『グランド・マスター』で華麗なアクションを披露したチャン・ツィイー/Stuart Wilson/Getty Images for Gaga

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ウォン・カーウァイ監督が、『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(07)以来、久しぶりに手掛けた長編映画『グランド・マスター』(5月31日公開)のヒロインを務めたチャン・ツィイー。本作で、ヒロインの女性武闘家役を凛として演じた彼女が、本作へのあふれる思いを語った。

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ブルース・リーの師匠と言われるイップ・マン(トニー・レオン)ら中国武術の武闘家たちの壮絶な戦いと、彼らを取り巻く人間ドラマが繰り広げられる本作。彼女が演じたゴン・ルオメイは、奥義六十四手の名手をただ一人受け継ぐ使い手だ。彼女は、イップ・マンに対して敵意を持つが、やがて中国武術の心と技を極め継承する者(グランド・マスター)を目指す者として、特別な感情を抱いていく。

役作りのために、カンフーの過酷な特訓を積んだそうだが、「ジャッキー・チェンに比べたらまだまだだけど」と笑う。「今回は3年間に3人のマスター(宗師)に、主にルオメイが使う八卦掌を集中的に教えてもらってトレーニングをしたの。思い出すだけでも大変だったわ。トニーは腕を骨折したし、私は腰を痛めてしまって、一週間も寝ていなければいけなかったりと、最悪の経験もしたわ。でも、みんな回復したし、まだ生きているし(笑)、この仕事を愛しているからね。観客の方にもそんな私たちと同じくらい、作品を愛してもらえたらと思うの」。

ウォン・カーウァイ監督が構想から17年をかけて挑んだ大作。現場の雰囲気はどうだったのか?「今回の現場は家族が集まっているような感じだった。『2046』(04)の撮影時は、実は監督に対してすごくナーバスになっていたの。お互いよく知らなかったのもあったし、あのサングラス姿が怖くて、目を合わせられなかった。でもある日、サングラスを外したら、ハンサムだし、全然怖くなくなった(笑)。今回の現場では、その時から親交はあったし、カンヌのコンペ部門の審査員も一緒にやって、お互いのことをよく知っていたから、監督の意図を聞いたりすることができたの。前作の時は怖くてできなかったんだけど、今回は親友のように接してくれたし、私からとても良い演技を引き出してくれたと思うわ」。

見せ場は、マックス・チャン扮するマーサンとの戦闘シーンだ。雪の中で戦うシーンは情熱的で美しい!「出来上がりがどうなるのか想像ができなくて。でも、実際に撮影をしている時は実はあまり楽しくなかったの。あのシーンは駅で3ヶ月もの間、毎晩撮影したんだけど、冬のマイナス30何度という最悪のコンディションだった。まともな控え室もないような場所で、何と言ったら良いのか、寒すぎて分厚いコートが脱げない。でも、戦いのシーンが終わると体が温かくなって、コートを脱ぐと、体から湯気が出るくらいだった(笑)。あの時の寒さは忘れられない。でも、どうにか最後まで頑張った甲斐があり、とても美しいシーンになり、苦労が報われたわ」。

女としての幸せよりも、武術に人生を捧げたゴン・ルオメイ。共感する点はあったのだろうか?「ルオメイは勇気があるし、時代の先を行っていた女性ね。1930〜1950年代の人だけど、まるで現代女性のようだもの。今なら女性ができるかもしれない決断も、あの時代には普通にできなかったわけだし。でも、その強さが観客の心に響いているんだなと感じるわ。ヨーロッパやアメリカの観客の感想はまだ聞いていないけれど、中国では特に女性の観客がルオメイに感情移入したという声をたくさん聞いたから。だから、他の国の方が彼女のことをどう感じるか、すごく興味があるわ」。

ウォン・カーウァイ監督の魅力について聞くと、「監督は並外れた独創力を持った方」と賛辞する。「作品の完成度を高めるために常に試行錯誤を重ねる。つまり、監督は自分自身を常に改善するの。誰かに強制されたり、要請されるわけではなく、監督自身が作品をより良いものにしようとする。そのためにたくさんの時間を費やし、撮り直したりもする。それは監督が『もっと良くなるはずだ』と考えているからね」。

ウォン・カーウァイ監督、トニー・レオン、チャン・ツィイーと、豪華な顔合わせで送る『グランド・マスター』。それぞれの熱い思いが結集した快作となった本作は、大きなスクリーンで堪能したい極上の逸品だ。【MovieWalker】