日本通運株式会社

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日本通運株式会社

たかはし・よしかつ●東東京事業所営業課主任。2004年入社。明治大学商学部卒業。就職活動を進める中、「身近に感じられるビジネスに携わりたい」と感じ、アパレル業界に興味を持つ。その後、原料を扱う商社や、商品を運ぶ流通業界にも興味を持つようになる。現社に入社した決め手は、国内外を問わず、陸・海・空の多様な流通網を持つスケールの大きさ、美術品なども扱う事業内容の幅広さに魅力を感じたこと。自分の可能性を試せる大きなチャンスがあると感じた。

現場の最前線である運用課で仕事の全体像をつかんだ後、引っ越し案件の営業担当に

就職活動当初は、業界を絞らずにさまざまな企業を見て回ったという高橋さん。活動途中から「身近な商品やサービスに携わりたい」と考えるようになり、流通業界の道を選んだ。

 

入社後、1カ月の研修を経て配属されたのは、新砂支店(東京都江東区)の運用課。案件に合わせ、必要な作業スタッフやドライバー、トラックなどの車両を手配し、現場のメンバーとコミュニケーションを取る。まさに現場の最前線の部署だった。

「ほかの同期はみんな営業課に配属されていたので、正直、がっかりしました。お客さまという相手がいて、そこに向けて頑張る仕事だと思っていたのに、社内と連携するだけの部署。配属当初は、外に出て飛び回る同期がうらやましくてしょうがなかったです(笑)。とはいえ、この部署を最初に経験できたことで、会社全体の仕事の流れをつかむことができました。引っ越しや配送、さらには倉庫内のオペレーションにかかわる人などと接する中、ほかの課でどんな人がどんな仕事をしているのかという全体観をざっくりと把握できたと感じます」

 

最初の1カ月間は先輩社員がつきっきりで教えてくれた。また、ドライバーや作業スタッフとともに引っ越し現場を経験したことが、その後に大きく役立ったという。

「現場を知るため、作業スタッフとして5回ほど引っ越し現場に同行しました。おかげで、現場で作業するスタッフの気持ちを理解することができましたね。引っ越しの見積もり時には、営業担当がお客さまの自宅を訪問して荷物の量や移動距離を確認します。そこから、どのくらいの作業人員と時間が必要かを想定して手配しますが、いざ現場に出てみれば、予定通りに作業が終わらないことも多い。営業と現場とでは感覚にギャップがあることを実感しました。作業はキツかったけれど、この時の経験がのちの営業活動に役立っています」

 

配属から1年後、高橋さんは念願の営業課に異動となり、引っ越しの見積もりを担当することに。先輩の営業に4回ほど同行し、見積もり業務を学んだ後、独り立ちすることになった。

「お客さまと直接触れ合い、自分がお金を稼ぎだす感覚を早く味わいたかったから、本当にうれしかったですね。初の見積もりを経験したのは、配属から2週間後のこと。すごくドキドキしましたし、ご家族のお客さまだったので、家財の量も多かった。荷物は目視で確認しますから、家財の見落としや、見積もり金額と総量との整合性が取れていないなどの間違いがないよう注意しました。配分を間違えば、お客さまはもちろん、現場のスタッフにも迷惑がかかってしまう。一度会社に持ち帰って慎重に見積もりを出しましたね。お客さまから連絡をもらい、無事に成約が決まった瞬間、ホッとしました(笑)」

 

見積もりのペースは一日当たり4〜5件。引っ越しシーズンの繁忙期には10件を回ることも。お客さまの希望にできる限り応えつつ、現場がスムーズに回るような見積もりを心がけた。が、仕事に慣れた半年後、高橋さんは大きなミスをしてしまった。

「あるお客さまの見積もりをした後、いつも通りに『後日、ご連絡を待ってますね』と伝えましたが、連絡が来なかったんです。ほかの会社に決めた場合は連絡がないことも多いので、そのままにしていたら、引っ越し当日にお客さまから『待っているのにどうして来ないんだ』という電話が! この時ばかりは、本当に青ざめましたが、急いで運用課の人に連絡を取り、作業員と車両を素早く集めることができました。この会社のイザという時の機動力のすごさに驚きましたし、心底、『助かった〜!』と思いましたね。どうにか無事に引っ越しを完了できたものの、お客さまはやはりカンカン。平謝りしながら話を聞くと『見積もり当日に成約したつもりだった』とのこと。行き違いではあっても、これはきちんと確認をしなかった自分のミスだと大後悔。以来、どんな小さなことでも必ず確認し、お客さまとのコミュニケーションをしっかり取るようになりましたね」

