堀江貴文氏は2000年に本誌インタビューに登場して「ビジネスの夢」を熱く語っていた。今回のインタビュー冒頭、その時の写真を見せると、同氏は「ずいぶん太ってるなあ」と笑った。しかし、容貌に変化はあっても、その間に世の中の雰囲気が変わっても、「自分のやりたいことをやる」という「ホリエモン流」は健在だった。

──改めてライブドア事件を振り返ってみると、あれを境に日本人の「仕事観」「金銭哲学」が大きく変わったように思える。あなたの成功を見て「俺もやってやる」と奮い立った若者やビジネスマンは少なくなかったが、その後のあなたの境遇やリーマン・ショックを経て、「やっぱり日本ではベンチャーは危険だ。危ない橋を渡るよりおとなしく、慎ましく生きるほうがいい」という空気が広まった。そういう意味で事件を口惜しく思うことはないか。

堀江:どうでしょうね。もともと人それぞれのような気はします。今もベンチャーはたくさんあるし、新しいビジネスは生まれていますよ。むしろ仕事をする環境はずっと良くなっていて、パソコン一つでどこにいても仕事できるようになりました。

 僕もいろんなことをやっていますが、オフィスもありませんよ。テレビ会議だって簡単にできますしね。今やろうと考えていることの一つに、いろんな分野の人たちにオンラインで対談してもらうサイトがあります。離れた場所にいてもパソコン一つあればリアルタイムにそういうことはできますし、そこに聞きたい人が自由に入ってこられる仕組みも簡単にできる。やりたいことがあれば、それを叶えるツールはどんどん進化していますよ。

──ビジネス環境はそうかもしれないが、人々の気持ちはへこんでいる。逆にビジネス環境が整うことで、あらゆる産業が簡単にグローバル化され、安泰だった企業、安泰だった職が不安定になった。そのなかで日本人が今のような仕事や生活を維持していくことに不安を抱いている。

堀江:もうその「維持していく」という考え方がネガティブ過ぎますよね。仕事であれプライベートであれ、基本は「自分が楽しいと思うことをやる」ことでしょう。「維持したい」という気持ちがあるなら、一体自分が何を守っているのか立ち止まって考えてみる必要がありますね。

──おそらく収入とか、生活とか、社会的地位とか。

堀江:もっと突き抜ければいいのに。多くの人にはもっと大きなポテンシャルがあるのに、それを活かすように動こうとしていない。もったいないですよ。

 先日、NHKのアナウンサーを辞めてフリージャーナリストになった堀潤さんと話す機会がありました。彼自身とても面白い人だし、彼に聞いても自分の先輩や知り合いを見ても、NHKにはそういうポテンシャルを持った人たちがたくさんいます。でも、それを100%発揮している人はまずいない。一つには、個人がそれを発揮しようとすると組織や社会が潰すということもあるでしょう。それが組織、社会の基本的な機能になっている面もありますね。

──個人のポテンシャルを最大限に活かすことは組織のためにもなるのに、なぜそれを潰してしまうのか。

堀江:よく言われることですが、妬みの構造があるのかもしれません。それは本当に意味のない感情だし、僕は昔から妬みというものがまるでないので、なぜそういう気持ちに囚われてしまうのかわかりませんね。

──人の成功を見て「うらやましい」「自分もああなりたい」と思うことはビジネスのモチベーションにもなるのではないか。

堀江:「うらやましい」ならいいんですよ。僕だってそう思うことはあります。でも、それがなぜ他人の足を引っ張るとか、人の頭を押さえる行動につながるのか。そこがよくわからないけれど大きな問題だと思いますね。

──あなたも大成功して妬まれたのではないか。ひとつの潮目となったのは、「世の中に金で買えないものなんて、あるわけがない」という有名な“ホリエモン語録”だった。「そういう奴は応援できない」という空気が世の中に広がってしまった。

堀江:違うんですよ、あれは。僕は一言もあんなことは言ってない。あのフレーズは朝日新聞が付けたタイトルですからね。取材した記者がそうしたかっただけ。読者を反発させたかったんでしょうね。

※SAPIO2013年7月号