この6月から住宅ローンの金利が上がる。特に、主力商品である10年固定型の金利は、メガバンクで、5月の1.4%から1.6%へ0.2%引き上げられる。数字上はわずかな引き上げ幅だが、借入金額3000万円で返済期間30年の住宅ローンを組むとすると、毎月の返済額は3000円弱増える見込み。年間だと3万円ちょっとの返済増となる。

 先月初めの当コラムで、日銀の金融緩和にもかかわらず、長期金利は上昇傾向に入ったため「住宅ローンは10年以上の固定型を選ぶべし」と書いた。基本的な考え方は変わらないが、長期金利の上昇ピッチが予想よりも早いため、少し補足が必要かもしれない。それが「年内に住宅ローンを借りるなら、変動金利も選択肢に入る可能性がある」である。

 ここ数か月、期間10年以上の固定金利型の住宅ローンは上昇してきた。だが、変動金利型は据え置きとなっており、メガバンクでは1.075%が続いている。期間が長めのローン金利は、金融市場の長期金利に連動するが、変動金利は、短期金利の指標のひとつである『新短期プライムレート』に連動させているからだ(※すべての銀行ではない。例えばソニー銀行などは独自に定めている)。

 この「長期金利は上昇傾向で、短期金利は横ばい」という状況は当面続く見通し。長期金利は、円安・株高が続けば、上昇圧力が加わる。また、非常に連動性が高い、米国の金利が上昇してきていることも大きい。米国の10年物金利は2%を突破し、定着しつつある。米国金利の上昇が続けば、連動する形で上昇していくだろう。

■現状維持が続く短期金利

 一方、短期金利は現状維持が続く。短期金利は日本銀行がコントロールできるため、金融緩和を止めて、誘導目標としている短期金利(この場合は「無担保コール翌日物」という金利。これを引き上げると新短期プライムレートも上がることになる)を引き上げない限り、変化はないといえる。

 現在、日銀は、2015年度中に物価上昇率を前年比2%にすることを目標として、異次元の金融緩和を行なっている真っ最中だ。この上昇率2%については、実現不可能とみる専門家が多い。そんな状況で、2015年度中に金融緩和を止めて短期金利を引き上げるということは考えにくい。おそらく2016年以降も継続されるだろう。となると、少なくとも今後2年程度、短期金利は変わらず、変動型の住宅ローン金利も変わらない可能性が高い。

 ただし、どこまで短期金利が据え置かれるかは予想できない。物価上昇率の目標が達成できなくても、デフレ脱却にメドがたち、長期金利、為替相場が落ち着いていれば、金融緩和は継続されるだろう。しかし、インフレが心配になるほど景気が回復した場合は、日銀は利上げをするかもしれない。その場合でも、利上げの幅は0.1%とか0.25%とか、小刻みに止まるのではないか(最悪のケースは、デフレからは抜け出せず景気も回復しない、さらに金利が上昇するというスタグフレーションとなり、日本国債の暴落が現実味を帯びる状況。こうなると、大幅な引き上げがありえる)。つまり、メインシナリオとしては、変動型の住宅ローン金利は、2〜3年間はほぼ変わらず、その後は少しずつ上がっていく、という展開になりそうだ。

 そこで、変動金利型と固定型の比較である。足下では長期金利は上下の動きが激しくなっており、年内に、10年物金利が1%台に突入し、10年固定型の住宅ローン金利が2%になる可能性は否定できない。となると、変動金利型とのスプレッド(金利の差)は、ほぼ1%になる。この差は大きい。単純計算で、3000万円を借りたときの初年度の利息の差は30万円になる。毎月の支払額が同じでも、元本の支払い分で大きな差が出てくるだろう。

■変動金利型のリスクは一般的に言われているより低い

 こうした条件を前提にすると、年内に住宅ローンを借りる人にとっては、2%台の10年固定型よりも、変動金利型の方がお得になるかもしれない。返済期間が比較的短い25年とか、頭金を多めに用意できる人なら、検討する余地はさらに広がる(来年以降は、金融緩和が継続される期間が、じょじょに短くなることが予想されるため、変動金利型は選びにくくなるかもしれない。それでも、長期金利がそれ以上に上昇すれば話は変わる)。

 変動金利型のリスクは一般的に言われているよりも、低いと考えられる。日本の政策金利はゼロ金利で、G7の中では最も低いが、現在G7で最も高いのはカナダの1.0%である。イタリアやフランスといった国は0.5%だ(EUの政策金利)。アベノミクスがある程度成功しても、日本の政策金利が1%を大きく超えて、すぐに2%になると考えるのは非現実的。となれば、短期金利、ひいては、変動金利型の金利の天井も低いだろう。日銀が政策金利の引き上げを匂わすだけで、大きな円高材料となることは必至で、引き上げには相当の時間を要するに違いない。

 最後に注意を。いま、2年固定型、3年固定型といった短期固定型の住宅ローンで、変動金利よりも低い金利を提示している銀行が増えている。一見、かなりお得に見えるが、固定期間が終わった後の優遇金利幅が変動金利よりも狭いため、実は、お得にならないものがほとんど。商品性が中途半端でおススメできない。

(文/松岡賢治)

マネーライター、ファイナンシャルプランナー/シンクタンク、証券会社のリサーチ部門(債券)を経て、96年に独立。最新刊に『人生を楽しむマネー術』(共編著)。