知らないと落ちこぼれる入門書&プロ本【マーケティング】

簡単にいえば、商品やサービスを購買するよう消費者にうながすマーケティングの本質は人間を知ること。だから、小説や映画などもよい教材になる。そこでお勧めなのが、戦後の復興期から高度成長期を舞台にした漫画の『サザエさん』。いまの新興国の人々の欲求や心理を推測し共感するのに役立つ。

『サザエさん』長谷川町子/朝日文庫
戦後復興期〜高度成長期の庶民の暮らしぶりを、4コマ漫画のなかで生き生きと描いている。また、当時の日本と似通っている新興国の日常を知る手がかりにもなる

大局的にマーケティングそのものの基礎を学ぶのなら、『コトラーのマーケティング入門』は必読本だ。世界中のマーケティング関係者が読んでおり、この分野に携わる者同士が理解し合うための「共通言語」を習得できる。さらに、マーケティングの投資利益率の明確化や顧客管理の重要性を教えてくれる『ドン・シュルツの統合マーケティング』も併読しておきたい。

『コトラーのマーケティング入門』
フィリップ・コトラーほか/ピアソン・エデュケーション
初めてマーケティングを学ぶ学生やビジネスマンのために世界的権威が著した入門書。マーケティングのあらゆるテーマが整理されており、必読の書といえる。

『ドン・シュルツの統合マーケティング』ドン・シュルツほか/ダイヤモンド社
次世代のマーケティング理論である「統合マーケティング」を学ぶ格好の一冊。個々の顧客に対応していくダイレクトマーケティング手法の神髄が詰まっている。

拙著『売り方は類人猿が知っている』では、人間の消費活動が必ずしも合理的でないことを、神経科学や進化心理学の最新研究を踏まえて論証した。一方、『影響力の武器』は、顧客に「買わせる」ためのテクニックを、心理学者が実際に社会実験をして解明したものである。

『売り方は類人猿が知っている』ルディー和子/日本経済新聞出版社
人類の消費心理はなんと数百万年前から変わらなかったといったら、誰もが驚くはず。神経科学などの最新研究に基づきながら、現代のマーケティングの世界を紹介する。

『影響力の武器(第2版)』ロバート・B・チャルディーニ/誠信書房
どうしてその商品を買ってしまったのか? セールスマンや広告の巧妙なテクニックを分析しながら、人間が購買を決定するまでの心の動きを、社会心理学の立場から分析。

『スモールワールド・ネットワーク』ダンカン・ワッツ/阪急コミュニケーションズ
社会の全構成員が実は緊密な関係でつながっているのだという「スモールワールド理論」。マーケティングに必要不可欠とされる、その最新のネットワーク理論を学べる。

『ティッピング・ポイント』マルコム・グラッドウェル/飛鳥新社
「ティッピング・ポイント」とは、商品やある社会的な現象が世間に一気に広がりだす臨界点のこと。具体的事例の分析を行い、「流行」が生まれていくメカニズムを解明する。

『「欲望」と資本主義』佐伯啓思/講談社現代新書
バブルはなぜ起きたのか。2000年代初頭の「情報資本主義」とは何だったのか……。膨張を続ける消費社会に警鐘を鳴らす。マーケティングを見つめ直すのに役立つ。

『繁栄』マット・リドレー/早川書房
人類誕生からの歴史をたどりながら、経済が発展してきたメカニズムを考察。そして、人間社会はたゆまぬイノベーションによってこれからも進歩し続けると主張する。

『その数学が戦略を決める』イアン・エアーズ/文春文庫
出会い系サイトの相性診断から政府の政策決定まで、いまやあらゆる分野で大量なデータ分析が意思決定に活用されている。その実態と危険性についてリポートする。

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マーケティング評論家 ルディー和子
国際基督教大学卒業。上智大学国際部大学院経営経済修士課程修了。米化粧品会社のマーケティング・マネジャー、タイム・インクのダイレクトマーケティング本部長を経て、現職。日本ダイレクトマーケティング学会副会長。

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(マーケティング評論家 ルディー和子 構成=野澤正毅 撮影=南雲一男)