『二流小説家 シリアリスト』で死刑囚役を演じた武田真治

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武田真治がカリスマ性にあふれた死刑囚役で、エッジの効いた演技を魅せる。その映画とは、『二流小説家 シリアリスト』(6月15日公開)。日本の海外ミステリーのランキングで史上初の三冠に輝いた、デイヴィッド・ゴードンのミステリー小説の映画化作品だ。本作では、主人公の二流小説家・赤羽一兵役の上川隆也と、武田との演技合戦が見ものだ。武田にインタビューし、難役への挑み方から、上川との二人芝居について話を聞いた。

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赤羽は、連続猟奇殺人事件を犯した死刑囚の呉井大悟から、告白本の執筆依頼を受ける。一流の小説家になれるチャンスだと目論んだ赤羽は、その仕事を引き受ける。その後、彼は呉井の熱狂的なファンである女性3人の取材を行うが、3人は12年前の呉井の犯行と同じ手口で、次々と殺されていくのだった。

呉井というサイコキラーを演じるに当たり、武田は『羊たちの沈黙』(90)のレクター博士を思い浮かべたが、作品を見直したりはしなかった。一番、インスピレーションを与えてくれたのは、猪崎宣昭監督の演出である。「監督からは、何かで見たことがあるようなキャラクターにしたくないし、猟奇殺人犯を自分たちのもの差しではかるのは止めようと、最初に言われました。僕は役者って、自分たちのもの差しや経験を落とし込むからこそ、役をつかみとっていけると思っていたので、どこから手をつけようかと思いましたが、逆にそのことが自分を駆り立ててくれました」。

猪崎監督の話からは大いにヒントを得たという。「監督のリサーチによると、死刑囚は死を持って刑をつぐなうので、独房ではお務めがないそうなんです。実際に猟奇殺人者の元へは、日に20、30通ほどのファンレターが来る場合もあるし、信者と呼ばれる人もいるようです。洋服の差し入れも、パーカだとヒモを取られたりするらしいけど、好きなものを着て良いみたいです」。

確かに、赤羽が初対面した時の呉井は、紫色のセーターを着用している。「あのシーンでは、何が何でも絶対に紫のセーターだと猪崎監督が決めていました。でも、『また、派手な服の差し入れが来たぞ』とか、説明しないのが監督のスタイルです。僕がそれを着ることは、監督の演出の一つの点ですが、今回は、点と点が線になるかどうかも考えず、そのままやってみようと思いました」。

武田と上川は、本作で初共演となったが、面会室での二人芝居的なやりとりは、本作の見どころでもある。「上川さんとふたりで『台本以上のことをしたい。ミステリーとしての緩急をもっと掘り下げたい』と言いながら、お互いに協力し合っていきました。上川さんの方が年上なので、僕に合わせていただいていたのかもしれませんが」。

特に、赤羽と呉井が会う最後のシーンが印象深く残っているという。「ふたりとも格好良いとか格好悪いとかじゃないところで、むき出しにならなければと思って演じました。それは、これまでいろんなシーンを作り上げてきた僕と上川さんとの関係もあり、役者としてマックスで行きたいという思いをお互いに感じたと思います」。

最後に、本作の見どころについて聞いた。「赤羽一兵のboy to manのストーリーというか、うだつの上がらない人生からベストセラー作家になるまでの成長物語であり、呉井がいかにして生き、いかにして人生を終えたかという物語でもある。人生が描かれたミステリーなので、犯行のトリックがわかったからといって、スカッとは終わらない。後味が苦目のミステリーなので、大人のお客さんに見ていただきたいです」。

舞台で実力を培ったふたりだからこそ、長回しの二人芝居も何のその!武田の語るとおり、マックスな能力を引き出し合ったラストは名シーンとなった。最後まで予断を許さないミステリーの本作、是非謎解きにトライしてほしい。【取材・文/山崎伸子】