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■「時間」「空間」「論理」の中で伝える

話を伝えるとき、たとえ同じ内容でも切り口によって「時間」「空間」「論理」……など少なくとも3通りはストーリーの組み立て方が考えられるだろう。あらゆる角度から展開が可能ながら、必要なのは「自分なりの順序のルール」である。これさえしっかり決めて組み立てれば、話はスッキリと流れていくものだ。

村上春樹氏の米国ハードカバー版『1Q84』の装丁を手がけたブックデザイナーのチップ・キッド氏がTEDのステージに登壇したときのこと。25年のデザイナー人生における作品を振り返って、過去の作品から説明を始めた。コメディアンのような振る舞いや服装、その語り口もユニークながら、繰り広げられたのは感覚的にも見えるブックデザインにあたっての、「論理展開」だった。

キッド氏にとってのカバーデザインとは「この本の内容は、どう見えるか」を考えることであり、読者に「どんな話か」を一目で見せ、結果的に「これは読むべきだ」と思わせることだという。この考えをもとに、彼は「どんなデザインに仕上げるか」を考察し、作品作りの思想と論理を繰り広げていった。

■世界感を“見せる”ための話運び

まず『ジュラシックパーク』の表紙では、化石から恐竜が生き返るストーリーから考えを膨らませる。今回の登場人物は科学者であり恐竜である。そこで資料や図鑑をひも解き、特に気になった恐竜の骨図を選んで表紙に使うこととした。これがこの本を端的に表し、人を引き付けると考えたからだ。

では、村上春樹氏の米国版『1Q84』ではどのように考えていったのだろうか。

この作品では、“1984年”にいた男女が、今いる世界と微妙に異なる“1Q84年”の世界に入り込み、事件に巻き込まれていく姿が描かれている。問題は、その2重で奇妙でもある世界観を「どう見せるか」だった。

「どうやって」それを表現するか? 透け感のあるカバーに「1Q84」のロゴを4か所に配し、ロゴを通して女性の顔が少し見える。そして表紙では女性の顔写真に「1Q84」の文字を乗せてカバーと逆転させた。「なぜか?」これで本来の“1984”の世界と異世界である“1Q84”の2面性を表し、キッド氏が考える「この本が“どう見えるか”」が表現できるからだった。

キッド氏のように、話の細部を詰めていく際の一番簡単な方法は……、

How? (どうやって?)、Why?(なぜか?)⇒ Because〜(なぜなら〜)

と話を展開していくことにある。あるいは5W1Hを使うのだが、そのあたりはまたあらためて紹介させていただこう。いずれにしても、実際にこの言葉を口に出さなくても、この考え方で「この話は何か」「どうすれば見せられるか」「なぜか」「なぜなら」〜と、話を突き詰めていくことで、自然と論理を展開していけるのである。

キッド氏の作品は時系列で作品を眺めてもおもしろいが、「なぜこうなったのか」の思考過程を聞くほうが、よりいっそう作品への興味をひくだろう。こうした話の展開は、私たちの仕事や日常でもいろんな形で応用できるはずだ。

■「疑問を提示→回答」は効果的な流れ

話の展開として「時間」を用いるなら、たとえば時系列に話を追っていくと聞き手にとってわかりやすい。たとえば経費の調整にはじまり、材料の調達、プログラミングや加工段階、完成品、今後の展開にいたるまでを流れとして伝えるなど、「過去」「現在」「未来」といった時間の流れで話がとらえやすいだろう。その流れの過程におもしろさや魅力があれば、これが一番の方法だ。

「空間」なら、物理的に建物の屋上から市街地を眺めるかのように、都市計画を説明していくのもいいだろうし、コンピュータの基盤の上で、回路がどのように組まれているかを説明していく方法もある。

あるいは「こんな製品があったらどんな世の中になるか」といった仮説を立て、過去の欠点や矛盾点をあげ、新製品の利点を証明し、結論にいたるなど、「論理」面からの展開も可能である。新製品なら「従来に欠けていたもの」を指摘して、「解決策」として製品をあげる流れも考えられるだろう。

話をするのに、絶対的に決まった順序はないが、“効果的な順序”はあるはずだ。

それは「時間」「空間」あるいは「論理」なのか……これらをヒントとして、自分の話が一番効果的に伝わる順序だてを考えて話をしてみれば、きっと今日の話の成果につながることだろう。

(上野陽子=文)