toitukyu-20130613

統一球の問題発生以来、他の野球の記事を書く気になれない。まさにNPBへの“不信感”が、キーボードを叩く気力を萎えさせている。とはいえ、野球界は動いている。昼には新しい別件の記事を出していきたい。

今回、私たちに不信感を抱かせているのは、NPBの「隠ぺい」という行為だった。また、昨夜の「潔くない」記者会見は、コミッショナーへの不信感を決定的にさせた。

しかし、彼らがそこまでしてまで「隠ぺい」したいと思わせるような「事実」があったということにも注目すべきである。

それは、彼らの言を信じるなら、公認球に
「既定の反発係数を下回る不正な球が混じった」という事実だったとされる。

硬球は0.41から0.44の反発係数であれば合格となり、公認マークが付けられる。
2010年まで、プロ野球の公認球は4社で作られていた。それらはすべて、規定の反発係数の範囲に収まってはいたが、WBCなど国際試合での使用球に比べ「飛びすぎる」という声が上がり、2011年からミズノ一社に統一されることになった。

これが「統一球」。加藤コミッショナーの意向だったとされ、1球1球に「加藤良三」という署名が入ることになった。
統一球は既定の反発係数の下限あたりに収まるように作られ、従来より約1m「飛ばない」球になったとされていた。

しかしシーズンが始まってみると本塁打数は激減、日本のプロ野球は大きく変貌した。

NPBの説明によれば2012年になって統一球の反発係数を測り直してみたところ、規定の数値を下回るものが混じっていたことが分かった。
そこでNPBはミズノと相談して、反発係数を下回らないようボールの構造を微調整して、新しい「統一球」をひそかに製造し、今季の開幕から「すり替えて」いたというのだ。

規定の反発係数を下回るボールがいつから混じっていたのかはわからない。しかしミズノは2011年、12年と製造方法を変更せずに作っていたのだから、「不正球」は、統一球の導入当初から混在していたとみるのが普通だろう。

2010年、規定打席に達していた打者が、2011年、どのように変化したかを見てみよう。
打撃の積み上げ型の総合指標であるRCとその1試合当たりの数値であるRC27の変化で比較する。

toitukyu-20130613-2

RCの低下には、故障や競合選手の移籍による出場機会の減少など、いろいろな要因がある。単なる打撃不振だけではない。
しかし、これだけ多くの選手が大きく数値を落としている原因は、統一球以外に考えられない。
打撃スタイルが固まっている30代以上のベテランが大きく数値を落としていることが分かる。

過去にも使用球が変更されたことで、選手が成績を下落させたケースは何度かあった。
終戦後、NPBはよく飛ぶラビットボールを導入したが、2リーグ分立後にこれを飛ばないボールに変更した。このときも打者は大きく数値を落とした。
数字の乱高下は、プロ野球にはつきものではある。

しかし、それが規定の反発係数を下回る「不正球」も含めた公認球よるものだったと知らされれば、選手たちはやりきれない思いにとらわれるのではないか。

小笠原道大や、森野将彦など、2011年から数字を急激に落としている選手は、選手生命、ひいては自分たちの人生設計が大きく狂ったはずだ。「どうしてくれる」と言いたくなるのではないか。

今季、小笠原が久々に快打を連発しているのを見ると、打者の多くは「統一球」の被害者だったのだと言う印象を強くする。