[Report Now!]NHK技研公開2013〜期待、見たい、感じたい

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今年も恒例のNHK技研公開に多くの人だかり


5月30日から6月2日の4日間にわたって第67回技研公開が開催される。テレビ放送の開始から60年にあたる今年は、「期待、見たい、感じたい」をテーマに2013年から予定されている放送通信連携サービスを実現するためのシステム「ハイブリッドキャスト」や、先ごろ実用化試験放送を総務省が2016年に前倒し発表した「スーパーハイビジョン」を中心に37の研究成果のほか、子供たちを対象とした実験室探検隊や工作体験(ふしぎバネでんわ)、スタンプラリー、かくれているキャラクターをみんな見つける「かくれんぼゲーム」など家族連れでも楽しめる内容となっている。



なお、30日は研究発表として、次世代放送システムのメディアトランスポート技術、スーパーハイビジョン対応HEVCリアルタイム符号化装置、大画面シート型テレビを目指したフレキシブル有機ELディスプレイのほか、新たな放送システムや次世代の高精細映像放送に向けての講演も開催された。



ハイブリッドキャストは、テレビとスマートフォンやタブレット端末などを連携させることで、テレビ放送とWebが融合した新たなアプリケーションやコンテンツの発展が期待されるもので、NHKを始めとして民法などもサービスを開始する。対応テレビも6月から東芝が発売するなど製品的にもすでに動き出している。会場ではエントランスの大部分を占めて様々なアプリケーションが出展されていた。



放送通信連携サービスであるハイブリッドキャストには、テレビ上のメニュー画面から好みのサービスを選択することにより、最新のニュースや生活に役立つ情報を確認したり、オンデマンド番組を視聴することができる独立型サービスや放送電波に乗せた制御情報に基づいて、番組の内容や進行に合わせてより詳細な情報を手元で確認することができる連動型サービスがあり、スマートフォンやタブレット端末、リモコンなどを使って、番組に参加したり、様々な情報をテレビ画面に表示することができる。すでにIPTVフォーラムにおいて「ハイブリッドキャスト技術仕様」(放送通信連携システム仕様(IPTVFJ STD-0010)もできており、今後の展開が期待される。



スーパーハイビジョンは解像度が8K(7680×4320)というだけでなく、毎秒フレーム数120(60、59.94)、10または12bitの階調で色域も従来の色域よりもはるかに広い。すでに、ITUなど規格化も進んでいるが、2016年には実用化実験とはいえ放送が始まるわけで、カメラだけでなく記録装置や伝送、圧縮、符号化、放送電波にかかわる問題など早急に進めて行かなくてはならない。今回の展示でもハイビジョンに関連した技術出展が非常に多く、2016年までまだ2〜3年あるとはいえ、キーとなる製品の開発だけでなく規格の制定など早急に決めて行かなくてはならないだろう。



また、並行して人に優しい放送(高齢者、障害者、外国人などへのバリアフリー化など)やスーパーハイビジョンの次の目標として空間再生型立体テレビなどがあり、今回もこうした様々な研究報告や出展が行われている。



ハイブリッドキャスト



TBSのハイブリッドキャスト「カウントダウンTVコネクト」。テレビ番組に合わせてスマートフォンをマイクがわりに利用して歌うことで、歌の採点が行える。採点は個人だけでなく全国順位などもテレビに表示されるというもの。ほかにもニュース番組に連動して個人の嗜好に合わせた関連ニュースをタブレットに配信する「おまかせニュース」やCM放送中にゲームに参加することでポイントがもらえる「セカンドスクリーン連動CM」などを出展





フジテレビのライブ&トーク番組へのハイブリッドキャスト活用例「ヒーリングBarアイドリング」。番組に登場する好きなタレントなどを中心にタブレット画面の追っかけカメラでズームした画面を見ることができるほか、SNSへの投稿によるポイント付与や視聴者の端末に合わせたCM提供、VOD連動などが企画されていた。





