――中小企業金融円滑化法の終了によって、「ABL」への注目度が上がったわけですね。米国では「ABL」は一般的に活用されていると聞きましたが。

はい。米国で「ABL」は企業の資金調達において一般的な手法です。米国のGEキャピタルは、米国の「ABL」市場の中で、最大手のプレイヤーです。主たる融資先は、ミドルマーケットと呼ばれる中堅・中小企業が多いのです。

米国で培った動産の査定や管理の手法を、日本にも持ち込んで市場を広げようというのが、私どもの考えです。

――日本の既存銀行などとは、競合しないのでしょうか?

日本の銀行さんとは競合しない事業モデルです。むしろ、補完しあう関係にあるといえます。銀行は不動産を担保とすることが多いので、一定程度までしか融資できませんが、我々がその取引先を紹介していただくことで、動産を担保にして融資ができます。そうすると貸出先の企業の経営が安定するわけですから、銀行にとっても、これは基本的にはいい話なんですね。

ですから、銀行からちょっとこの企業の動産を見てくださいと言われて、それではこの部分を担保にしてお貸ししましょう、というようなことができるわけです。

――それにしても、動産の査定やモニタリングは、なかなか手間のかかる大変な作業ではないでしょうか?

まず、在庫に関しては、事前に在庫管理システムを徹底的に調査させていただいて、日々どういう売上げをあげてどういう風に在庫が動くかということを把握させていただきます。また、売掛金に関しても、資金の動きをしっかりとモニターして、ちょっとこれは従来のパターンと違うのではないかなど、資金の移動を把握することができるようにさせていただきます。

――日本で「ABL」の事業を行っていく上での課題みたいなものはありますか?

売掛金に譲渡禁止条項という項目が付いていることがありまして、その場合は、売掛金を担保にできないという法律上の問題があります。我々の考えでは、純粋な資金調達目的においては、この条項が付いていても担保にしていいのではないかと主張しています。

――地銀さんなどと補完関係にあるとおっしゃいましたが、融資先とはどのような関係を築いているのでしょうか?

GEというのはもともと製造業からスタートした企業ですが、今では売上げの7割が製造業、3割が金融業からという形になっています。実はGEは1892年以来、CEOが9人しかおらず、その全てが社内昇格の形でCEOになったという珍しい会社です。

したがって、GEでは人材育成プログラムが充実しています。長期にわたるリーダーシッププログラムの中で、将来のリーダーを育成しているからです。

GEキャピタルの日本法人でも、こうしたノウハウを「ABL」やリースでの取引先に無償で提供する「Access GE」というサービスを提供しています。ただ融資やリースを行うのではなく、企業再生のための人材育成プログラムなどを提供するのです。

例えば、ある外食チェーンでは、社長の方が、外食産業にはない製造業的なノウハウを用いて生産性を上げたいというご要望を持っておられました。それにお応えする形で、同社に「Access GE」のサービスを提供しましたが、その結果生産性が上がったという事例がございます。

――なるほど。「ABL」だけでなく、GE創業以来のグローバルなノウハウを提供できるわけですね。

そうすることで、地銀さん、取引先、我々の三者が、「Win-Win-Win」の関係を築けるわけです。

――すごいですね。日本の中小・中堅企業にとっては、資金調達だけでない、新たな企業再生への手段となりそうですね。「ABL」の普及には、大きな社会的意義がありそうです。本日はお忙しい中、ありがとうございました。