 

また、新築の家に引っ越しをする案件では、作業スタッフがフローリングの床に傷をつけてしまうトラブルが発生。

「誠意を持って謝り、最大限のフォローをしてなんとか許していただきました。作業は現場のスタッフがするものですが、そこで起きたトラブルのフォローをするのは営業の役割なんです。お客さまを訪ねるための時間もかかるし、お叱りを受ける時の緊張感は半端でないので、最初のころは、『自分のミスじゃないのに』と理不尽に思っていました。しかし、何度かこうした経験をするうちに、『ここでリカバリーできるかどうかで会社の印象が左右されてしまうんだ』と感じるように。お客さまにとって『営業は会社の顔』。どんな時でも自分の役割を精いっぱい果たそうと思うようになり、仕事に対する姿勢が変化しましたね」

 

社内の運用課や配送担当、倉庫のオペレーション担当と電話でやりとり。作業人員の手配依頼や作業内容の確認を行う。また、お客さまに向けた作業の改善提案の資料作成、作業効率と利益率などを分析した業績についての社内資料作成も行う。

 

流通センターの立ち上げで大きな手応えを実感! その後、広大な倉庫を取り仕切る立場に

入社3年目になるころ、高橋さんは商品流通課に配属された。大手百貨店の担当として、洋服や雑貨などを卸すメーカーとの橋渡し役を担うことに。メーカーから商品を受け取り、自社の倉庫内で検品を代行し、チェックしたものを百貨店に届けるまでの流れを取り仕切った。

「検品代行まで手がけていたのは全社の中でもこの部署のみ。しかし、当時は部署全体の収入が落ち込み、存続が危ぶまれる状況でした。たったひとつしかないこの部署を残したいという想いが湧き起こり、『それなら新規開拓で売り上げを拡大しよう』と決意。もちろん、新規開拓も飛び込み営業もまったくの未経験状態。インターネットで百貨店に納品している老舗を調べたり、メーカーの多いエリアをチェックし、ターゲットを探していきました」

 

高橋さんは仕事の合間を縫い、週に一度は飛び込み営業に出かけたが、現実はそう甘くなかった。ほとんどの会社で門前払いされ、面会できても『長くお付き合いしている業者がいる』と断られるばかりの日々…。

「なかなか成果に結びつかず、精神的にもキツかったですね。そんな中、たまたま社内の新規営業部署から『家具メーカーが自社の倉庫を日通に全面委託する案件がある』と声をかけてもらえたんです。具体的には、メーカーが持つ倉庫を日通内に移転し、入荷から保管、出荷まで代行する物流センターとしての機能を持たせるという案件。まずはチームを組み、移転に向けて、いつまでに何を計画すればいいかを考えるところからスタートしました」

 

そこから、先方がどういった管理や作業をしているのかを確認するため、現場に出向くことに。400坪もある倉庫内には、実にさまざまな形と大きさの家具が保管されていたため、保管に必要な容積を計算するだけでもひと苦労したという。

「輸入時には商品が詰め込まれた巨大なコンテナが運び込まれますし、商品をスムーズに出荷する流れも考えなくてはなりません。倉庫における入出荷や管理の知識もまったくないまま、手探りで進めていきました。何をどこに置くのか、そのためにどんな設計が必要かを考え、入出荷のタイミングをいつにするのか、どんな作業体制をつくるのか、セクターごとに荷物を運ぶ車両をどう手配するかなど、一つひとつ細かく決め、お客さまとやりとりを重ねていきましたね」

 

無事に移転できた後にも、オペレーション上のトラブルが続出。高橋さんは毎日のように倉庫に通い詰め、状況を常に把握しながらトラブル解決に奔走した。

「例えば、段ボールに書かれた表示がわかりにくく、『白い家具を出荷するはずが黒を出荷してしまった』というトラブルもありましたね。そこで、わかりやすい表示のシールをつくり、入荷時の段階で貼り付けることで誤出荷を防ぐ仕組みをつくりました。臨機応変に対応を続け、立ち上げから3カ月後には作業の品質が安定。一からつくり上げたことで、法人のお客さまと向き合う手応えを感じることができました。お客さまにとっては、『日通イコール高橋』。会社の信頼は自分の仕事にかかっていると実感し、仕事に対する責任感を強く感じるようになりましたね」

