昨年11月以来、力強い上昇をみせて来た日経平均株価だが、5月23日に1143円急落し、その後も乱高下を演じている。

 しかし、ここでちょっと立ち止まってみたい。そもそも政権交代して、われわれが「アベノミクス」に期待したのは「株高」や「円安」だったのか。

 そうではない。目的は「景気回復」にあるはずだ。ごく一部にしか富をもたらさない株高や円安がいくら進んだとしても、それが経済全体を底上げしなければ、賃上げにもつながらない。給料が上がらないままでは、われわれを待ち受けているのは、インフレと円安がもたらす“値上げ地獄”や、消費増税といった負担増ばかりである。

 埼玉学園大学経済経営学部の相澤幸悦教授の指摘は、実に的を射ている。

「仮に景気回復に伴って企業業績が回復したとしても、それが賃金に反映されるのは2年か3年先になる。それまで元手の少ない一般庶民はなかなか株に手を出せず、持てる者と持たざる者との格差は広がる一方です」

 アベノミクスに夢を託し、物価高や増税に備えるために、なけなしの資金をはたいて株式投資を始めた庶民も決して少なくない。ところが、今回の暴落で、株を保有した途端に相場の洗礼を受けるという“足切り”に遭った。

 そればかりか、「今後は第2、第3の足切りも浮上しかねない」と相澤氏は続ける。

「富める者がさらに富むという構図が続けば、不動産を持つ者と持たざる者の格差も広がる。アベノミクスの金融緩和でばら撒かれた資金が不動産に流れ込むのは必至で、土地を持つ者は何もしなくても資産を増やすことができる。さらにいえば、不動産でも都市と地方の格差がどんどん広がる。

 黒田東彦総裁率いる日銀が次なる緩和策としてETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)の購入を増やせば、株価はもちろん、REITが主に扱う都市部の物件に資金が集中する。地方は置いてけぼりです。アベノミクスの金融緩和というのは、こうした副作用を生む政策でもあるのです」

※週刊ポスト2013年6月14日号