『おにぎり通信 ~ダメママ日記~ 1』集英社/二ノ宮知子

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 ねえねえ、育児を積極的にする男性をイクメンって言うんでしょ?
 じゃ、育児を積極的にする女性ってなんて呼べばいいの?
 イクメンレディー?(デビ○マンレディーに倣ってみました)

初めて二ノ宮知子の名を知った漫画は、『平成よっぱらい研究所』だった。若いころから大酒豪だったという二ノ宮知子が、原稿を放り出して酒に走る日々を描いた作品である。酒のためなら編集も泣かせる二ノ宮先生は、実に美しかった。それでも人生は渡っていけるんですね、先生! と心強く思ったものである。
 いや、間違っていたけどな!

『おにぎり通信』はその系譜に連なるエッセイ漫画だ。
帯文には「子育てファミリーエッセイ」とあるが、正確ではない。厳密を期すならばこれは「もちろん育児は大事だと重々承知しているけど忙しくてその時間がない母親(二ノ宮)」の漫画なのである。愛児は夫によってすくすくと育てられていく。ジャンル名をつけるとしたら「子育て漫画」じゃなくて「子育てたい漫画」じゃないかな。

二ノ宮家における子育て主任は主夫であるPOM氏であり、長男が幼いころはほぼ彼が全般を担当していた。最初はもっと育児にかかわるつもりだった二ノ宮だったが、出産後2ヶ月で仕事に復帰したことが遠因となり、夫に任せきりになってしまったのだ。
仕事で忙しいから我が子のうんこしたおむつだって替える時間はない! そうして開き直っているあいだに、我が子を抱っこすると「パパがいい!」と泣かれるようになってしまった。パパに自由時間なし! しかもパパと息子が風邪を引くと、「早くふたりで病院行きなよ」って言うし(自分に移されないように)。

サブタイトルに「ダメママ日記」とあるが、ここで描かれているのはたしかに理想的な母親像とはほど遠いものだ。だが「あっはっは、たしかにダメだよねー」と笑った後で、いや、笑っている場合だろうか、と背筋に寒いものを感じてしまう。
だって「うんこのおむつ替えられない」父親っていっぱいいそうだし、「抱っこした子供に泣かれて配偶者にすがる」親像なんて性別をひっくりかえしたら当たり前すぎる光景だ。じゃあ、なんで二ノ宮知子が子供に泣かれたら笑うんだろう、って話である。

つまりこの作品には、社会の現状に鋭く切り込む批評的な要素があるのだ。「イクメンレディーにあたる用語はなぜか無い社会」の漫画ということである。

かつて内田春菊は『わたしたちは繁殖している』の連載初期に、育児や夫婦関係についての倫理観に対決姿勢を示した。そこまでの戦闘的な雰囲気はないけど、この作品を読んだ後にもやはり「育児って女の人に任せきりが当たり前じゃないよな」という感想が残った。子育てをしたいけど仕事が忙しくて、と思っている男性は、この漫画を読んだら考えこんじゃうはずだ。逆に女性は、そうだよ、たまには「お母さん」休んでも罰は当たらないよ、と別の形で共感するんじゃないかな。
(杉江松恋)