金融街のある香港島を走るトラム。1904年開通の歴史ある交通機関だ。2階建て車両は世界でも珍しく、香港の他には英国・ブラックプール市とエジプト・アレキサンドリア市だけとか。(Photo:©木村昭二)

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時代の変化はこの世界を、ますます近く、便利に、開かれたものにしている。一方で、見られたくないもの、秘密にしておきたいものを隠しておける場所は、どんどん少なくなっている。世界の大富豪たちが徴税を逃れ、こっそり資産を預けておけるプライベートバンクやタックスヘイブンもその一つ。スイスもルクセンブルクもケイマン諸島も、米国やEU当局からの求めに応じて口座情報を開示するようになる。そして遂にシンガポールも方針転換。最後に残るは香港か、それとも…。

スイスの銀行の秘匿性は揺らぎ
タックスヘイブンも脱税天国にあらず


 ゴルゴ13ことデューク東郷の報酬の振り込み先が「スイス銀行の口座※」であったように、昔から「ヤバイお金はスイスに預ける」は定番でした。スイスは1815年以来の永世中立国なので、銀行は強国の圧力に屈せず、顧客の秘匿はとことん守り抜く――というのがスイスの売りで、世界の王族や大富豪に信頼されてきました。

※現実には「スイス銀行」なる銀行は存在しません。映画や漫画の世界で使われるのは「スイスのプライベートバンク」を指すと思われます。
 

 しかし、スイスも国際社会の一員である以上、犯罪の片棒を担ぐわけはいきません。マルコス元大統領の隠し財産をフィリピンに返還して以降、独裁者や失脚した国家指導者の不正蓄財については口座凍結や返還に応じるなどしてきました。特にアメリカ同時多発テロ以降、世界(というか米国)がマネーロンダリングを厳しく取り締まる中にあって、「何が何でも顧客情報は明かさない国」ではなくなっています。

 スイスばかりではありません。スイスと並ぶプライベートバンクの本場、ルクセンブルクも2015年までに個人の銀行情報の守秘制度を解除するとされていますし、ケイマン諸島を皮切りにアンギラ、バミューダ、英領バージン諸島(BVI)、モントセラト、タークス・カイコスなどのいわゆる「タックスヘイブン」も、欧米諸国の求めに応じて(圧力に屈して?)租税情報の交換や情報開示に応じる協定に合意しています。

 つまるところ、マネーは世界を瞬時にボーダレスに駆け巡るようになり、世界の金融の中心である米国に「情報開示に応じなければ米国内の口座を凍結し・送金停止措置を講ずる」と言われれば、従わざるを得ないのです。

シンガポールも取り締まり強化!
残るオフショアは香港しかない?

 そうした中にあって世界のワケあり資金は世界第4位のオフショアセンターであるシンガポールへ集結していたのですが、ついに2013年6月5日、シンガポールも取り締りを強化。「マネーロンダリングや脱税の疑いのある口座は銀行が確認しなければならない」として、健全化に大きく舵を切りました。

 となると、残るオフショアセンターは香港しかありません。さっそくBVIがアジア太平洋地域の本部を香港に設けることを決めたようで、香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙は「世界の脱税資金が香港に集まってくる」と報じています。

 香港も、例えばHSBC(香港上海銀行)がマネーロンダリング防止策を怠ったとして米国司法省などに約19億ドルの罰金を払わされるなどしているのですが、銀行自らが調査・報告するシンガポールよりはましということで、まだ逃げ込む余地があるのでしょう。

 中国としても表立っては国際社会に協力する姿勢は示しながらも、さまざまな事情からグレーな部分は残しておきたいわけで、今後は米国と中国の「せめぎ合い」になるのだと思われます。

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