黒澤明作品のほか、成瀬巳喜男、溝口健二作品のファンというデビッド・ゴードン氏

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海外の傑作ミステリーを、舞台を日本に置き換えて映画化した「二流小説家 シリアリスト」の公開を間近に控え、原作者デビッド・ゴードン氏が来日。映画への期待や日本への思いを語った。

ゴードン氏による処女小説「二流小説家」は、ミステリー&サスペンス小説の賞として最も歴史と権威を誇る「アメリカ探偵作家クラブ最優秀新人賞」のノミネート作。日本では「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい!」という主要ミステリーランキングの海外部門で1位を獲得し、史上初の3冠を達成した。過去のランキング上位に「羊たちの沈黙」「ダ・ヴィンチ・コード」「ミレニアム」などの映画化された傑作が名を連ねているのを見れば、この3冠作のハリウッドを差し置いての映画化は快挙といえる。

ゴードン氏は、「最初に日本での3冠達成を聞いたときは、とにかく驚いた。世界中で読んでもらえるのは嬉しいけど、これまで他国で版権が売れた後は、特に音沙汰がなかったからね。出版社を通じて、自分の写真と『No.1』という部分だけが分かる日本語の記事を手にした時は不思議な気分だったよ」と振り返る。

話は受賞だけで終わらず、日本での映画化までが決まったが、「実は僕は小さい頃から日本のサムライ映画が大好きで『七人の侍』や『用心棒』『座頭市』を見て育ったんだ」と明かす。「少ししたら成瀬巳喜男、溝口健二の映画も見るようになったし、谷崎潤一郎や川端康成の文学にも夢中だった。パリで目にした浮世絵に魅せられて『アメリカン・ウキヨエ・ソサエティ』というクラブにも入ったりもしたよ。だから、敬意を持って遠くから眺めていた人が急に近くに来てくれたような気持ちだった」と喜びを語る。

小説の舞台は米ニューヨークのクイーンズで、ゴードン氏自身の生まれ故郷である。それが突如、東京に置き換えられ、見たこともない異国の俳優が演じることになった。果たして抵抗はなかったのか。ゴードン氏は「クイーンズの雰囲気は東京に似ているだろう?」とイタズラっぽい笑みを浮かべ、「映画化に際して、こちらから出した条件は何もなかった」と明かす。「フィルムメーカーは自分たちの映画を作るべきだし、たとえニューヨークで撮影が行われようと小説と映画は別物だと思っているよ。僕自身がミステリー映画のファンだから、自分が劇場で見たくなるような映画になることを望んで日本の映画関係者に託したんだ」。

映画で上川隆也が演じる主人公の作家・赤羽(原作ではハリー・ブロック)はポルノ小説やバンパイア小説を手がけており、まさにゴードン氏自身を投影した存在。一方で、彼が対じする死刑囚の呉井(原作ではダリアン・クレイ。演じるのは武田真治)もまた「かなり自分を投影した存在。彼が口にする文学論や哲学も、僕自身が考えていることだよ。単純な善悪で主人公と死刑囚を対決させるという構図じゃなくて、対等な関係としてどちらにも自分を反映させたんだ」と明かす。ひとりの人間の光と影が、それぞれ投影されたふたりの人物として赤羽と呉井の対決を見ると、さらに深く映画を楽しめそうだ。

最後に「もし今度はハリウッドで映画化されるとしたら、希望のキャストは?」と尋ねると、しばし考えた後「ハリーにはロバート・ダウニー・Jr.かな? 『アイアンマン』以前のね(笑)」という答えが返ってきた。

「二流小説家 シリアリスト」は、6月15日から全国公開。

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