久々に盛り上がりを見せた大相撲夏場所は、終わってみれば横綱、白鵬(28)の強さばかりが際立った結果となった。

 突然に目覚めた大関、稀勢の里(26)との競り合いが激しかっただけに、優勝した白鵬の喜びようもひとしお。左からのすくい投げで14日目の全勝対決を制した直後、「まだまだ1枚も2枚も(自分が)上だな、という気がします」と自画自賛し、負けた稀勢の里に対し「精神的、肉体的に成長した。来場所もつなげていけばいい」と、エールを送る余裕も見せた。
 一方の稀勢の里はこのショックを断ち切れなかったのか、翌千秋楽も琴奨菊に完敗。この手の平を返したような失速に、大きく肩を落としたのは協会首脳だ。

 このところ相撲人気は右肩上がり。ようやく八百長問題などの後遺症を克服し、文字通り満員札止めの大入りを6回も記録した。この待ちに待った上昇ムードを、大相撲ファン期待の日本人力士、稀勢の里の初優勝、綱取り王手で不動のものにしたいところだったが、見事につぶれてしまったからだ。
 「白鵬に敗れた直後はまだ1敗でしたから、北の湖理事長の表情にも余裕がありましたが、翌日、琴奨菊に連敗したときの役員室はみんな、声も出ないといった風情で、すっかりシラけていました」(担当記者)

 しかし、せっかく頭角を現した金の卵だけに、このぐらいではあきらめない。5月27日に行われた場所後の横綱審議委員会では「次の名古屋(7月7日初日・愛知県体育館)で14勝以上で優勝すれば、横綱に推薦する可能性がある」との見解が示された。
 強引に“目玉”に祭り上げられてつぶれた力士は、それこそヤマほどいる。稀勢の里もそうならなければいいのだが…。