ジャズ・ミュージシャン、大学講師、文筆家、ラジオパーソナリティー、選曲請負人。カルチャー方面での活動で知られる菊地成孔さん。そんな菊地さんの最新刊は、格闘技やプロレスを語り尽くしたインタビュー集です。

 本作は、休刊したプロレス雑誌「kamipro」上での菊地さんの連載を、余すことなく完全収録したもの。『サイコロジカル・ボディ・ブルース解凍〜僕は生まれてから5年間だけ格闘技を見なかった〜』に続く、2冊目の格闘技本となります。

「『ほんの一瞬先が読める』という、一種の体質みたいなものを持っています」
「まったく実利のない、野良犬の様な能力ですが、これは『現在』というトラップに騙されないというか、『今』という感覚の洗脳を受けづらい」


などと、自らを称する菊地さん。本著を読み進めると、菊地さんがプロレスと格闘技の未来を、実に正確に予見していたことがうかがえます。

 PRIDE、HERO'Sなどの団体をはじめとする格闘技業界の衰退と変化。秋山成勲選手を軸とした格闘技界における「第三次韓流ブーム」の到来。本書内で「タレント性」を評価されていた武蔵選手は、後にドラマ版「サザエさん」で穴子さん役を演じるなど、タレント業にも進出を果たしました。しかし、これらの予言の数々が、連載中は格闘技ファンから「無視」されていたのだそうです。

 本著の担当編集者は、当時の華やかだった格闘技界を振り返るのがつらかったとのこと。悲しみのあまりに原稿を読み返すことが出来なかった為、刊行が1年遅れたのだそうです。今では、大晦日の特番をはじめとする格闘技の中継を、地上波で見ることが少なくなりました。格闘技を愛する人にとっては、受難の時代なのかもしれません。

 独自のTwitter論を展開するなど、あらゆる文化の領域を横断している本著は、格闘技・プロレスファン諸兄ならずとも楽しめる一冊となっています。



『あなたの前の彼女だって、むかしはヒョードルだのミルコだの言っていた筈だ』
 著者:菊地成孔
 出版社:アスペクト
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