女性の世界を変えてくれる靴たち

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赤い靴底がトレードマークの「ルブタン」、全行程を自工場でこなすこだわりの「ジュゼッペザノッティ」、そしてSATCで主人公キャリーが破産するほど買い込んだ「マノロブラニク」。どれも魅力的な靴たちですが、今回のキーアイテムは最後の「マノロブラニク」です。

ファッション編集部のもとにやってきてある中学生の少年。彼は死んでしまった父について調べていました。ファッション編集部にちょっとのミステリ要素、それに主人公の成長。すべてが味わえるのが永井するみさんの小説『マノロブラニクには早すぎる』(ポプラ社刊)です。
主人公の世里はファッションのことを何もしらないファッション編集者。ある日彼女は鬼編集長(どこかで聞いたことのある設定……)の履いている靴に目を奪われてしまいます。本作で世里があこがれている、仕事のできるかっこいい編集長の履いている靴こそが「マノロブラニク」なんです。
立ち寄ったセレクトショップでそんな編集長の履いている靴を見つけた彼女はいいます。
「なんて綺麗。
―なんて素敵。」
一目見てわかるほど、毎日編集長の履いている「マノロブラニク」を見ていた世里はあまりの憧れで、履くのが怖くなってしまいます。
どこかドラマティックなものを感じさせる立体的なデザイン。それがマノロブラニクです。
「とびきりいい靴を履くの。いい靴を履いていると、その靴がいいところへ連れて行ってくれる」なんていう格言がフランスにはあるそうです。足元にある靴だからこその素敵な格言ですね。そんな靴は服飾品のなかでは最高の贅沢品ではないでしょうか?

靴底は擦れるためメンテナンスはいるし、TPOにも気を使う。一番地面に近いどころか地面に触れるのも靴。いい靴を履いていれば格段に足の負担だって違ってきます。それでも履きたいという靴に出会えたらとても素敵だとおもいませんか?
慣れるまでに時間はかかるけど、ヒールを履いた日の背筋の伸び方、気合の入り方はきっと女性にしかわかりませんよね。そして上記に挙げたような靴はそれぞれの魅力をもっています。ふと気になった靴から目を離せなくて、そんなに靴には詳しくないはずなのに同じブランドの靴にばかり目が行ってしまう、なんてことありませんか? そして目を奪われる靴に限ってやっぱり素敵な人が履いていませんか?

自分から見て素敵な人、つまりロールモデル――世里でいえば仕事のできる編集長――のようになるにはどうすればいいのでしょうか。
それは、身近なことから少しずつ変えていくことでロールモデルへと近づいていけるはずです。作中でも世里が編集長にあこがれてそれまで無頓着だった服装、そして靴へと興味を示しだす瞬間があります。女性にとっての服飾はある意味“武装”のようなもので、毎日のメイクでさえ本来ルーティンワークでなく一つの気持ちの切り替えの手段としての役割ももっています。誰か他の人のため、世間体だけでなくおしゃれからメイクまですべて自分を創るために行います。
そんな日はいつもの道も少し色鮮やかに見えるはずです。
それでもやっぱり、物理的にも視点を変えてくれる靴が一番女性に気合を入れてくれることは間違いありません。

そんな憧れの靴ですが、一足10万円オーバーなんてしばしば! なかなか手をだせません。むしろ見ているだけだからこその美しさもあるのかも……。今季流行りのシースルーにインヒールのような靴もいいです。ですが1シーズン使い捨てで靴を買ってしまうのではなく、長く使える一生物の靴に出会うのもいいのかもしれませんね。
あー!!まずはマノロを見に、いきましょう!!
(ライター/下川繭)

■『マノロブラニクには早すぎる』
著者:永井するみ
出版社:ポプラ社
定価:693円(税込)