 

大きな手応えを感じた翌年、新規開拓を専門に手がける営業センターに異動。引っ越し、鉄道や車輛を使う路線便の配送、倉庫など、ジャンルを問わずさまざまな提案ができるため、さらなるやりがいを感じたという。

「これまでの経験を生かし、提案できそうな企業をリストアップしていきましたが、飛び込み営業ではほとんど成果が出ず、歯がゆさを味わいました。しかし、前部署で倉庫を立ち上げた家具メーカーの担当さんが、『家具の展示会をやるから、高橋さんにお願いしたい』と声をかけてくださったんです。自分の仕事を認めてくれ、信頼してくれる人がいると感じ、本当にうれしかった! ようやく自分も一人前になれたと思いました」

 

そして2009年、高橋さんは現部署である東東京(ひがしとうきょう)事業所営業課に異動。外資系医療機器メーカーの専任営業担当として、倉庫のオペレーションに従事し、現場のスタッフとともに改善活動を行っている。

「3200坪もの倉庫には、毎日10トン車で3〜4台分もの入荷があり、出荷も一日に1万1000件を扱っています。これまでとはスケールが違いますね。僕のミッションは、全体を管理し、オペレーションの改善提案を行い、作業の品質や生産性を向上させること。そして、全体の収支を管理し、作業に支払われる金額と、そこにかかる人件費や経費などを算出したうえで、利益率をアップさせることを目指しています。経営者のような面白さがありますね」

 

現場のチームワークを大切にし、全員のモチベーションをどう上げるか、作業効率が悪い人のパフォーマンスをどう向上させるか、どこに誰を配置してローテーションを組むのかまで自ら考えているという。

「現場のみんなとはけっこうケンカもします(笑)。作業を手がける現場と数字で結果を出す営業、お互いに譲れないところがあって当然なので、だからこそ、本気でぶつかり合うことが大事なんですよ。机上の空論ではなく、現場の想いをぎりぎりまでくみ取る努力ができるのは、これまでの経験があってこそだと思います」

 

「流通」とは、人々の生活を支えるもの。高橋さんはそれをあらためて実感し、今、大きなやりがいを感じているという。

「震災の時もそうでしたが、流通が機能しなくなれば、皆さんの生活は止まってしまう。社会にとって非常に重要な役割を果たす仕事だと感じますし、日本のきめ細やかな流通の仕組みは、世界にも誇ることができる。いずれはこの仕組みを海外にも広げ、世界中の人の生活を支えていきたいと思っています」

 

担当するクライアントの倉庫内で、フロアの責任者や副責任者とミーティング。日々の収支の良し悪しや原因についてのヒアリング、各フロアが抱える問題点や改善点についての情報も収集。

 

■ 高橋さんのキャリアステップ

STEP1 2004年 研修後、配属先で作業オペレーションを学ぶ(入社1年目)

入社後、1カ月間の集合研修で、ビジネスマナーや事業の概要を学んだ。さまざまな事業部の先輩社員から、それぞれの仕事についての話を聞くことができたという。また、現場研修として、鉄道コンテナのターミナルとなる基地見学も行った。「大きなターミナルでは夜中も作業していると聞き、大変そうだなと感じた記憶があります。社会人に抱いていたイメージは、『東京の丸の内のようなオフィス街で働くもの』だったので、正直、現場で汗をかきながら働く先輩たちの姿にギャップを感じました。が、とにかく頑張ろうと気合いを入れましたね!」。研修後、人員や車両の手配を行う運用課に配属となり、仕事の一連の流れを身をもって学んだ。

STEP2 2005年 引っ越し・移転のプランナーとして経験を積む(入社2年目)

運用課で1年間の経験を積んだ後、営業課に異動。個人、法人の移転・引っ越しの見積もりから成約、運用課との手配連携までを担当。法人向けの営業では、作業の丁寧さ、パック商品があること、ゴミの出ないエコロジーな梱包材があることなどをアピールした。「個人の場合は、閑散期に値引きをすることもあり、相場観をつかむことが難しかったですね。逆に、法人の場合は契約単価が一律で決まっているため、見積もりも出しやすかったです」。

