トルコでのデモについて

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イスタンブール中心部のタクシム広場付近の再開発に反対し、5月最終週に始まった小規模な座り込みが、先週末には、トルコ政府に対する全国規模の抗議運動へと発展し、若者や都市部の中間層を中心とした市民が、イスタンブールやアンカラ、その他の主要都市でデモを行なうに至りました。

こうした動きは当初、オスマン帝国時代の兵舎を再建し、そこにショッピング・モールを開くという再開発計画に抗議する小さな集まりに過ぎませんでした。しかし、再開発に伴なって取り壊される予定のゲジ公園の樹木伐採が決行されると、抗議に参加する人数が増加し、5月31日には、抗議に集まった人々を退散させるために、警察が催涙ガスや放水砲を用いるに至りました。そして、多くの逮捕者や負傷者がでると、当局による制圧の動きは過剰だとの見方が拡がったことなどから、政府に対する全国規模の抗議運動へと発展し、先週末には、全国の主要都市に数万人規模の市民が集まりました。

トルコは政教分離を謳っています。しかし、今回集まった市民は、エルドアン首相率いる与党・公正発展党(AKP)が、イスラム教の保守的な価値観を押し付け、個人の自由を侵害しようとしていることに対して抗議していると報じられています。先週、政府が、酒類の販売・広告を制限する法案を成立させたことも、人々の不満につながっているとみられています。また、ゲジ公園は、イスタンブールでも数少ない、木々の緑が残る場所であることから、貴重な公共の場が商業目的のために台無しにされることも、抗議理由の一つとなっています。

政府への抗議を強める市民の動きに対し、エルドアン首相は、デモは非民主的であり、世俗化政策を進めた共和人民党(CHP)によって誘発されたものだと非難しました。さらに、再開発計画だけでなく、外交面も含め、政府の幅広い計画を予定通り進めると述べています。

同首相が、トルコで最も人気のある政治家だという点に疑いの余地はほとんどありません。しかし、同氏の権威主義的な姿勢や宗教面での保守主義的な姿勢が、酒類の販売・広告の規制強化などの例のように、市民生活への干渉につながることが明らかとなりつつあり、市民の間で懸念され始めている模様です。ただし、6月3日時点で、政府に対する抗議はひとまず弱まる方向にあるとみられています。また、エルドアン首相も同日、予定されていた北アフリカ訪問に向かうなど、週末の出来事を大きな問題としない姿勢を示そうとしています。

なお、金融市場における反応は大きく、主要株価指数が3日に10%超下落したほか、トルコ・リラは一時、1米ドル=1.90リラに下落し、2012年1月以来の安値をつけました。リラ建て国債の利回りも、幅広い年限で0.2%〜0.3%ポイント低下しました。

2014年後半の大統領選挙およびその8ヵ月後の総選挙と、向こう2、3年の内に二つの大きな選挙を控えていることから、今後、数週間ないし数ヵ月の政治分野での展開は、AKPおよびエルドアン首相自身にとって特に重要と考えられます。世論調査でAKPが50%を超える歴史的な支持率を得ていることもあり、現首相のエルドアン氏が依然として次期大統領の有力候補と考えられます。ただし、エルドアン首相とAKPに対する信任は、今回の件にとどまらず、今後も何度か試されることになるとみられます。つまり、勝利への道は、当初考えられていたほど安泰ではない可能性もあり、今後の行方を注視する必要があります。

(※上記グラフ、データは過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。)

(2013年6月4日 日興アセットマネジメント作成)

●日興アセットマネジメントが提供する、国内外での大きなイベント発生時の臨時レポート「フォローアップ・メモ」からの転載です。→「フォローアップ・メモ」