KIYOラーニング代表 綾部貴淑氏

写真拡大

難関国家資格である中小企業診断士の通信講座をわずか7万5800円で提供する――。このビジネスで月商300万円を売り上げているのは綾部貴淑だ。

コンサルティング会社の社員だった綾部が「副業」として講座ビジネスを始めたのは2008年10月。現在は宅建(宅地建物取引主任者)とファイナンシャルプランナーも開講。順調に利用者を増やしている秘訣は、練り上げたビジネスモデルにある。

「基本は通勤時間などに音声を聞くだけの学習スタイルです。一番いいと自信を持って言える講義を録音してネットで販売しています。教室、アルバイト講師、分厚いテキストなどは不要だと私は考えます。質問も受け付けません」

この徹底した「無駄」の排除によって、大手資格学校ならば30万円近くする料金を劇的に安くすることに成功したのだ。看板商品である中小企業診断士の講師は綾部自身。事務所内にある防音室に1人こもって録音している。

以前から資格を持っていたわけではない。起業を決めてから会社勤務の傍ら、100冊以上の参考書を読み込み、最も効率のいい勉強法を考えながら試験合格を果たした。

「以前から起業したいと思っていましたので、それに必要な力をつけるために自ら希望を出し、マーケティングの部署も経験しました。それでも、いきなり起業するのはリスクが高すぎる。会社勤務をしながらでも試せる起業アイデアを100個書き出したうえで絞り込みました」

有望なアイデアの1つにコンサルティングビジネスがあった。しかし、「それなら会社を辞める必要はない」と思い直す。実際そのプランは、所属していたコンサルティング会社の新規事業として立ち上げ、退職前の置き土産にすることができた。

カフェ経営も考えたが投資金額が高すぎて断念。資格取得ならば経費は抑えられる。試験合格後、通信講座の録音のために会社近くにマンスリーマンションを借りた。

「ホームセンターで木材や布団を買ってきて防音室を自作しました。布団は音を吸収してくれるんですよ。でも、録音途中で選挙カーが通ったりすると台無し(笑)。苦労しましたよ」

声やしゃべりに自信があったわけではない。しかし、プロのナレーターを雇う金はない。選択肢はなかった。休日や平日の夜に全60講座のうち10講座を必死で録音し、「科目1」としてネットで発売。買ってくれる人がいるのかと半信半疑だったが、2週間後にポツリポツリと申し込みが入った。

「思わずパソコン画面の前で手を合わせてしまいましたよ。頭の中ではチャリンチャリンと売上金の音がしました(笑)。もちろん、『こういう講座がほしかった』『安すぎるんじゃないか』というお客さんの声も嬉しい。自分がやっていることが認められた、と感じましたね」

喜びに浸っている暇はなく、寝る間も惜しんで残りの講座を録音。二足のわらじの期間は、寝不足が続いた。会社の給料と同額ぐらいは稼げる目処が立ったために、翌09年4月に退職。妊婦だった妻も賛成してくれたという。

「休日も勤務時間も自由ですし、事務所は自宅から徒歩圏内。毎晩、子どもをお風呂に入れてますし、平日のディズニーランドに連れていってあげられますよ」

会社を1人で背負い続ける緊張と不安は常にある。一方では、来年は収入を倍増できるかもしれない。サラリーマンには実現不可能な夢だ。

「今後、メジャーな国家資格はすべて手がけていく予定です。日本一学びやすいインターネット通信講座をつくりますよ」

他人がつくったルールに合わせるのが昔から苦手だったという綾部。自力本願な働き方が性に合っている。

(大宮冬洋=文 馬場敬子=撮影)