STEP3 2007年 総合営業を担当。新規開拓を中心にセールス活動を行う(入社4年目)

新規開拓を専門に手がける部署に異動し、総合営業を担当。飛び込み営業をした時の経験や、倉庫を立ち上げた経験を生かし、可能性がありそうな会社のリストを自らつくって営業活動を行った。しかし、成約できたのは小さな老舗ばかりで、大きな企業の場合には競合他社とのつながりが深く、なかなか入り込むことができなかった。「小さな契約を取れた時もうれしくはありましたが、自分のいた商品流通課の利益を上げるような案件をつかみたかったんです。もっと大きく貢献して商品流通課を存続させたいという焦りが先立ち、歯がゆかったですね」。また、ほかのエリアの支店と案件を紹介しあうことも多いため、支店同士の太いパイプを持つ上司に同行して顔を出し、自分を覚えてもらう努力も続けた。さらに、自ら他支店に声をかけ、月に一度の情報交換会を開催することを提案。新規案件や誘致案件など、それぞれのエリアから遠い案件を持っていたら、そのエリアに近い他店に振るなどもできる場になったという。お互いにプラスになるような仕組みをつくることに尽力した。

STEP4 2009年 倉庫の専任営業として、トータルな物流管理を行う(入社6年目)

専任営業として、外資系メーカー、印刷物の発行・封入を行う会社の担当となる。営業だけでなく、事業所のオペレーションや収支改善も含めたトータルな物流管理を行う。チームのモチベーション向上にも積極的に取り組んでいる。自らのチームが発端となり、月に一度の改善発表会を営業課内で実施するようになった。「現場の責任者が、オペレーションの問題点や原因の分析、改善活動とその結果などをプレゼンテーションしています。何らかの目的がある方がモチベーションが上がると考え、表彰制度をつくることを上司に提案し、採用してもらいました。現場のスタッフは年上の大ベテランばかり。信頼できるので助かっています。特に、規模の大きい倉庫の場合、細かいことに気づかないことも多いので、現場の責任者の判断にゆだねる部分もあります。ほかの現場の見学にも積極的に行ってもらい、改善の参考にしてもらってますね」。

 


■ ある日のスケジュール

8:30 出社。メールの確認と諸連絡を行う。
9:00 始業。事務所朝礼に参加後、前日の収支実績をチェック。利益率を見て、良し悪しや原因を分析。
10:00 現場に出て朝礼に参加。フロアの責任者と当日の作業計画の確認、前日の作業結果の確認などを行い、出荷指示が正常に行われているかなどもチェック。
11:00 現場の責任者と打ち合わせ。問題点についてのヒアリングを行い、改善方法について話し合う。
12:00 ランチタイム。同僚と近場のレストランへ。
13:00 担当クライアントのA社と会議。作業品質における数字目標達成率をもとに検討事項について話し合う。
14:00 担当クライアントのB社と会議。作業効率の改善提案を行う。
16:30 会議で挙げられた検討・課題事項について、解決策を考察した後、提案資料の作成を行う。社内関係部署と今後の作業人員手配についてのやりとりも行う。
18:00 現場の作業状況を確認。翌日の作業計画の確認なども行う。
19:00 翌日の作業スケジュールとToDo事項を確認した後、退社。社内のメンバーとフットサルへ!

■ プライベート

大学1年生のころからサーフィンが趣味。千葉の九十九里浜などに週に1〜2度は出かけている。「海に出ることが一番のリフレッシュですね。職場の同僚と一緒に出かけることが多いです」。

 

社内の有志のメンバーや学生時代の友人などと一緒に、月に一度はフットサルを楽しんでいる。中学、高校とサッカー部で、カラダを動かすこともリフレッシュになるという。「社内のメンバーとは、退社後にみっちり3時間、本気でやっていますね(笑)」。

 

大学時代の友人などからプライベートのネットワークが広がり、現在は総勢30人の仲間の輪ができた。定期的に集まり、イベントやカラオケ、飲み会などを楽しんでいる。写真は、みんなで浅草の祭りに出かけた時のもの。

 

取材・文/上野真理 撮影/刑部友康