーターとして参加した『イリュージョニスト』でアカデミー賞長編アニメ賞ノミネート、『しわ』でもスペインのアカデミー賞といわれるゴヤ賞で最優秀アニメーション映画賞、最優秀脚本賞を受賞するなど、輝かしいキャリアを重ねてきたフェレーラス監督だが、「わたしのキャリアで最高の成果は、『しわ』がジブリで配給され日本で公開されると決まったこと」だと言う。


 フェレーラス監督の日本映画への思い入れは、映画にも表れており、「オマージュをささげたわけではないのですが、後で映画を観て、雲をつかもうと塔に登るある夫婦の回想シーンで、『天空の城ラピュタ』を思い起こしました」と気付かないところで影響を受けていたことを明かしている。認知症という題材を扱い、老後について考えるきっかけを与えてくれる作品でありながら、そうしたドラマチックなシーンの数々で、温かい感情を呼び起こしてくれる本作。高畑監督も「『しわ』という作品で、アニメーション映画の持つ可能性がまたひとつ広がった、とわたしは思っています」と絶賛のコメントを寄せている。(取材・文:編集部 島村幸恵)


映画『しわ』は6月22日より新宿バルト9ほかにて全国順次公開