新年になっても、依然情勢は不安定で将来への不安は多い。そんな中、この1年をどう過ごすべきか。今の自分の価値がどこにあるのかを自覚するだけでも10年後は大きく違ってくるはずだ。

会社に所属して会社のために働き、対価として給料を受け取る「サラリーマン」という働き方は、どの国にも存在する“グローバルスタンダード”のように見える。だが日本のサラリーマンは、実はかなり特殊だ。

外国人に「あなたの仕事は?」と聞くと「会計をしている」と専門分野を述べ、「どこでその仕事をしているのか?」と聞いて初めて会社名を答える。自分のプロフェッション(専門分野)がまずあって、会社はプロフェッションを活かす場所なのだ。

日本のサラリーマンはプロフェッショナル(専門家)ではなく、それぞれの会社に最適化されたジェネラリスト(総合職)で、その技能や経験は会社を離れるとなんの価値もなくなる。そんな働き方が成立していたのは、年功序列と終身雇用が前提にあったからだ。

しかし今、日本的な雇用制度は崩壊しつつあり、いずれは「サラリーマン」という職業も存在しなくなるだろう。そんな目の前の未来に備えて、13年は、「サラリーマンという生き方」を見直す年にしたい。

あまり知られていないが、グローバル化に最適化した社会システムを構築しているのは、アメリカではなく北欧だ。たとえばスウェーデンでは、40歳になって「自分のキャリアはもう先がない」と判断したら、会社を辞めて大学に再入学し、修士や博士を取得して専門性を高めて再就職する。国も後押しするために、大学の学費を無料にしたり、就学中は低利の融資で生活費が賄えるようにしている。

もちろん、スウェーデンの社会がなにもかもうまくいっているわけではない。ドロップアウトしていく若者たちが問題になっているし、形式的には男女は完全に平等だが、実態は女性の仕事の大半を医療や介護のような公共部門が提供している。

それでもスウェーデン社会はきわめて効率的で、労働者1人あたりの生産性は日本と比べて3割も高い。各種の意識調査で「世界一幸福な国」とされたデンマークも、ワークライフバランスで世界の模範となっているオランダも、ほぼ同じ社会システムを採用している。

グローバルな世界では、商品価格や労働賃金だけでなく、働き方もひとつに収斂していく。だとしたら、耐用年数の切れた日本的雇用制度も、オランダやスウェーデンのようなグローバル化したキャリアシステムに変わっていかざるをえないだろう。

もっとも現時点では、日本には本格的なキャリアの再設計制度はなく、40代以上なら、スペシャリストとしてスキルを磨くよりも、なんとか定年まで逃げ切るための努力のほうが合理的かもしれない。しかし大手、一流とされるところでも業績の悪化で逃げ切りが難しくなっている現状では、これは“ハイリスク・ハイリターン(もしかしたらローリターン)”の戦略であることを知っておくべきだ。

大事なのは、「自分の人的資本はどこにあるのか」を再確認することだ。万が一リストラ対象になったとき、どうやってお金を稼ぐのか。人間は、基本的には「好きなこと」にしか本気になれない。だったら、好きなことを探すしかない。

■世界は共働きが当たり前である

家庭のあり方も大きく変わろうとしている。日本には夫はサラリーマン、妻は専業主婦という形態が残っているが、グローバルな世界では共働きが当たり前。米国でも60年代は専業主婦が普通だったが、70年代以降は女性の社会進出が進み、今は大富豪の夫人ですら働いている。仕事を持つことが社会から認められることだからだ。

東大を頂点とする学歴社会も、グローバルな世界ではまったく通用しない。今や欧米の官庁や企業でキャリアと呼ばれる人たちは、当然の前提として、一流大学で各分野の博士号を取得している。ところが日本のキャリアは、せいぜい東大法学部卒。グローバルな政策決定の場では経済学博士の中に法学部卒の学士が混じっても相手にされない。

教育もまた、日本的なガラパゴス化の典型だ。子供に高い能力があるのなら、早い時期から留学させて、欧米の一流大学を目指すことを考えてもいい。

日本では、夫が「会社」コミュニティー、妻は「ママ友」コミュニティーに属し、異なる世界を生きている。そのため男性は退職、女性は子供が思春期を過ぎると、人間関係が途切れてしまう。これではいずれ“無縁生活”になってしまうので、人脈の幅を広げる努力をすべきだろう。一般論で語るのは難しいが、「自分は何によって生きていくのか」を考えたとき、幅広い人脈こそが宝物であることがわかるはずだ。

日本の財政赤字は1000兆円に膨らみ、さらに、安倍政権は景気回復のため大規模な金融緩和や公共事業投資を行うと宣言している。永遠に国債を刷り続けられるわけはなく、このままではいずれ破綻する。

一部にはこれを煽って日本円が紙屑になると主張する人もいるが、金融知識のない人がそれを鵜呑みにして投資に走るとおかしな商品をつかまされるだけなので、当面は普通預金で十分だろう。ギリシャを見ればわかるように、国家破産とは「目が覚めたら通貨が紙屑になっていた」ということではない。国債価格の下落で金利が上昇し、地価の下落や企業の倒産で金融危機が起こり、資産の大半を国債で持っているゆうちょ銀行やかんぽ生命が破綻して国有化されるというプロセスを踏んで状況が悪化していく。どれほど財政赤字が巨額でも、日本のような経済大国が1カ月や2カ月の短期間に破産することはありえないのだから、「破産を前提に円資産をすべて外貨に換えよう」という行動は意味がない。

今、身につけておきたいことは手段の確認。円が暴落したときに、あわてて銀行の窓口に並ぶようでは手遅れ。そんなときにFX(外国為替証拠金取引)口座があれば、クリック1つで円資産を外貨にできる。レバレッジを1倍にしておけば、リスクは銀行の外貨預金と同じだ。

住宅ローンは史上最低金利ということもあり、変動金利型を利用している人が多いはずだ。今は1%以下で借りることができるので返済に余裕があっても、将来、4%、5%と上昇していったときに返済額がどれくらいになるのか試算しておく必要がある。固定金利型に借り換えることも検討すべきだろう。

最後に強調しておきたいことは、国家の財政破綻は、戦争や内乱のような国家権力の暴走と異なり、個人でリスク管理が可能だということだ。ギリシャなどでは確かに厳しい状況が続いているが、シリアのように多数の市民が犠牲になっているわけではない。いざというときに対応できる基本的な経済・金融知識があれば、投資の初心者でも資産を守ることは可能なはずだ。

そのためにも、家計に影響がない程度の金額で、投資を体験してみるといい。損をしてショックを受けるかもしれないが、いずれ安い授業料だと思えるようになるだろう。

■橘玲さんの「2013年やるべきこと」リスト

1.仕事を考える

□サラリーマンという生き方を見直してみる
□好きなことをする
□自分の人的資本はどこにあるのか、何で稼げるのか自覚する

2.家庭を守る

□専業主婦の妻を働かせることを考える
□子供を留学させることを考える
□会社以外のコミュニティーに属してみる

3.資産を見直す

□いざというときのために経済、金融知識を身につけておく
□住宅ローンの金利が上がったときを想定する
□少額投資で「損すること」を経験しておく

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作家 橘玲
1959年生まれの経済小説家。2002年『マネーロンダリング』でデビュー。その後も『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』など、海外投資など幅広い金融知識を生かした著書を多数発表。最新刊は『不愉快なことには理由がある』。

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(作家 橘玲 構成=金融系ライター 山本信幸)