NHKが試行開始するハイブリッドキャスト。過去30日から8日先までの番組表を自由に行き来し、見逃しから予約まで対応する「アクティブ番組表」やテレビ60年のアーカイブポータル「TV60ものがし・なつかし」、番組を視聴しながら見たい地域のニュースなどを表示する「スクロールニュース」など。





スーパーハイビジョンと連動したもので、HDの4倍の解像度があるのでマルチ画面で関連情報と共に表示しても多様な表示が可能だ。たとえば、マラソンの画面に地図や選手の情報、俯瞰画像などを表示することで、一つの番組を立体的に楽しむことができる。操作は手元のタブレット端末で行う。




スーパーハイビジョン




フルスペックのスーパーハイビジョンの映像信号は画素数7680×4320、カラーサンプリングRGB4:4:4、フレーム周波数120Hz、階調12ビットとなり、データレートは144Gbpsにもなる。単板式の小型カメラ用CCUによりカメラヘッドには既存の放送用光カメラケーブルを利用でき、小型信号伝送装置により現行のハイビジョンカメラと同様に機動的な映像制作が可能になる。スーパーハイビジョン映像制作を進めるともに、画質、機能、運用性の改善や映像伝送インターフェースの標準化などに取り組んでいくという。





スーパーハイビジョンカメラ用小型記録装置。イメージセンサーの信号を圧縮するコンパクトな信号処理ボードと並列固体メモリーを用いた高速記録により、低消費電力化と小型化を実現。また、着脱可能な固体メモリーパックも開発中。




スーパーハイビジョン単板カメラ。3300万画素(7680×4320)のCMOSイメージセンサーを採用しており、センサー自体は3版カメラと同等のものだがベイヤー配列となっている。別途CCUが必要で、現行60Hzだが将来的には120Hzに対応するという。






スーパーハイビジョンHEVCリアルタイムエンコーダー。国際標準化されたばかりの映像符号化方式HEVCHEVCを採用しており、MPEG-4 AVC/H.264の約2倍の圧縮性能を実現している。スーパーハイビジョン映像信号を17に空間分割し、分割領域ごとに並列に符号化処理することでリアルタイムエンコードを実現。






音響一体型145型スーパーハイビジョンディスプレイ。画面の周囲に小口径のスピーカーを配置し22.2マルチチャンネル音響再生に対応させた。本来22.2マルチは前方や後方、上下などにスピーカーを配置するが、家庭内での使用を想定して22.2マルチチャンネル信号をスピーカーアレー用信号にリアルタイムで変換する装置を開発。さらに小型のスピーカーで広い周波数帯域を再生できるようにスピーカーアレーを設計している。




インテグラル立体テレビ



複数のカメラを用いた多画素の撮像装置で、高い品質で立体像を生成するには、より多くの画素で要素画像を取得する必要がある。今回、複数のカメラを用いた多画素の撮像装置を開発することで、立体像の見える範囲(視域)を拡大することに成功。



評判分析のためのTwitter解析技術




Twitterで番組を話題にしていても番組名が明記されていることは少なく、番組に対するつぶやきの典型的なパターンに対応した3種類の番組名判定アルゴリズムを開発。また、好意的か否定的の判定も番組の視聴に関連する20種類の項目を定め、つぶやきを各項目に自動で分類し集計できる。



2次元・3次元情報の触覚・力覚提示技術



仮想物体に触れている部分の形状を指に5点で刺激することで、1点では認知が難しかった角や輪郭などの特徴を触わって知ることができる。これにより、美術品などの3次元情報を触覚や力覚で伝え、触れただけで図の重要な場所がわかる触覚ディスプレイおよび実物に近い感覚で仮想物体に触れる力覚提示装置。



広色域スーパーハイビジョンシステム



広色域スーパーハイビジョンカメラに対応したプロジェクターで、RGB以外に輝度を制御する機構を搭載しており、スーパーハイビジョンの広色域表色系の表示を実現。



多視点ロボットカメラシステム



9台のロボットカメラを使って1つの被写体を追いかける。1人のカメラマンによる複数のロボットカメラ制御が可能で、写真奥のカメラマンの操作に9台のカメラが連動する。これにより、映画マトリックスで有名な弾丸を避けるシーンのような撮影やインテグラル立体テレビの撮像システムとして応用可能。サッカーなどでフィールドをドリブルする選手など、ダイナミックに移動する被写体フォローすることができる。



