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世界中の俳優が憧れる監督の一人、クリント・イーストウッド監督作品への出演が決まったというセシル・ド・フランス。キュートな少女から大人の女性へと変貌した近年、演技力もそなえたフランスを代表する若手女優は、今後世界を舞台に活躍しそうな注目株だ。

謎のドラッグ「スフィンクス」を巡る事件に巻き込まれ、窮地に立たされたふたりの警官。孤立無援な彼らのスリリングな潜入捜査を描いた『スフィンクス(仮題)』は、モノクロの映像もクールなフィルム・ノワール。主演のセシル・ド・フランスは、警官から闇の世界の女へと変貌してゆく主人公を妖艶に演じている。

「ジュリーは悪党を追って、ドラックディーラーが蠢くナイトクラブのような夜の世界に入っていくの。悪党をハメることが目的だから、誘惑することもその一部。だからそういう場所が似合う女に変装して、彼女自身とは違う人間を演じているのよ。でも映画を見て思ったのは、ドレスが似合ってないなあってこと(笑)。ヒールで歩くのに苦労してるし、あんまり自信を持っていない様子もチラチラと見えるし。実際の私と同じ!って思ったわ(笑)」

“フランスのメグ・ライアン”と言ってもいいその魅力で、『スパニッシュ・アパートメント』『モンテーニュ通りのカフェ』など、20代はキュートで中性的な役柄を演じてきたが、30代を迎えたここ数年は、これまでとはガラリと違う役柄を次々と演じている。

「主人公は警官なんだけど、私が気にいったのは、それが組織の中枢の人間じゃなく、夜回りをするような警官だってこと。彼らが自分を翻弄する権力に、ささやかな戦いを挑むという物語なの。演じるのは楽しかったわ。私って自分を変えるのが大好きなの。女優としてもいつも同じイメージでなく、さまざまな役を演じて、知らない世界に入っていきたいの。そういう機会を与えてくれるオファーがあるのは嬉しいことよね」

彼女にそんな機会を与えた監督は、サスペンスの新鋭、フランスのニコラ・ブークリエフ。

「監督に会った時、シナリオはまだできていなかったの。でもこれまでの2本の作品(『コルテックス』『ブルーレクイエム』両作品とも日本未公開)が大好きだったから、この作品に出ることにしたのよ。彼の芸術的な考え方に魅かれるし、独自の視点や世界観にも魅力を感じるわ。実際に完成したシナリオもとても面白くて、それもまた気に入っちゃって」

全編モノクロの映像はアーティスティックだが、そのストーリーはハラハラドキドキの連続でエンタテイメントとしても秀逸だ。自らの汚名を晴らすために接触した麻薬組織、その信頼を得るために次々と悪に手を染めてゆく主人公ジュリーと相棒のシモン。潜入捜査の泥沼にずぶずぶとはまりこんでゆくふたりは、罪悪感と恐怖感から逃れるようにやがて互いを求め合うようになってゆく。

「最初はみんながいるのは健全な普通の社会の中なの。でも物語が進むにつれて、閉鎖的な闇の世界にどんどん入っていく。場面は、倉庫やナイトクラブ、誰も入れない秘密の場所になっていって、映画の中の光が変わってくるの。その進め方がよく練られていて、すごく映画的なのよ。もちろん恋愛めいた話もあるんだけれど、それが全面に出てくるんじゃなく、物語に織りなされて描かれていくの。そういうデリケートな表現も、とても気に入ったのよ」

この役を演じるにあたって、実際の女性警官に取材したというセシル。男性的な職場で男性と肩を並べて働く彼女たちは、必ずしも男性的であろうとはせず、むしろ女性的であると感じたという。

「ジュリーは一人の禁欲的に生きるひとりの兵士のような雰囲気なの。見た感じもすごくドライで、堅い確固とした思いもある。だからそういう雰囲気になるために、身体を鍛えて堅い筋肉を作ったの。女性らしい優しい丸みなんていらないのよね。でもそれは彼女たちが女性らしさを失っているという意味ではないの。冒頭のシーンで私がマスカラをつけたりしているのは、実際の女性警官がメイクしている実生活の真似をしたの。驚いたのは、警察官の制服に女性用がないってこと。制服は男性的に見せることで安心感を与えてくれるけれど、彼女たちの“女らしさ”を閉じ込めて部分もあると思うの」

強さと女性らしさは相反しない。次々と訪れる危機を乗り越えるたびに強く、そして美しくなってゆくジュリーは、セシルにとってもある種の“理想の女性像”であるようだ。

「強さの中には、デリケートさやフェミニンさ、優雅さや優しさもあると思うの。それを失わずに、強くいられればいいんじゃないかと思うわ。男性と同じような強さを持ちながら、そういった女性特有の部分を失わずにいられれば。言うべきことははっきり言う、はっきりした意思を持つ。私にとっては、それが理想かもね」

(text/shiho atsumi) (photo/toru hiraiwa)

INFO:
『クリスマス・ストーリー(原題)』
原題:Un conte de Noel
監督・脚本:アルノー・デプレシャン
出演:ジャン=ポール・ルション、カトリーヌ・ドヌーヴ、アンヌ・コンシニ、マチュー・アマルリック、メルヴィル・プポー、ローラン・カペリュート
配給:ムヴィオラ
2010年秋、恵比寿ガーデンシネマにて公開予定
cJean-Claude Lother/Why Not Productions