彼のように若い男が自分のスッピンを見たら幻滅するかもしれない。B子の中にはそんな不安があった。彼は完璧なメイクをした自分の姿しか見たことがなく、それに対して「B子さんは若く見える」と言っているのだ。そう考えると、どうしてスッピンなんか見せられようか。メイクを落とした自分は、40代半ばなりの、くたびれた顔をしているのだ。

かくしてB子は結婚した今も、愛する旦那にスッピンを見せないよう、細心の注意を払っている。旦那は毎晩1時に眠り、毎朝7時に起きる生活を送っているため、B子は1時以降にメイクを落として就寝し、朝5時半には起床してメイクを完璧にするという、実にストレスフルな生活サイクル。平均睡眠時間は4時間を切っている。

しかも、最近になって旦那が朝のジョギングを日課として始めたから、ますます厄介である。それによって旦那の起床時間が前倒しされて6時になり、B子としては最低でも4時半には起きないと、メイクが間に合わなくなったのだ。

こうなったら睡眠時間は3時間を切ってしまう。B子は結婚後も化粧品売り場の仕事を続けているため、あまりに睡眠不足になっては仕事中の体力がもたない。いっそ仕事をやめて専業主婦になれば、旦那が仕事に出かけてから眠ることができるのだが、旦那はまだ若いから収入も少なく、どうしても共働きにならざるをえない。

したがって、最近のB子のテーマはいかに旦那を早く寝かせるかである。若い男との結婚生活も、決していいことばかりではないようだ。