私たちは、病気になったらどの病院にかかるかを考える。書店に行くと、「よい病院」を調べたランキング本が並んでいる。日本では、病気は病院で治すものだ。

「なにを当たり前のことを」と思うかもしれないが、海外では、患者は病院ではなく医師を選ぶ。

 私は医療の専門家ではなく、これまで外国の病院を見学したのはニューヨークの大病院のER(救急救命室)と、最先端の精神病院(1泊あたりのコストがウォルドルフ=アストリアホテルより高い)だけだった。

 今回、バンコクのサミティヴェート病院を訪れる機会があって、ようやく欧米型の医療制度がどういうものか理解できた。

アジアのメディカルツーリズム

 先進国の観光客がアジアや中南米など物価の安い国で余暇を過ごすように、メディカルツーリズム(医療観光)は、安価な医療や(生体移植など)母国では不可能な治療を求めて患者が海外に渡ることをいう。最先端の高度な治療を受けられるのがアメリカであることは間違いないが、当然、医療費もおそろしく高くなるから、メディアルツーリズムというと、インドやシンガポール、メキシコなどが挙げられることが多い。

 こうした国々の病院は、アメリカで医学を学び、手術・治療の経験を積んだ医師を揃えている。彼らが帰国したのは、アメリカで「その他大勢」の医師の1人となるよりも、母国で「特別な専門家」として遇された方がずっといいからだ。患者にとっては、アメリカと同じ水準の医療をずっと安く(ずっと快適に)受けられることになる。

 国際的な大学ランキングでは東大ですら二流になってしまうのはよく知られているが、国際的な病院ランキングでは日本の有名病院の多くは最下位にすら入れない。そもそも評価される資格がないからだ。

 米国のジョイント・コミッション・インターナショナル(JCI)は病院の質を保証する国際的な認証機関で、医療分野で世界で認められるためには「JCI認証」が最低条件になる。ところがこの認証を受けた病院は、2011年まで、日本では亀田総合病院(千葉県鴨川市)しかなかった(2012年以降、聖路加国際病院、NTT病院など6病院が取得)。

 その一方、アジアのメディカルツーリズムの先頭を走るシンガポールでは、国立大学病院(2004年取得)をはじめとして22病院がJCI認証を受けている。医療ビジネスでシンガポールを追走するのがタイで、こちらは最大手のバンコク病院を筆頭に、現在、JCI認証施設が26病院ある。

 何年か前に、中国などの富裕層を日本の病院に迎え入れるメディカルツーリズムが厚生労働省や経済産業省によって提案されたが、このとき日本にはJCI認証病院がほとんどなかった。ところが中国には、JCI認証を受けた病院が30施設ちかくあり、なかでも北京郊外の燕達国際健康城は50万平米の敷地に3000床を擁するメガ病院で、日本の駐在員や富裕層の患者のために日本語サービスも提供している。

 日本の医療が内に引きこもっているあいだに、彼我の立場はすっかり逆転してしまった。“世界基準”の医療を提供するこれらの病院と比べれば、日本は明らかに「医療後進国」なのだ。

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