4年ぶりに来日したトニー・レオンを直撃!

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『インファナル・アフェア』や『レッド・クリフ』シリーズなど、アジアという枠を超えたグローバルなトップスターとして君臨し続けるトニー・レオン。6月の誕生日で51歳になるが、『2046』(04)以来、9年ぶりにウォン・カーウァイ監督とタッグを組んだ『グランド・マスター』(公開中)では、何と47歳にしてカンフーに初挑戦した。演じたのはブルース・リーの師と言われるイップ・マン役だが、準備期間を合わせた4年間で二度も骨折するほど過酷な撮影だったようだ。来日したトニーにインタビューし、壮絶な撮影秘話を聞いた。

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ブルース・リーの師匠と言われるイップ・マンら中国武術の武闘家たちの壮絶な戦いと、彼らを取り巻く人間ドラマが繰り広げられる本作。トニーとカーウァイ監督は『欲望の翼』(90)以来、20年間にわたって何作もタッグ作を放ってきただけに、二人の間には強い信頼関係がある。「彼との仕事では、常に化学反応が生まれるんだ。撮影過程はすごく大変だけど、出来上がった作品には毎回満足している。ウォン・カーウァイ組は、プロフェッショナルの集まりで、すごくやり甲斐があるんだ」。

一度目の骨折は、カンフーのトレーニングをして9ヶ月くらい経ち、ようやく形になってきた頃だった。「腕の骨折で、せっかく習得した技術がゼロに戻ってしまい、また一からやり直しになった。その時、まだ2週間しか経っていないのに動かしたので、骨がちゃんとつながっていなかったみたい。そのままクランクインしたら、初日に7、8人とやり合うシーンで、また同じようなところを骨折してしまった。一回目は髪の毛くらいの細さの骨折だったけど、2回目はサメの歯みたいにギザギザに折れていた。さすがにその時は、6ヶ月間、おとなしく家で休養したよ。それでまたトレーニングをし直したんだ。それが大変だったかな」。

きちんとした台本を渡さないことで知られるウォン・カーウァイ監督。唯一、これまでの作品と違った点は、イップ・マンという実在の人物を演じると最初からわかっていた点だ。「今までは、自分の役柄がどうなのか、撮り終わるまでわからなかった。でも、今回はイップ・マンについていろんな資料を見ていたから。もちろん、チャン・ツィイーたち他の役者は、自分がどんな役を演じるのかは、現場でしか知ることができなかったよ。まあ、監督がわかっていれば良いと僕は思っているけど」。

通常の日本映画ではありえない撮影方法だが、トニーは慣れたもので、「いつもわからないから、毎回プレミアはサプライズだよ」と笑い飛ばす余裕がある。「フィルムはすごくたくさん回すけど、どういうふうに編集されるのか、我々には全然わからない。でも、このやり方は、お互いに100%信頼していないと無理だね。撮影チームの要求はいつも高いけど、その分、撮ったもののレベルも高いんだ」。

そして、今となっては、全てが良い思い出だとも語る。「この映画で、いろんなことに挑戦できた。カンフーをはじめ、武侠小説も色々と読めたし、僕の生活に対しても啓発されるものがたくさんあった。人生はもしかして、一番良いと思う時期がそうであるとは限らないのかもしれない。大変な時期こそ、勇気や忍耐力がついたりするんだろうし。本作を撮り終わった時、監督にも言ったんだ。『ありがとうございました。この映画でいろんなことを学ばせていただきました』とね」。

やはり一流のスターは、人柄も根性も全て一流なのだ。ウォン・カーウァイ監督が構想17年、準備期間7年、撮影期間に3年もかけた渾身の一作だが、トニーにとっても特別な一作となったに違いない。【取材・文/山崎伸子】