低遅延型デジタルラジオマイク




低遅延型デジタルラジオマイクの伝送方式。800MHz帯の特定ラジオマイク周波数移行が検討されており、移行先の周波数帯でも安定に利用できる低遅延型デジタルラジオマイクの伝送方式を開発。また、返し用のイヤーモニターもあり、インタビューや演奏者などへも違和感のない送り返しが可能。OFDM伝送方式とダイバーシティ合成による安定な伝送と2チャンネルステレオ伝送モードに対応している。



無線映像送受信



無線リンク情報に基づいて映像レートを制御することにより、無線回線の帯域変動に対する映像レートの追従性が向上して、映像がより途切れにくくなった。また、取材カメラに取り付け可能な小型IP無線伝送装置を開発し、現場の映像を放送局へ簡易に伝送することができるようになった。



携帯端末のカメラを用いた放送通信連携技術



携帯端末のカメラを用いた放送通信連携技術。テレビ画面を携帯カメラ越しに撮影・視聴することで、新たな視聴体験を提供する放送通信連携サービスの研究。撮影したテレビ画面に対して番組に連動するCGを高精度に同期させて表示する技術を紹介。携帯端末で写し、取り込んだ画像から重畳した時刻情報を抽出することにより、番組と連動したCGを同期して動かす方式を開発。これにより、計算性能の低い端末でも同期精度を確保することが可能で、フレーム単位の高精度同期が可能。



素材映像マネージメントシステム



素材映像マネージメントシステム「素材バンク」。映像解析だけでは取得の難しい撮影空間情報や被写体・撮影内容に関するキーワードなどの高度な情報を、センサーや簡便な入力デバイスを積極的に活用し、撮影時に映像にリンクさせて取得。映像やメタデータを基に簡単に所望の映像を見つけるための手段と、用途に応じた形式で映像や映像加工のための補助データを取り出す手段を提供できる。



超高感度カメラ



月明かりでも鮮明なカラー画像を撮影可能な超高感度カメラ。従来のEM CCDからCMOSセンサーへ変更することで、小型軽量化と省電力を実現した。EM CCDは回路やセンサーを冷却するためのペルチェ素子などが必要だったが、今回そうした回路を省略することで小型化を実現している。



超小型シリコンマイク



素材に単結晶シリコン採用し一体構造で形成されており、熱や湿気に強く、丈夫にできている。また音響特性的にも優れており、非常に小型という特徴もある。タバコほどの大きさのマイクとなっている。



ハイブリッドセンサー



スタジオの床面を撮影し、位置情報を取得する小型カメラと加速度や傾きといった姿勢情報を取得するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサー(加速度センサー、ジャイロセンサー、レーザーセンサー、センサーカメラ)から構成されており大がかりな設備を用いることなくハンディーカメラによるCG合成が可能。マーカー不要で、前後左右上下だけでなく斜めに傾けたり回転方向にも追従する。



電子透かし技術を応用したテレビと携帯端末の連携



バーコードやQRコードなど必要なく放送画面を携帯端末などで撮影するだけでWebサイトなどを表示可能。画面の一部の撮影でも対応できる。



ジオラマ3D双眼鏡体験コーナー



スーパーハイビジョンの3D画像を双眼鏡型のビュアーで覗くというものでが、ズームやパン/ティルトに連動した画像を見ることができる。観光地などにある双眼鏡と同じように鑑賞することが可能。昨年のCEATEC JAPANでも出展されており、スーパーハイビジョンの応用例としての展示のようで、ガイドブックには載っていない展示だ。



フレキシブル有機ELディスプレイ



大画面のシート型テレビの実現を目指した研究開発で、ベンゾキノリン誘導体を使用した高効率な発光層材料を開発し、低消費電力で長寿命な赤色の有機EL素子を実現。対角8インチのフレキシブル有機ELディスプレイや新構造の有機ELディスプレイなどを出展。



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