石川のPGAでの現在地は決して高くない だが確実に進化の階段を上っている(Photo by Scott HalleranGetty Images)

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 メモリアル・トーナメントを制したマット・クーチャーの勝ちっぷりは見事だった。先週のクラウンプラザ招待でも優勝争いに絡み、2位。そして今週は最終日に首位を守り続けた上で、今季2勝目、通算6勝目を堂々と飾った。
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 「ウイニングパットを沈めた瞬間、ついにこのメモリアルを制したと思った。いい気分だった」。優勝会見では興奮冷めやらぬ様子で、そう語ったクーチャー。だが、彼は日頃は穏やかで、何でも受け入れる謙虚な人柄だ。それが彼の強さの礎になっている。
 単独首位で3日目を終えたとき、クーチャーは自らの強さを「楽に飛距離が出るところ」と語っていた。もちろん、飛距離はビッグアドバンテージになる。けれど、もっと大きなモノを言うのは積み重ねてきた経験と、その経験を経たことで身に付いた心の強さだ。
 ジョージア工科大学の1年生で全米アマを制し、その資格で翌年のマスターズや全米オープンに出場し、大活躍してスーパースターへ。スポットライトを浴びる世界を知りながら、彼はプロ転向をあえて遅らせ、大学卒業と就職の道を選んだ。
 社会人を少しばかり経験後、ようやくプロ転向。早々に02年のホンダクラシックで初優勝を挙げたが、その後はスランプに陥り、二軍落ちも経験した。だが、クーチャーの凄さは、期せずして到来した「冬の時代」を受け入れることができる寛容性だ。
 「二軍ツアーに落ちた日々のことに触れられたくないという選手もいる。二軍落ちが恥だと感じる選手もいる。でも僕は二軍落ちしたとき、そこが自分が居るべき場所だと思っていた。そして、この場所でやるべきことをやって、またPGAツアーへ行こうと思っていた。居るべき場所で、やるべきことをやって、そこからは、たくさんのことを学んだと思う」
 クーチャーの考え方はいつもこのスタイルだ。先週のクラウンプラザ招待で惜敗したことも、悔しいと思うのではなく、「先週、優勝争いの感覚を得られたことが今週の優勝争いを乗り切る助けになった」と感謝していた。
 そのときそのときの結果はアスリートにとって最も大切ではあるけれど、惜しくも負けたことも、ボロボロに崩れて負けたことも、ドン底と思えるところまで落ちたことも、すべてが未来の結果につながっていく。いや、つなげていくことができる。しかも笑顔で。それがクーチャーの最大の強さなのだと私は思う。
 石川遼にも、そんな強さが少しずつ身に付き始めている。正式メンバーとして米ツアーに出始めた今季序盤の彼は、優勝の二文字を切望するあまり、結果が出ない「冬の時代」を受け入れることができなかった。
 予選2日間のどこかでスコアを落とし始めると、自ら予選落ちへの道を加速してしまうようなプレーぶりになり、予選通過を果たしても、下位に沈むと「優勝からほど遠いところでプレーしていても、得られるものはあまりない」と言い放った。その様子からは「こんな位置は僕の居るべき場所じゃない」と思っているであろうことがあからさまに見て取れた。
 だが、半年が経過し、石川はようやく今の自分の居場所を知り、次なる居場所の目指し方を覚えた。「毎週、予選を突破できるようになって、あともう1〜2段階、上がるためには、アプローチとパッティングかな」。
 「予選通過するために米ツアーに来たのではない。予選通過を目指すレベルのゴルフをしたくはない」と言っていた石川が、今では「4日目が終わったときの結果を出すためには初日が大事。初日も2日目も3日目もいいプレーをしなきゃダメ。あらためて、そこまでのプロセスが大事だと思った」と語った。
 この半年は、予選通過を目標とするゴルフが精一杯だった。それを好成績の出せない「冬の時代」と呼ぶべきなのかもしれない。が、それが彼の現実的な居場所だった。明日は全米オープンの地区予選。メジャーの出場資格がなかなか得られないという意味では、ある意味、それも「冬の時代」なのかもしれない。
 だが、冬が終われば春が訪れる。クーチャーが冬を経て、今、春を謳歌しているように、石川の冬もいずれ春に変わるはずだ。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
<ゴルフ情報ALBA.Net>

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