年間来場者数は東京ディズニーリゾートの2倍! イオンレイクタウンの「最強空間」にはさまざまなノウハウが詰め込まれている

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埼玉のそれまで何もなかった広大な土地に、オープン以来、東京ディズニーランド&ディズニーシーの2倍の人を集めている施設がある。イオンレイクタウンだ。

年間来場者数は実に5000万人。東京ドームの約7個分の敷地に3つの建物があり、計710店舗、1万400台の駐車場を擁する国内最大のショッピングモールだ。

しかし、2008年のグランドオープン当初、「年間来場者2500万人というイオンの計画は絵空事だ」と予測する業界関係者もいた。当時の事情を流通ジャーナリストの西川立一(りゅういち)氏はこう話す。

「イオンの業績が悪化していたこともあり、計画段階から『約800億円の巨額投資に見合う成果が出るのか』『商圏に対し施設が巨大すぎる』という声があった。それがフタを開けてみれば、日本一の大きさこそ最大の成功要因になった。あそこに行けば何かある、一日過ごせる。そう思わせたエンターテインメント性が勝因でしょう」

この施設を、ディベロッパーであるイオンとともに企画したのが株式会社船場だ。同社開発事業本部の鈴木裕之氏、深井幹夫氏によると、例えばモール(通路)にも、リピーターを増やすための設計術があるという。

「専門店街のモールにはお客さまが気づかない程度の微妙なカーブがあります。遠くまで見通せる真っすぐの道は、気分的に疲れるんですね。『そこまでこんなに歩くのか……』と感じるより『いろんな店を見ているうちに歩いていた』となったほうが楽しいですから」(鈴木氏)

通路を微妙に曲げてあえて視界を狭くし、「向こうには何があるの?」と常に期待感をもたせ、「気がつくとたくさん歩いている」構造となっているのだ。

「また、1店舗ごとに間口は狭く、奥行きを深く設計します。視界にさまざまな顔の店が5店舗、6店舗と入ってくるので、お客さまも飽きません」(深井氏)

日本一のスケールということで、多くの人に一度は来てもらえるはず。しかし、「また来たい」と思わせないといけない。そのための工夫もいろいろある。

「例えば、駐車場は入り口よりも出口が多いんです。帰るときに出口渋滞になると、来店時の渋滞よりストレスになるんです。どんなに楽しく一日を過ごせても、後味が悪いとイヤな印象が残ってしまいますからね」(鈴木氏)

規模の追求と、蓄積されたノウハウの惜しみない投入。まさにイオンレイクタウンは、日本のショッピングセンターが生んだ集大成といえる。

(取材・文/佐口賢作&本誌編集部)

■週刊プレイボーイ25号「イオンモールを研究すれば未来の暮らしが見えてくる!」より